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馬(シリアス)
作者: 栗おこわ  (総ページ数: 10ページ)
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*4*

第四話

「馬の受け渡し…?」
「ああ。戦で使うんだと」
「戦で、カーウやシンを。。」
「騎馬隊?だとよ」
「と、父ちゃん、OKしたん?」
「ああ」
「なんで」
「そりゃ、俺らは殿様のおかげで…」
「でも、恵がかわいそうやないの」
「だけど…」








「あれ?恵?」





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「馬を戦に」と聞いたときは、鳥肌が立った
ぶるぶる震えて、息ができなかった
「はあはあ…」
息も絶え絶えに、馬小屋へ走った
「カー…ウ、…シン」
馬達はのんきに草を食べていた。
そんな馬達の姿を見ると、涙があふれてきた
「カーウ…シン…」
ぼろぼろ、情けないくらい。




「戦に行っちゃうなん…て、嫌だよぉ…」




いったい、どのくらいの時間が経ったのか分からない。
泣いている私を母が見つけ、抱きしめた
嗚咽は止まることなく、母の腕の中でもずっと泣き続けた

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あれから三日の時が経った。
「恵。世話は、終わったかい」
「……」
私は、あれから一言も話していない。
でも、馬だけには話しかけることができる。

「朝ごはんできたから、来なさいな…」
「・・・・・」
私は無言で馬の世話を終わらせ、馬小屋を出た

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「叶野殿。馬をそろそろこちらへ、渡してもらえないか?」
「ええ、私も早くそうしたいところなのですが…娘が嫌がっていまして」
「そんなもの、早く説得させてくだせえな」
「はい、すみません…」
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「…恵」
私が振り返ると、頭を下げた父の姿があった
「?」
「恵…頼む。馬を…もう、俺に任せてくれないか?」
「!」
父の意思はすぐに分かった
「…戦になんて出したら…」
「死んでしまうって言いてえんだろ」
「…」
「馬だって、俺らの国を大きく、強くするために大切な物なんだ。俺らの国の宝なんだよ。馬だってそういう扱いをしてもらえば、うれしいんじゃねえか?」
「「大切な物」?馬は、物じゃない」
「恵…」
「父上は、悲しくはないの?自分が丹精こめて育てた馬を…」
「こうなる覚悟はあったから」
「…そうか」
「…」
「父上はこの子達を戦の道具のように思ってたのね」
「め…」
「愛しちゃ、いないんだね」
「恵!」
父は、私を脅しにかかった
「いいかげんにしてくれ、恵…」
「そんな危ないところに、私の友達を、行かせられないよ」

                つづく

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