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作者: 秋桜 (総ページ数: 23ページ)
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「そーですけど。…何かありましたか?」
「あっと…出口が分からなくなって…」
「迷ってんですか?出口はあっちですよ」
湊谷は、自分が入ってきた方向を指差しながら言った。
「ありがとうございます。…では」
「あの!」
少女はこの場から去ろうとしていたが、湊谷が呼びとめた。
「はい?」
「ええっと…俺、近くの高校に通ってる高3です。あっと、宮間湊谷です。えーと…」
湊谷は、必死だった。なぜなら、彼女に一目ぼれをしてしまったのだ。
「ふふっ。私は音無日比奈(オトナシヒビナ)です。高3かぁ。同い年だね」
日比奈と名乗った少女は、笑顔で湊谷に言った。
「えっでも、同じ学年に音無さんっていないですよ?この島、高校は一つしかないし…」
「あっ!ええと…」
日比奈は露骨に困った顔をしていた。
「ああ!旅行ですか?」
この島には観光客も多く、2週間に一回本州と船が行き来している。そして、ちょうど昨日その船が港に泊まっていた。
「ええ、まぁそんなところ…」
「そうなんだ。いいなぁ…あの!これからも、ここで会いませんか?えっと、色々本州の話とか聞きたくて…」
「え!……………………いいですよ」
日比奈はかなり考えて言った。顔は少し困っているようにも見えた。
「本当ですか!――じゃあ、この時間でいいですか?」
湊谷は、嬉しさをこらえながら言った。
「はい」
「いつぐらいに、戻るんですか?」
「―――違うの」
「へ?」
日比奈の驚きの言葉に湊谷はまぬけな声を出してしまった。
「本当は、旅行じゃないの!えっと…そう!祖父がこの島にいて、急に体調が悪くなったから、家族みんなでここに引っ越してきたの」
湊谷は理解力が乏しく、頭の回転が間に合っていないのか、しばらくだまっている。日比奈は、そんな湊谷を心配そうな目で見ていた。
「えーと…とりあえず、結構長く入れるってことだよね!」
かなり要約したようだ。
「―――三ヶ月」
日比奈は声のトーンを下げて、唐突に言った。
「え…」