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シークレットガーデン -魔女と呼ばれた少女の物語- 完結!
作者: 姫凛  (総ページ数: 13ページ)
関連タグ: シークレットガーデンシリーズ 短編version シリアス ファンタジー 感動系? 
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10~

*5*








(川を眺めながら少年たちはしばし休憩し、何気ない世間話を始めた。
綺麗な川は人の心を洗う力をも持っているのかもしれない…。)


「ここでピクニックをしたら気持ちよさそうですね」

「そうだね。魚釣りもいいかもね」

「おぉ、ご主人様。魚釣りおやりに?」

「いやっ僕はしたことないんだけど、死んだ父さんがやってたんだ」

「ほう。なるほど」

『キャーーー!!』

「「えっ!?」」

パピコさんと何気ないしゃべりをしていると、川の上流の方からシレーナの悲鳴が聞こえてきた。

「行ってみよう!」

「あっはい!」

慌てて悲鳴がした方へ行ってみると…見たこともないようなバケモノがシレーナを襲おうとしていた。
あいつの特徴を説明しようとしたら、三年はかかってしまいそうだ…。とにかくどう言っていいのかわからないくらい、不気味な奇妙なバケモノだった。

『ぃっ…いや……』

[なっ…なにこの変な生き物。
こんなの見たことないよぉ。図鑑にもニュースでも見たことないよぉ…。
助けて…お父さん…。…だれかぁ。]


「あれは、魔がい物!」

「まがいもの?」

「はいっ、デスピル病のウイルスみたいな魔物です。あいつが私達よりも先にシークレットガーデンへ到達されると、シレーナさんの心は壊れ荒れも無残な穢れ、あんな感じの化け物になってしまいます!」

「どのみちここで倒さないといけないんだねっ!」

「お待ちくださいご主人様!」

「なにっ!?」


(少年は腰に下げた剣を抜き、魔がい物へ刃先を向ける。
謎の生命体は少年から離れた安全な場所で待機し、木の陰に隠れて助言をする。)


「魔がい物は絶対にご主人様がいま持っているその剣で、彼らのコア(心臓)がある胸元へ一突きで倒してください」

「父さんの形見のこの剣で一突き…わかった!」

「……私には案内と応援しか出来ませんが…頑張ってください」

「うんっありがとう!」

パピコさんにお礼を言うと一目散にシレーナの元へ駆け寄り、

「はぁぁぁ!!」

『ぎぎゃぁぁぁぁ!』

魔がい物のコアを一突きに突きに刺した。魔がい物はこの世のものとは思えないほどの恐ろしい悲鳴を上げた後、黒い煙のようになって消え去った。

「君っ大丈夫!?」

『…ぁ。……ぁ』


[お礼…お礼…言わなきゃ。
ありがとうございます…って言わなきゃ…。
…ぁ。声が出ない。なんで?なんで出ないの私の声っ!?
だめだ…逃げなきゃ。
この人…私を助けに来てくれた良い人なのかわからない。
前にニュースで言ってた人さらいの人かもしれない…。逃げなきゃ。]


シレーナは放心状態で何かを言おうとしてたみたいだったけど、何も言わずに一目散に家の方へ走り去って行った。

「まぁなんですかあの子は!?助けてもらったお礼も言えないなんて、礼儀知らずにも程があります!」

「ま、まぁまぁ…」

プンプン怒るパピコさんを宥める。…あんな怖い思いをしたんだから言えなくてもしかたないよね。
それに僕はシレーナがケガをしていないんだったならそれでいいんだし。

(女の子の恐怖の対象が化け物から少年へ変わっていたことを知るよしもない少年は、勝手に納得しその場を収めた。
そして次の階層への扉がギギギギィと大きな音をたてながら開いて行くのが遠くに見えた)


「あっ扉が!」

「ここでのイベントをクリアしたので次の階層への扉が開いたみたいですね」

「次の階層か…」

第一階層では以外にもシレーナは昔、お転婆な女の子だったんだ。
って事がわかったけど、次はどんな事がわかるんだろう…?
いや人の過去を盗み見てて楽しみにしちゃ駄目なんだろうけど。……気になるな。
不謹慎にも少しワクワクしながら僕たちは、第二階層と書かれた扉をくぐり階段を下りて行った。


(少年は後々本気で後悔することになる。
どうしてこの時自分は人の過去を見てワクワクしてしまったのだろうと。
人の過去はそう簡単な物ではないのに…。)





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