完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

君とあの時あの場所で〜3ヶ月の恋物語〜 
作者: 秋桜  (総ページ数: 23ページ)
関連タグ:
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~

*11*

「じゃあ、全部話すね」

日比奈は寂しそうな笑顔になった。そして、淡々と話し始めた。

「私は、生まれも育ちもこの島だよ。実は、小さいころから病気を持ってるの。その病気は歳をとる事に重くなっていって、小学生の時は月に二十日くらい登校できたのに、中学生の時は月の十日になっちゃったの。そして、高校は一日も通えなくてずっと病院。医師に頼んで、入学式だけは出してもらったの。――湊谷が、隣だったよね」

 日比奈は、ずいぶん昔の事を話しているようだった。

「私が余命宣告を受けたのは、一ヶ月前だよ。湊谷に会う前の日。それまで私は外に出ようとしなかった。なんか、恐くて。でも、あと三ヶ月しか生きれないんだって思ったら、勝手に足が動いちゃったんだ。で、子供の頃からお気に入りだったここに来たの。そしたら、湊谷に会った。最初はびっくりした。だって入学式に会った人が、同級生だった人がここにいるって…思っただけで涙が出そうだった。それからは毎日が楽しかった。――ありがとね、湊谷。」

 日比奈は、湊谷の目をじっと見つめて言った。でも、湊谷は逸らしてしまった。

「本当は、もう少ししたら私から話そうと思ったんだ。まぁ、いい機会になったよ」

「なん…で…、言おうと思ったんだ?」

 湊谷は、その答えをなんとなく分かっていたが、他の答えが返ってくることを期待していた。しかし、湊谷の思った通りの答えだった。

「――もう、外に出られないと思う。流石に後二ヶ月しか生きれないとなると、体も苦しくなってくるんだ。だから…もうここには来れない。ごめん…ごめんね…」

 日比奈は下を向いていたので、どんな表情をしていたのかが分からなかった。

10 < 11 > 12