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*8*
-第四階層-
(少年と謎の生命体はプリンセシナ 第四階層へたどり着いた。
この記憶は彼女にとってもっとも辛く苦しい記憶の欠片。
愛する人には絶対に見られたくなかった……。)
「ここは…?」
「テーマパークですね。デパートの屋上とかにある」
「てーまぱーく…?でぱーと…?」
都会の方にはそんなのがあるんだ。すごいなぁ…。
テーマパークと言うところには公園みたいに、沢山の遊具があって沢山の子供たちがキャッキャッと遊んでいる。
こんな楽しそうな所に来たって事はシレーナのお父さんとお母さん、仲直りしたんだな、きっと。じゃないとこんなとこ来ないよね。
パピコさんと一緒にシレーナ親子を探していると…
「あっいた。あれでも……」
沢山のお店が並んで椅子やテーブルが沢山置いてある食事処……パピコんがフードパークって言うところらしい。
そこで何故かしんみりとした空気で楽しくなさそうにオレンジジュースを飲んでるシレーナと挙動不審でイライラしてる感じのお母さんがいた。
『ねぇ、シレーナ』
『なに?お母さん』
『もしお父さんとお母さんが別々に暮らすことになったら、シレーナはどっちと暮らしたい?』
『………』
[お母さんなんでこんな事聞くんだろ…。
私、試されているのかな?…なにを?
お母さんもお父さんも大好きだよ。どちらか片方をだけを選ぶなんて無理だよ。
……でもしいて言うなら]
えっ!?これってまさか…!
『……お父さん』
『……そう。シレーナ、あなたもお母さんを裏切るのね……』
[お母さん…悲しそう。
ごめん。ごめんなさい…。
だってだって私…昔のお母さんに戻ってほしくて…。それで]
寂しそうに苦しそうな表情で言うお母さんを見てるとなぜか胸が苦しくなってくる…。
記憶の場面が変わってまたシレーナ家に移る。
ここは玄関?ちょっと待って!じゃあやっぱり……。
今まさにきっと起こるであろう事を止めようとした僕を無言でパピコさんは止める。そして
「これは過去に起きた記憶の再現。今貴方様が関与したところで未来は変わりません」
「くそうっ」
パピコさんが言うことはもっともで正しいことなんだって、わかってるけど、頭ではわかっているけども!心じゃわからないよ……。
『じゃ、行きますね』
『あぁ……あっちでも元気でな』
『えぇ』
『お母さん……?』
『シレーナ!?どうして!起きて来たら駄目だと言っただろう?』
『ぅ……』
『いいのよ』
『しかし……まだ十歳の子供にこんな光景みせるのは……』
『よく聞いてシレーナ』
『な…に?』
『お母さん。このお家を出て行くことになったの』
『え……?な…んで』
『ふふっそれは……あなたのせいよ』
『おいっ!』
『ぇ…』
『あなたがお母さんを裏切るからよ。村の人たちがあなたをいじめるのもぜ〜んぶ、あなたが悪い子だからなのよ』
『やめろ!この子には関係のないことだろう!』
『ふふふっあはははっ』
『私の…せい。私が……悪い子だから…』
『シレーナ!シレーナいいか、よく聞きなさい。お前は悪い子なんかじゃない。お母さんはお前のせいで出て行くんじゃないんだ、いいね』
『ぁ…ぁ……ぁ』
[やっぱり…やっぱり…
私のせいなんだ…
あんな事言ったから…
ごめんなさい…ごめんなさい…
なんでもするから、捨てないで…
お父さんを捨てないであげて!お願いっやめてーーー!!]
『あはははっ、それじゃあごきげんよう。もう会う事なんてないでしょうけど!あはははっ』
ヒドイ……自分の子供なのに。どうしてあんなにヒドイことが平気な顔で言えるんだ!
「やはり……」
「パピコさん?」
「あの人。デスピル病にかかっています」
「えっ!まさかじゃあ!?」
「はい。きっと急におかしくなっていったのも、すべてはデスピル病のせいで心が壊れていったのが原因かと」
「デスピル病……」
「早く次の階層へ行きましょう。なにか善からぬ事が起こるような気がします」
「……うんっ。行こう!」
新たに解った真実。シレーナのお母さんはデスピル病患者だったんだ。
だから挙動不審だったり言動がおかしかったりしたんだ。
デスピル病…なんて恐ろしい病なんだ。かかったその人だけじゃなくて周りにいる人にまで不幸し絶望させ闇に落とすなんて……許せない。絶対に。
(彼女の心は壊れ欠けている。粉々に崩れるまであと少し…。
少年は彼女の心を守ることが出来るのか――?)