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君とあの時あの場所で〜3ヶ月の恋物語〜 
作者: 秋桜  (総ページ数: 23ページ)
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10~ 20~

*4*

「そーですけど。…何かありましたか?」

「あっと…出口が分からなくなって…」

「迷ってんですか?出口はあっちですよ」

 湊谷は、自分が入ってきた方向を指差しながら言った。

「ありがとうございます。…では」

「あの!」

 少女はこの場から去ろうとしていたが、湊谷が呼びとめた。

「はい?」

「ええっと…俺、近くの高校に通ってる高3です。あっと、宮間湊谷です。えーと…」

 湊谷は、必死だった。なぜなら、彼女に一目ぼれをしてしまったのだ。

「ふふっ。私は音無日比奈(オトナシヒビナ)です。高3かぁ。同い年だね」

 日比奈と名乗った少女は、笑顔で湊谷に言った。

「えっでも、同じ学年に音無さんっていないですよ?この島、高校は一つしかないし…」

「あっ!ええと…」

 日比奈は露骨に困った顔をしていた。

「ああ!旅行ですか?」

 この島には観光客も多く、2週間に一回本州と船が行き来している。そして、ちょうど昨日その船が港に泊まっていた。

「ええ、まぁそんなところ…」

「そうなんだ。いいなぁ…あの!これからも、ここで会いませんか?えっと、色々本州の話とか聞きたくて…」

「え!……………………いいですよ」

 日比奈はかなり考えて言った。顔は少し困っているようにも見えた。

「本当ですか!――じゃあ、この時間でいいですか?」

 湊谷は、嬉しさをこらえながら言った。

「はい」

「いつぐらいに、戻るんですか?」

「―――違うの」

「へ?」

 日比奈の驚きの言葉に湊谷はまぬけな声を出してしまった。

「本当は、旅行じゃないの!えっと…そう!祖父がこの島にいて、急に体調が悪くなったから、家族みんなでここに引っ越してきたの」

 湊谷は理解力が乏しく、頭の回転が間に合っていないのか、しばらくだまっている。日比奈は、そんな湊谷を心配そうな目で見ていた。

「えーと…とりあえず、結構長く入れるってことだよね!」

 かなり要約したようだ。

「―――三ヶ月」

 日比奈は声のトーンを下げて、唐突に言った。

「え…」

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