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*5*
はっとして、振り向くと
そこには、一人の少女が立っていた。
その表情には、瞳が小刻みにふるえながらも、怖れない、
凛とした顔で、
こちらをじっと見つめていた。
(まずい!!)
今すぐ、逃げようとした。
しかし、
足がしびれたせいか、力が入らなくて、
そのままひざまづいた姿勢で見つめ返すしかできなかった。
なぜだ。なぜ…
「………な、ないて、るの…?」
そう言われて、ボクは、すぐ近くの窓ガラスを見た。
藍色と、ピンクが見事な濃淡をつくりだす夕闇の空にうつるのは、
ひとすじの涙を流した一人の少年、
…自分だった。
少女が、こっちにかけよってくる。
頼む。頼むから、これ以上近寄らないでくれ…
「はやく、おうちにかえろ?」
ボクの真正面にしゃがみこんだ彼女は、ポケットから
ハンカチを取り出して、
ボクの左目にあてた。
…ふわっとして、あったかい。
このままだと、あふれてきちゃう。
おねがい、おねがいだから…!!
バシッ!!
静寂した空間に痛々しい音が響いた。
しかし、そこからついて出た言葉は
これ以上ないほど、弱々しくて。
「……………………………………………………………………やめて…………」
ボクは、彼女の前から、消えた。
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