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*12*
-最下層 シークレットガーデン-
(少年と謎の生命体はついに彼女の心の最深部にたどり着いた。
ここはシークレットガーデン。彼女のすべてが詰まった場所。
この場所が完全に崩壊した時、彼女世界は脆く崩れ去り彼女は 死す――)
「……ここがシークレットガーデン」
クリスタルでできた木々に囲まれた様な感じの場所だ。
中心にはクリスタルでできた花のつぼみみたいなものがある…。色鮮やかに内部から光っていて綺麗だ。
「ご主人様!見とれている場合じゃありませんよ」
「へっ?あ、あぁそうだった」
「もうしっかりしてくださいまし」
「ごんめんなさい……」
パピコさんに怒られて気をしっかり持つ。
辺りを見渡すと……
「……いた」
『ガウッ グチャッ バクッ バクッ ウグッ』
「今は卵で言う殻の部分を食べているみたいです。時間はありませんよ」
「…うん」
ゆっくりゆっくり相手に近づいて行く……。十分に近づいたら
「はぁぁぁ!」
『グぐぐぐ……』
「まだです!」
「はぁーー!」
【やめてーー!!】
「えっ!?」
クリスタルのつぼみの中からシレーナが何かを訴えている…。
あれは幻?それとも……
【やめて…お願い…ルシア……】
「シレーナ…?」
『ガウウ…』
「ご主人様!」
「うわぁぁぁ!!」
シレーナに気を取られている隙に穢れが襲ってきた。
【やめて…ルシア
……それは…その人は私のお母さんなの!】
「ま、まさか……」
【私のせいで…穢れになってしまった
…お母さんは
……私に復讐しにきたの
…私を殺しにたの
…悪い子だから 私がいけない子だから
…だから……殺させてあげて】
「なに…言って…」
【ルシアが…助けに来てくれた
嬉しかった…でも……でもね
……死にたいの――]
「そ…そんな……」
『ガウッガウッ』
【ごめんね
私が…悪い子だから
大好きなルシアにも大切なみんなにも迷惑かけて……
だからお父さんは私を捨てて……】
「違う!!」
『グアアッ!?』
伝えなきゃっ!シレーナにお父さんの本当の想いを伝えてあげないとっ!
「君は勘違いしているんだ!」
(少年は元彼女の母親だったモノを跳ね除け、彼女の元へ駆け寄る。
どんなに傷つけられようが、拒絶されようが、
彼女の父だった人の想いを届けるまでは――
彼女の誤解を解くまでは――)
【何言っているの?
わたしの…
かん…ちがい…?】
「そうっ!そうだよっ!君のお父さんは、君が悪い子だから、君を捨てたんじゃ、ないんだっ!」
【嘘…嘘だよ。ルシアは優しいから嘘ついて…】
(少年の叫びの想いも今の彼女には通じない。
彼女の心は黒く染まりすぎた。
だがこんなところで諦める少年ではなかった――)
「ううん。本当の事なんだ。これが証拠だよ」
第七階層でシレーナを探していた時に見つけた。お父さんが最期にシレーナへ書いた手紙を手渡した。
【シレーナへ
この手紙を君が見ている頃にはもう私はこの世にはいないだろう。
君を捨てた私を恨んでいるかい?いや優しい君はむしろ、自分が悪い子だからだと自分を責めて罪に苦しんでいるんだろうね。
ごめんな、本当の事を言えなくて…。
君のお母さん…私の妻、ユリアは闇病と呼ばれる心の病にかかっていたんだ。
急に言動がおかしくなったり人間不信に陥ったりするらし…。治し方は現医療技術すべてを用いても不明。
誰にも治せない不治の病。
ユリアが闇病で入院していると知ると、元医者の私はどうしても治してあげたかったんだ…。
でも闇病は感染症。まだこれからの未来ある君にまで感染してしまってはいけない。君の未来を奪う権利なんて誰にもない!
…と思った私はああする事しか出来なかった。
君を捨てた。君を助ける為であってもその事実は変わらない。
本当にすまなかった。許してほしいとは思わないよ。
ただ…どうか自分をもう責めないであげてほしい。自分を許してあげてほしい。
君は悪い子なんかじゃない。とても心優しい良い子なんだ。
シレーナ。君は私とユリアの大切な…大切な宝物だよ。
お父さんとお母さんは天から見守っています。どうか幸せになってください。
お元気で】
【そんな…そんな…お父さん……お母さん……】
「あの手紙にはそんな事が……」
「うん。ただ少し気持ちがすれ違っていただけなんだ。本当はみんなお互いを思っていたんだよ」
【うっ……うう……お父さん、お母さん……】
『ぐ……あぁぁぁ……』
「あっ穢れが…」
「闇が晴れて、浄化されてますね…」
「そっか…良かった」
(こうして彼女の闇は晴れ浄化された。
彼女は少年のおかげでまた生きてみようと言う気持ちになった。
またイジメられても
また友や家族から
たとえ初恋の相手であり命の恩人である
ルシアに嫌われた途にしても
もう闇には屈しない
もう二度と自分の命を軽く思わないと心に誓ったのだ――)
『あははは〜♪』
『まて〜まて〜シレーナ』
『あははーお父さんが私を捕まえようだなんて百万年はやいよーだ!あははっ』
『なんだと〜言ったな〜!』
『きゃぅははっ』
『もうっあんまり遠くまでいっちゃ駄目ですよー』
『わかってる。わかってる』
『『あはははっ』』
(彼女の心の世界にはもう辛かった記憶は存在しない
あの記憶は晴れて思い出の結晶となり
心の奥深くへと仕舞い込まれ
残ったのは楽しかった家族の記憶と――
これから紡がれる
仲間たちとの大冒険の物語だ――)
シークレットガーデン -魔女と呼ばれた少女の物語-完