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作者: 杏月 (総ページ数: 17ページ)
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「待って、心結ちゃん!!!」
晴も男なので、女の心結よりは足が速い。
ガシッと心結の腕をつかんだ。
「やめてよっ・・・。どうせ、アンタは私の事、何とも思ってないんでしょ!!」
「そんな事な――」
「私はっ!!!私は、ずっと待ってた・・・。アンタが・・・晴が戻ってくるのを。ずっと・・・!」
「・・・」
腕を掴んでいた晴は、心結に少し力が入ったのが分かる。
「私は!!!晴の事が、好きだったんだよ!!幼馴染としてじゃなく、一人の男として見てたんだよ・・・」
「心結・・・ちゃん」
掴んでいた手を放した晴も、心結にある事を伝えた。
「僕もずっと、好きだったんだ。心結ちゃんの事。だから―――・・・」
晴は片手に持ってた砂時計を逆にして、残りの砂を流した。
「!!??なっ・・・何してるの?」
「これ以上言葉に出したら、戻れなくなっちゃう。ずっと・・・君の傍にいたいって思っちゃうんだ――・・・」
「!!」
すると、晴の体がどんどん薄くなっていくのが、心結の目に入った。
「い・・・逝かないでよ。晴!!」
「・・・そんな顔しないでよ。もっと、笑って?」
「笑える訳ないでしょ!!!」
足の方がもう、目には入らないくらい、薄くなってきた。
「そっか。・・・・じゃ、今度は僕がいる世界で待ってるから」
「え・・・?」
「そこで、僕の気持ちを伝える。何十年――・・・何百年経っても、僕の気持ちは変わらないから。たとえ、君が結婚とかしてもね」
「そんなの・・・ズルいよ」
「ごめん」
もう体の半分まで消えかかってきた。
晴は、心結の頬らへんに片手を当てた。
「だから、その日まで・・・バイバイ」
「絶対忘れないから」
「うん―――・・・」
そして、2人は唇を重ねた。
晴の手はとても冷たく感じたが、何故か唇はとても熱く感じた。
「バイバイ―――・・・・」
そう2人は言い、晴は心結の前から消えていった。
「―――・・・・っぅ」
言葉が出なかった。ただ、涙だけが自分の中から出てくる。
しかし、心結は信じている。次は、晴が待っている世界で、晴に会える事を――・・・。
砂時計が止まっていても、僕達の時間は止まらない―――。
一緒にいるという約束を守るため――・・・。
僕たちは、前に進む。