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君とあの時あの場所で〜3ヶ月の恋物語〜 
作者: 秋桜  (総ページ数: 23ページ)
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10~ 20~

*2*

湊谷が走って行ったのは山と山に挟まれた海だった。入り口はたった一つしかなく、見つけられた者はあまりいない。海からも泳いではこれず、未知の領域なのだ。

でも、湊谷は3年前に入り口を見つけてから、毎日のように通っている。このことは誰にも言っていない。秘密なのだ。実際湊谷も、他の人に出くわしたことはない。

「はぁ〜落ち着くぅ〜」

 湊谷は、未知の領域に足を踏み入れた。

 ――パシャン

「ん?誰かそこに…」

 湊谷がのぞいた先には、一人の麦わら帽子を被った少女がたっていた。湊谷と同じくらいだろうか。彼女は足だけ海に浸かっていた。

そこに風が吹き、彼女の帽子が湊谷の足元に落ちてきた。

彼女は辺りをきょろきょろと見渡し、湊谷の足元に自分の帽子が落ちていることに気付き、こっちを向いた。彼女はとても美人だった。髪が腰ぐらいあり、綺麗になびいていた。彼女はこちらに歩いてきた。

「あのぉ…」

 彼女は湊谷に話しかけてきた。でも、湊谷は少女に見とれていて、気付いていない様子だ。

「あの!」

 少女は湊谷を覗き込みながら言った。

「うあああぁぁ!!」

 湊谷はその場に尻もちをついてしまった。

「えっと…大丈夫ですか?」

 少女は湊谷に手を差し伸べてきた。

「えっだっ大丈夫です!」

湊谷は差し伸べられた手を使わずに、自力で立ち上がった。

「そう…」

 彼女は差し伸べた手を握り締めて言った。

「あっ帽子ですよね。はい」

 湊谷は足元に落ちていた麦わら帽子をひろって少女に手渡した。

「ありがとうございます。…ここの島の方ですか?」


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