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＊紹介文／目次＊

1

雨が、降っていた。
土砂降りの雨だった。
細い一筋の流れが、坂を下って行く。
その流れは、少しずつ、本当に少しずつ、太くなっていって。

騒めきが、聞こえる。

「あれ…なん…だ？」

雨音で声が消されてしまう。

ーあの流れは何か、だって？

知る訳、無いじゃないか。領らないよ。

そう、知らないんだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・

雨の中、座ったままで。
口を、動かした。
けど、声など出なくて。出せなくて。
…でも。
その声は、
届かなくて良い。
自分への、戒めだから。

10～ 20～ 30～ 40～ 50～ 60～

＊55＊

10ー9
湊はやはり、司に似ていた。
彼もまた、自分の人生の儚さを領っていた。

舞と真琴の話し声が、聞こえてしまった。自分はすい臓がんである事を悟った。
この人生を繰り返すことも、原点に戻ることもない。

繰り返せば、戻ってしまえば。
また自分は、彼女を傷つけてしまうから。
自分は傷ついてないと言っても。もし本当に、心の傷が癒えていても。
体に残る傷痕が、全てを語る事になる。
でも、繰り返さなくても。戻れなくても。

ーずっと離れないから

ー私はポルックスね。で、湊はカストル

カストルになって。空から彼女を見つめる。空からなら、いたずらに傷つけてしまう事もないだろう。

…また、鳩尾の痛みが襲って来た。激痛に思わず呻く。
病院の庭に植えられた向日葵が、茶色くなりかけていた。