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＊紹介文／目次＊

1

雨が、降っていた。
土砂降りの雨だった。
細い一筋の流れが、坂を下って行く。
その流れは、少しずつ、本当に少しずつ、太くなっていって。

騒めきが、聞こえる。

「あれ…なん…だ？」

雨音で声が消されてしまう。

ーあの流れは何か、だって？

知る訳、無いじゃないか。領らないよ。

そう、知らないんだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・

雨の中、座ったままで。
口を、動かした。
けど、声など出なくて。出せなくて。
…でも。
その声は、
届かなくて良い。
自分への、戒めだから。

10～ 20～ 30～ 40～ 50～ 60～

＊11＊


3ー4
「えっ、なんでそうなるの？」

母は虚をつかれたようだった。

「行き先教えろなんて、俺はなんでそんなに子ども扱いされなくちゃいけねぇんだよ。なんで支配しようとするんだよ。そういう所だよな、お前も最近性格変わったよなほんと。それに、もうここに、帰ってくるつもりはなかったんだ、前から。別れよう。俺だってうんざりだ。せっかく早く帰って来たのに、追い出すような言い方しやがって。もう決めた。いつ出て行こうかと思ったけど、今日にするわ」

「…さっきから何なの、一方的に」

「まぁ、良い機会だろ。俺ももう、出ていかなくちゃいけなくなったんだ。色々とそろそろ限界でね。でも湊はお前の所に置いて行くよ。お前もそっちの方がいいだろ？さすがに一人息子も連れて行っちゃったら可哀想だしなぁ」

母の目つきが変わった。
信じられない。どうして？
息子を奪わない代わりに、別れろって事なの？
あんたの為の料理を作ってなかったから？？

「ちょ、どういう事よ！説明しなさいよっ！湊は置いて行く、って何？！私たちの子でしょ」

「もちろんそうだよ。だから、たまには顔出すつもりではいるさ、こっちだって。…じゃ」