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■些細な嘘から始まった ■【遂に完結!】
作者: 碧  (総ページ数: 77ページ)
関連タグ: 殺人 複雑  
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*4*

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【偽の霞との始まり】
セットに到着する。
さあ、ドラマの開始だ。
が……また、問題が発生した。
それは、葵の演技能力だ。
霞は、若手人気女優。葵にそんな事が出来るのか?
分からない。ただ、がむしゃらに演るしかないのだ。
葵は、緊張していた。
「開始する!」
監督の大きな声が、セット中に響き渡る。
周りは、シーンとしているーーーー

意外にも、順調に進んだ。
ドラマ撮影も、半ばまで撮れた。
さぁ、殺陣のシーンだ。
「ヤアッッッ」「トォォッッ!」
二人の殺陣シーンは、迫力があった。

一斗は緊張していた。
手には汗を握り、竹刀が手から滑り落ちそうになる。
前にいる霞は、いつもよりぎこちなく、危なっかしい。
だが、楽しかった。
まるで、本当に此方に牙を向いているようだ。
こんなに演技で緊張したのは何年ぶりであろうか。
一斗はそう考えていた。
同じく葵も緊張していた。
前には、人気俳優 鈴木一斗。
周りには、プロの監督。
テキパキ働くスタッフ達。
とにかく、一所懸命だった。
周りも、私も。
私は、台本をチラリと見たのみ。
これで上手くいったのは、もしかしたら私に演技才能が!?じゃなくて、私はほぼアドリブ、一斗はそれに合わせてくれているから上手く進んだのだ。
因みに、アドリブがだめと言われた時は、霞の美貌を利用し、ごねた。(良い子はしちゃいけないことだよ)
一斗は流石、プロだ。私とは違う。台本通りに進めていく。私のアドリブでずれても、戻してくれる。

私は緊張と共に、殺陣シーンへ突入した。
一斗の目つきが一瞬にして変わった。
まるで、此方に牙を向いているようだ。
あぁ、これがプロ。演技に入り込める。
私も、演ってやろうじゃないか。復讐の為に!
「ヤァッッ!」
葵は、一斗に竹刀を叩きつける。
一斗は、唸るとその場に倒れた。
「…………」
その場は、沈黙した。
誰も喋らない。
一斗も立ち上がらない。
私は、一斗を遣ってしまったの?
葵は、焦った。
「カァッート」
監督の明るい声がセット中に響き渡る。
周りの空気が一気に緩む。
一斗は、のっそり立ち上がった。
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「いやー、霞は凄いなー」
一斗は、ニコリと笑いながら言う。
その偽善の笑顔のなか、一つの考えが浮かんだ。
ーーーー霞は、きっと記憶喪失をしたのだろう。
頭をうち、川に棄てられたのだから、記憶喪失をしても、おかしくない。
ならば?もし、霞がこれを思い出したら?
いつの間にか、一斗は険悪な表情になっていた。
「どうしたの?」
ぎこちない霞が言う。
「いや、なんでもない」
また、笑顔を造る。
だが、裏は真っ黒だった。
あの、優しい一斗はもういない。
ーー霞をコロサナキャ…


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