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■些細な嘘から始まった ■【遂に完結!】
作者: 碧  (総ページ数: 77ページ)
関連タグ: 殺人 複雑  
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*3*

第三話【思わぬ勘違い】
「俺は……何をしてしまったんだ」
一斗は、ぼんやりとセットへ戻ろうとしていた。
「きゃー!一斗よ」「え、ホンモノ!?」
という、女子達の声が遠く聞こえる。
俺は、皆の前で、性格までも偽っているのか。
そう思うと、罪悪感が増すのであった。

セットに戻り、あとの時間をなにでやり過ごそう……と考えていた。
清水が紅茶を淹れてくれたので、それをのみながら。
清水の紅茶は正直いうと、薄い。ほぼ水に近い。どんな淹れ方をしたら、こうなるのか謎だ。
「ん?待てよ……もしかしたら」
殺人をした後は、もしかしたらという考えがいくらでも出てくる。
もしかしたら、誰かに見つかるかもしれない。
もしかしたら、誰かに見られていたかもしれない。
『もしかしたら』には、共通点があった。
それは、必ず “誰か” が入るのである。
そんな事はどうでもよく、とにかく落ち着かない。
一斗は、橋へと引き返したーーーー

橋に到着する。
橋から下を見る。
そこには、霞の水死体が…………ない!?
ない!ない!ない!ない!何故だ?
「確か、ここに捨てた筈だ」
一斗は呟くと、周りを見回した。
霞は見当たらない。
一斗は、くまなくさがした。だが、ない。
そこにあった筈の霞が。
その時、一斗は、思い出した。
あの時にぶつかってしまった少女の事を。
名前は分からない。だが、一つ分かる事があった。
制服。すなわち、学校だ。
たしか、白虎橋の近くにある学校は、丸菜学校ぐらいであろう。
あの学校の制服は、白がベースのセーラー服だ。
こういう時には、制服は役に立つモノだ。
「よし、行くか」
一斗は呟いた……が!どう侵入したら良いモノか。
勝手に入ったら、泥棒とか色々言われるし、怪しまれる事であろう。
ならば、大きく行こうではないか。
俺は、鈴木 一斗。俳優だ。
ステージとして行けば良いんだ。
彼女が、霞を取って行ったとは限らない。
確認だ。ただ、確認するだけだ。
だが、まだ問題は一つある。
ステージとして行く『理由』だ。
人気俳優の俺が、いきなり平凡極まりない丸菜学校にステージとして行きたいなどといえば、おかしすぎるであろう。
だが、良い理由など見つかる筈がない。
頭がどんどん混乱してゆく。
複雑に意見が飛び交い、絡み合う。
分からない。どうしたら、良いのか。
とりあえず、セットに戻ろう。
………霞は?
どうしよう。確か、今から江戸時代のドラマ撮影だ!
霞が居ないとばれたら!
その時だ。
「タッタッタッ」
誰かが一斗の方へ走ってくる。
葵である。葵は、死体を橋から引き上げた時に落とした財布を取りに来たのだ。
勿論、死体は持っていない。それがいけなかったのである。
まぁ、葵が考えていた計画通りだったのだが。
「霞、生きてたのか……」
一斗が言う。
霞そっくりの葵にまんまと騙されたわけだ。
葵は、驚いた。まさか、本当に一斗が霞を殺したとは。
だが、直ぐに、
「え?私は生きてるよ」
と、猫撫で声で言った。
一斗は安心した様に、
「よし、セットへ行こうか」
と、私の手を引き出した。
「まさに、計画通り」
葵は、ニヤリと笑い、静かに呟いた。

《第三話 END》

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