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*7*
-第三階層-
(少年と謎の生命体はプリンセシナ 第三階層へとたどり着いた。
ここは彼女の家。家族の家。実家。大切な場所だった所。
父と母と貧しくも楽しく暮らしたわが家。)
「ここは……誰かの部屋?」
「まぁ見てください、ご主人様。このタンスほこりだらけですよっ」
パピコさんは、タンスの上をスーと指で擦ってほこりまみれの指を僕に向けてまたプンスカ怒っている。
勝手に人のタンスの上なんて調べていいのかな…。
(部屋は埃っぽく少々埃臭い。
だが掃除をあまりしない家のごく一般的な程度でそこまで不潔で悲惨な状況と言うわけでもない。
棚の上やずっと放置していた置物の周りが埃で白くなっている程度だ。)
「もしかして…パピコさんって潔癖?」
「いっいえ……べつにそこまでではありませんけど…。汚いのよりは綺麗なのがいいです」
「確かに…」
僕も昔はよくヨナに掃除の心得的なことをたたきこまれてたなぁ…。
ヨナも綺麗なの好きだったし…それに掃除すること自体が好きだったからな…。
『もうっいい加減にしてよっ!!』
「!?」
急に女の人の怒鳴り声が聞こえた。
『そんなに怒鳴ることないだろう!』
次に男の人の怒鳴り声が聞こえた。あれ確かこの声は……。
「はっは〜ん……これは夫婦喧嘩ですね」
パピコさんは何か閃いた的ななんか意地悪そうな顔で言っている。夫婦喧嘩でなんであんなにも楽しそうなんだろう…。
「覗き見行ってみましょう♪」
「えぇ……」
強引にパピコさんに連れられて、ある部屋の前に立ち聞き耳をたてる。
『なぁシレーナにはやっぱり友達を作らせてあげたほうがいい。でもきっと、この村じゃ友達は作れないだろう……。だから村を出て新しい場所へ引っ越さないか?』
『何言ってるのっ!?友達なんて人必要無いわ。人なんて、いつかは裏切るんだら、友達なんていらないわよ!あの子は、勉強だけしてればいいのっ!』
『どうしたんだ、最近のお前はなんか変だそ?家事もまともにしないし、シレーナには勉強、勉強って……。昔は村のみんなと、少しでもいいから仲良くなりたいって言ってたじゃないか』
『そんなの昔の話よ。人は絶対裏切る……。貴方だって本当は、もう私を裏切って他の女の人と浮気してるんでしょ!』
『何を言ってるんだ。そんなわけないだろう?』
『ウソよっ!嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘……!!』
『おい、落ち着けって!』
「………」
あれはシレーナのお父さんとお母さんだ…。
…でもどうしてなんだろう?あの二人はあんなにも仲良さそうでラブラブだったのに……。
「………あの人。少々様子がおかしいですね」
「え?」
夫婦喧嘩を覗き見しだしてからずっと黙っていたパピコさんが不意に真剣な顔つきで言った。
おかしいと言えば確かにいろいろおかしいけど……一体何が?
「あの、シレーナさんのお母様でしたっけ?あの人…極度に人間不信になってます」
「あっ確かに…」
前見たときはもっと明るくて積極的で気さくそうな感じったけど、今は誰にでも牙を向ける猛獣みたいな感じだ……。なにかあったのかな?
「シレーナのお母さんがどうかしたの?」
「これはおそらく……いえでもまさか…」
「……?」
「すみません、ご主人様。まだ私の中で推測のいきを出ないのです。ですから、確信が持てるまで待っていただけません?」
「え……あっうん。わかったよ」
「ありがとうございまーす!」
何故だかすっごく嬉しそうに言ってる……。僕にはパピコさんの考えてることが読めないな…。パピコさん。難しい人。
次の階層への扉が開いたから僕たちは次へと進むことにした。…シレーナのお母さんこの先どうなっちゃうんだろう。大丈夫かな?
(この時少年と謎の生命体は気づいていなかったが実は彼女も見ていたのだ。
毎晩毎晩。父と母が言い争っている姿を。そしてこの時も。)
[お父さんとお母さん。また…喧嘩してる。
やっぱり内容は私の事…。
なんで…どうして…あんなに仲良かったのに…。
神様。お父さんとお母さんを仲直りさせてください……。
もう二人が喧嘩している姿を見るのは…聞くのはやだよぉ……]
(彼女は神に願う。だが…神はその願いを叶えない。新たに試練を与えるだけ。)