完結小説図書館
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*5*
●-「刺す」
「よし、刺そう」
よくサスペンスドラマなんかで犯人が人を刺すあの感じで。
でも…刺しどころが悪かったら生き残ってしまうんだよな…。
普通に心臓に突き刺せばそれ良いのか?
「………」
ナイフを心臓にへと持っていく。
「ゴクリッ」
いざ、刺そうと思ったら手が震えて刺せない。
俺の体は死にたくないと震えている。
なんでだ?
生きていたって良い事なんてないはずだ。
俺が生きているせいで
新たな犠牲者を生んでしまう…
赤崎は俺のマブダチになったせいで死んでしまったんだ。
俺のせいで…
だったらここで全てを終わらせばいい。
俺にはもう失う物なんてないんだから――
腹を括り両手で持ったナイフを振り上げたその時
「うわぁぁぁ!!」
「うっ!!」
物陰に隠れていたのか、ボロボロの服を着た知らない男が叫びながら走ってきて俺に抱き付いた。
その時、チクッと痛みが体中を走った。
「はぁ…はぁぁぁ…わぁぁ」
男は俺から離れて走り去って行った。
「なに…が…起こったんだ?」
恐る恐るチクチクと痛む場所を触ってみると。
「ッ!?」
血だ。
真っ赤な血がドクドクと腹から流れ出ている。
刺されたんだ。
あの男に俺は刺されたんだ。
わかった。
赤崎を殺したのは俺じゃない!
あの男だっ!!
俺は赤崎を殺してなんかいないんだっ!!
「俺は死ななくてもいいんだっ、なのにっ、こんなっ」
出口へ向かおうとしたが、足が上手く動かない。
前のめりに倒れた。
「くっそう…」
這いずりながら出口へ向かう。
こんな所で死んでたまるか…
暗黒の未来しかない俺と違って
赤崎には輝かしい未来が待っていたんだぞ?
それを…
あいつの未来を奪った
あいつを
俺は――
絶対に許さないっ!!
ここで俺の意識は途切れた
無残にも俺は親友を殺した犯人を取り逃し
死んで逝ったんだ
その場にいたのに
なにも出来ずに
俺は死んだんだ
すまない。赤崎。
俺は結局。誰も守る事なんて出来なんだ。
じゃあ 俺は なんのために 生まれてきたんだ―――?
無意味END