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*11*
-第七階層-
(少年と謎の生命体はプリンセシナ 第七階層へたどり着いた。
ここはかつて大切な家族の家だった場所。今は見るも無残な廃墟と化している。
数年ぶりに彼女はこの家へ帰って来た。あることをするために…。)
「ここはシレーナさんのご実家!?」
気が付くとそこは何度も来たシレーナにとって大切な思い出の場所。
お父さんとお母さんとの楽しいのも悲しいのもすべての思い出が詰まった大切な場所。
やっぱり…やっぱり…最後の記憶はここなんだ。
「……シレーナを探そう」
「………っ。はいっ!」
パピコさんは察しがいいから助かるな。時間もあまりないし話をする暇もないから……。
ひとつひとつ丁寧に部屋を見て回る。どこもかしこも誰も手入れしていないせいかボロボロだ。
でもだいぶ前までは誰かが生活していたような跡がある。これは…もしかしてお父さんの?
……シレーナを親戚の家に預けてからもここで暮らしていたのかな?
「ご主人様、見てくださいこれっ!」
「こっ…これは……」
(この時少年は、この世界のキーとなる証拠を発見した。
彼女には気付けなかったあの人の想いを。
それはほこりに埋もれてもなお、存在感を出し誰かに気づいてほしいと、彼女に伝えてほしい、この想いを伝えたいと、訴えているようだった。)
『お父さん。これでまた会えるよ……』
……いたっ!
家の地下室で血文字で魔方陣?みたいな物の上に腐敗した、たぶんお父さんの死体を虚ろな目で見つめているシレーナを発見した。
「この錬成陣は……危険です。離れて!」
「パピコさんどうしてっ!?」
「とにかくなんででもですっ!」
『ふふふっ……』
ポタンッとシレーナが不気味に笑いながら自分の血を魔方陣みたいな物の上に一滴垂らすと眩い光を放ちながら魔方陣みたいな物が光り出し…。なんなんだ…あれは…。
『ギロッ』
『ぅ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
「シレーナーーーーー!!」
「ダメーー!」
目玉!?大きな目玉が一つ陣の中心に現れて黒い無数の手の様な触手の様な物が沢山陣の中から出てきた。
シレーナはそのウニョウニョした変なのに囲まれている。
助けようと手を伸ばしたけど…
「ッ!?」
なんだ…今の痛み!今まで感じた事のない痛みが全身を走った。
斬られるでも叩かれるでもない不思議な痛み。でも激痛。
すべての事が終わった後にあったのは――
『ガウッ グチャッ バクッ バクッ ウグッ』
『なっ…なに…あれ……?』
[バケモノが…お父さんを…食べてる…ぁあ……ぁはははっ
ぐちゃぐちゃだ……お父さんが…私のせいで……
あぁ…やめて…やめてーーー!!]
「……ぁ」
「………穢れ」
「穢れ!?」
一瞬、意識が遠のいていたけどパピコさんの一言で戻った。
「でも僕が見た者とは全然ちがっー」
「ええ。あれは何十年も穢れと同化したために独自に進化したのでしょう。もしくは…誰かの人体錬成の失敗作」
「……じんたいれんせい?」
「人が人を再構築し生き返らせるという禁忌の術です」
「死んだ人を…生き返らせる術……」
の失敗作が…あの穢れ。もしくは…独自に進化した穢れ。
…どちらも嫌だな。
『やめてよっ!お父さんを食べないでっ!!』
『ガウッ グチャッ バクッ バクッ ウグッ』
『……イタッ!えっ……なに?え?うっわわわわぁぁぁぁぁ!』
シレーナの左足が…ないっ!?
「人体錬成の対価です」
「えっ?」
「人体錬成を行うには、対価を支払はないといけないのです」
「それが……左足?」
「いえっ。実際には体の一部ですが……」
シレーナの場合は左足だったと言うことなんだ。
『ないっ!私の腕が無いっ!イタイッイタイ!……ぁ』
【ああああああああああああああああああああああああああああっ!!】
「「っ!?」」
またっシレーナの叫び声!?
「大変ですっご主人様!」
「どうしたの!?」
「さっきの穢れが開いた扉から、シークレットガーデンに!!」
「ええぇーーー!!」
「きっと、あれがすべての元凶。シレーナさんの心を侵すデスピル病の親玉だったんですよー!」
「早く追いかけないとっ!」
シークレットガーデンが壊されたら全てが終わってしまう――
(少年と謎の生命体は急いでプリンセシナのもっとも深い場所にあるシークレットガーデン向かい階段を駆け下りる。
彼女の心は悲鳴をあげひび割れてゆく…。
少年はまにあるのか。彼女の心が完全に浸食されるまでに……。)