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＊紹介文／目次＊

1

雨が、降っていた。
土砂降りの雨だった。
細い一筋の流れが、坂を下って行く。
その流れは、少しずつ、本当に少しずつ、太くなっていって。

騒めきが、聞こえる。

「あれ…なん…だ？」

雨音で声が消されてしまう。

ーあの流れは何か、だって？

知る訳、無いじゃないか。領らないよ。

そう、知らないんだ…。

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雨の中、座ったままで。
口を、動かした。
けど、声など出なくて。出せなくて。
…でも。
その声は、
届かなくて良い。
自分への、戒めだから。

10～ 20～ 30～ 40～ 50～ 60～

＊54＊

10ー8
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舞はこの病院で、臨床心理士をしているらしい。で、先程の女医は、舞の小学校の頃からの親友。
世間は狭いなとつくづく思った。

「そうか、臨床心理士か。すごいなぁ、舞は。さすが俺様の妹に値する資格はあるな」

「……っ、上から目線も甚だしいわっ！」

7年経っても変わらない、舞の可愛さに破顔した。
湊はゆっくり起き上がって、体を舞の方に近づけた。するすると伸びて来た彼の腕が一度舞の肩を抱いて、その後、湊の右手が、舞の頭にぽん、と触れた。舞の頭をぽん、とたたくのは、湊の癖だ。傷だらけだけど、大きくて優しい右手。そのたなごころは、全てを物語る。

「仕事、頑張れよ。困ったら俺を頼れ。…動けないけど」

「うん…。ありがと」

目と目が合った。
小さく笑った舞の顔が、少し滲んだ。