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cynical【完結】
作者: 美奈  (総ページ数: 63ページ)
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*43*

9ー5
面会室に通された。
ガラス越しに、ドアがノックされる。
…2週間くらい、会ってなかっただけなのに。
湊は、相当痩せたようだった。体が小刻みに震えていた。

「…舞」

声がうまく出ない湊に驚いたが、逢えたんだ。それだけで、嬉しかった。

「ごめんね。逢いたくて、来ちゃったんだ」

「…ごめん。俺、何したのか判らないっていうか、やってしまった事の…罪が、大きすぎて、受け止められてなくて」

「私は傷ついてない。殺されかけたとも、思ってない。悪気はなかった、衝動的に、魔がさしただけだ、って信じてる」

「いや、もう俺の手は罪で汚れているし、もう、君のもとに、戻る事は…ない、筈」

舞は、思わず椅子から立ち上がっていた。少しよろめくが、ガラスに手をついて耐える。

「…離れるなと言ったのは、誰?」

湊は、舞の気迫に少し圧倒されたようだった。

「……いや、もう舞を刺してしまった以上、俺は離れないといけない。一緒にいれば、さらに舞を、傷つける」

「だから、言ったでしょう。傷ついてなんかないって」

今度は意図的に、パン、と強くガラスに左手をついた。
あの時、掴まれたのは左の手首。
常に繋いでいた手は、左手だった。

ー湊は絶対右手を怪我するから、私が右手守る

ーどうやって?

ーん?……私が、湊の右手を握ってれば、右手の支配権は私にあるでしょ?だから、安全

たった5ヶ月前なのに。こんなにも懐かしい。
左手をついたまま、湊を呼んだ。湊も、ガラスに少しずつ、近づいて来た。

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