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cynical【完結】
作者: 美奈  (総ページ数: 63ページ)
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9ー6
「世間的には殺人未遂なんだし、罪は重くなっちゃうかもしれない。何も知らない人は、湊を陥れるかもしれない」

湊はただ、続きを待っていた。

「でも私は、あなたに罪はないと思うの。…少なくとも私は、湊に対して罪を問おうとは思わない。問われる理由が見つからないし。罪があるのは私。私の存在が罪なんだってことくらい、もうわかってるの。でもごめんね、親が勝手に湊のこと起訴してた」

湊はちがう、と強く首を左右に振った。

「舞、それは違う。舞にだって罪はないんだ。生まれた時から背負うべき罪なんてない。舞がいなかったら、俺は自分を変えることだってできなかった…だから、自分を責めないでくれよ、お願いだ。これで死なれたりなんかしたら、俺がここまで生きてきた意味がなくなるだろ」

「…じゃ、戻ってきて。また、逢いに来て。私、どんなに時間かかっても、ちゃんと待ってるから。その手が、私を傷付けたり私の幸せを奪うものじゃ無い事を領ってるから。…むしろ逆だよ。二人で一緒にいて、湊が私の事想ってくれてるんだって実感した時の幸せは、本物だった。その手がまた、私を護ってくれるって信じてるの…」

湊の輪郭が、ぼやけてきた。滲んで行く。

「こんなに私の事、大切にしてもらって嬉しかった。…また、幸せになりたい。ずっと側にいてくれた湊の隣で、幸せになりたい」

舞の瞳から、滴が垂れていく。その滴は、すぐに頬を伝う筋になった。
湊もガラスに手をついた。湊の右手と、舞の左手が、ガラス越しに重なった。
湊が伸ばした手が、届いた。

「…待ってろ」

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