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夏の終わり 〜5人の夏休み〜
作者: ヒナ  (総ページ数: 4ページ)
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*1*


夏の始まり  (プロローグ)



あつい、それを言葉に出すのさえ嫌になるほど暑い。


昨日まで春風が気持ちいい位だったのに


来てしまった。
どうもこの季節は好きになれない。



角を曲がると白い建物が目に入る
太陽の光を跳ね返している窓がきれいだけど今は憎い

そんな学校の中に入ると日差しが遮られいくらか涼しい
上履きに履き替えて3階を目指す


なんたる苦行だ。
こんな暑い中階段を上らせるなんて教師は鬼だ。
自分たちはエレベーターで上るくせに

などと考えているともう3階だ。


階段から1番近くが私の教室
クーラーがついてることを願いつつ扉に手をかける

横に引こうとした途端


――バキッ――


扉が鈍い音を立ててこちらに倒れてくる
驚きで身動きが出来ずにいると扉は眼の前だった

―――ヤバい・・・

そう思って目を瞑った。
けど痛さも、倒れるときの浮遊感も来なかった

「紗愛、大丈夫?」

目を開くと扉を片手で抱えて笑うあいつがいた。


「あ、あぁ。平気」

そう短く答えると、扉をもとに戻そうと手をかけると
それは、ものすごく重くて。

パッとあいつを見ると涼しい顔で「よいしょ」っと扉を直している


「なんなんだこいつは…」


直った扉を再度開け、中に入るとどよめきが起こった

きっと私が扉を壊したとでも言っているのだろう。


―――まぁ、そんなこと関係ない


窓際の一番後ろを目指して歩みを再開する


「おっはよー!紗愛、ドア壊しちゃダメじゃーん」

なんてノー天気なことを言うのは雨音。


「おはよう、だけど壊してない。壊れてただけだ」


「そっかー、だいじょぶだったー?」

机に肘をついて聞いてくる


「あぁ、あぶなかったけ…」

まで言ったところで隣から声が聞こえた

「僕が助けたからね」

そっちを向くとこれまた良い笑顔で「おはよう」と言う優生がいた


「ナイスタイミングだったんだねー」

ニッコ二ッコ笑う二人を見てると眩暈がしてくる。
―――なんでこう、朝からハイテンションなんだ……


「危なかったな。まぁ、おまえだったらかすり傷一つないんだろ?」


と、笑いの含んだ声は後ろから聞こえてきた。


「あんたねー、いくら紗愛でも女子なんだからねー?」

あんた=圭、だろう


あんなこと言うのはあいつしかいない
皮肉ばかり言う島埜圭一人しか


「私は、化けものじゃないからな」

それよりも、化けものはこっちだろう。
右を向くとさっそく読書の用意をした優生と目が合った


「なに?」

―――あぁ、もう!イラつくほんとに。なんなのこいつ!

「別に」

そして、今もなお言い争いをする二人をなだめつつふと外を見る。
何か爆発したような入道雲が山のように並んでいた


―――もう、夏だ

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