完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

だって僕は君が好きなんだから
作者: 呉服  (総ページ数: 6ページ)
関連タグ: カニバリズム 愛してる   
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

*2*

供述2


彼女と一緒に遊園地に行ったときかな、それに気づいたのは。
彼女、怖がりなのにさ、お化け屋敷に行きたがって。僕も怖がりだったから嫌だったんだけど、行ったんだ。

案の定怖くてね、彼女も僕も…え?その時ってこと?うん、20になったばっかりだったよ?……笑わないでくれない?

その時あまりに怖かったんだろうね、彼女が僕に抱き付いたんだ。え?…違うよわざとじゃないと思うけど。そんなにあざとい娘じゃなかったし。……わかったよ、女の人ってそういう技を持ってるんだね?覚えておきますよ、まったく。

僕に飛びついた彼女の横顔が、ちょうど叫びかけた僕の口に当たって、反射的に噛みついてしまったんだ。
そうしたらなんというか…うん、わかるよね?わかんない?そうですか。
僕はその彼女の時も侘びしさに胸焦がれてたんだけど、その感覚が吹っ飛んだんだ、彼女にかみついたら。
でもまだ足りなくて、叫ぶ彼女にお構いなしに耳にかみついたらさ、僕が彼女を襲っているように見えたんだろうね、後からめぐってきたカップルに通報されてさ、誤解は解けたんだけど大変だった。

迷惑だったろうな、って?うれしいね、僕の事かばってくれてるの?あ、彼女の方だって?やっぱりね。君は優しくない。当たり前だろうがって…そんな開き直んないでよね。傷つくじゃないか。

噛み付いた後、しばらく彼女は連絡をくれなかったんだ。当たり前だろうね、いきなり彼氏にかみつかれればさ、驚くからね。
…僕だってそのくらいの常識はあるよ。君、さっきから失礼だね。人をなんだと思ってるのさ?
それで、一週間したら、彼女がまた僕の所へ戻ってきてくれたんだ。なんだかんだ言って僕が好きだったんだろうね。噛み付いたわけを聞かれて、君が好きだったからと答えると、少し怪訝そうな顔をされたけどまたいつも道理に付き合ってくれた。
まぁそうだね、彼女がここで僕に愛想つきてたら、君の言う通り今頃どこかの誰かと楽しくやってたろうね。
でも、彼女は僕を愛してた。


1 < 2 > 3