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君の青春に××してる【完結】
作者: はるた ◆OCYCrZW7pg  (総ページ数: 17ページ)
関連タグ: 青春ラブコメ 
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10~

*10*

 6日目「君の家の遊びに行ってみました」




「今日、前に言ってたゲーム一緒にする?」



 今日は午前中で授業が終わって、私と有馬君はのんびりと電車まで歩いていた。いきなりそんなこと言われたものだから、私は吃驚して有馬君を見る。彼はいつも通り涼しそうな顔だ。
 ゲームを一緒にする、ということは……もしかしてあれでしょうか!? 有馬君のお家に遊びに行くということなのでしょうか!! 私の頭の中はいつもよりご倍増しに、有馬君のことでいっぱいになった。



「……いいのかな? 私なんかが行っても」
「うん。今日うち、誰もいないから」



 有馬君はまたさらりとそう言った。誰もいない家に女の子を招待するなんて、相変わらずこの人は鈍感なのか? それとも計算?
 あぁ、嫌絶対計算はないわ。うん。

 勝手に納得するなり私は有馬君の顔色を窺った。
まぁ、無理しているようには見えないから、私を家に呼んでも構わないってことなんだろう。嫌なら有馬君のことだし、きっと顔に出る。


「じゃぁ、お言葉に甘えて……」



 有馬君の家に遊びに行く。そんなことできるなんて一週間くらい前までは全く予想もできなかったよ。
 少し後悔していたあの日の告白も、今日のことでなんだかチャラにできる気がするな。

 私は小さく頷きながら、やっと来た電車に有馬君と二人で乗った。
隣の出来に座るなり、なぜか有馬君は熟睡。自然と有馬君の顔が私の肩に乗る。有馬君の顔が近い。あれだ、好きな人の寝顔をこんなに間近で見られると思っていなかったから、ちょっとどころか、ものすごく感動だ。
 私だけが知っている、そう思うとにやけずにはいられない。






***









「……おい、サッカーってどこですんの?」
「え、空き地じゃないの?」
「あそこさ、何か高校生が占領してるときあるじゃんっ!!」
「まぁ、そんな時はそんな時で考えようぜっ。ほら行くぞ」




 中学生くらいの少年たちが、元気に走っていく。
それを見るなり、有馬君は「青春だねー」と棒読みで一言。
そして少年たちが出ていった家に近づく。びっくりして「そこって?」と尋ねてみると、簡潔に「家」と返された。
 ということは、さっきの中学生たちは有馬君の知り合い?


「さっきいた中に、俺の弟がいて」
「へぇ、有馬君に弟? 中学生なんだ」
「うん。一年生で、サッカー部に入ってんの。若いよね」
「いや、青春って私たちくらいの頃のこと指すんだよ? 大丈夫、有馬君も十分若いから。有馬君が若くないって言ったらもうほとんどの人アウトだから」



 そうか、有馬君には弟さんがいるんだ。また有馬君のことを知れて、私は嬉しくなる。こう、によによしちゃうのは仕方がないよね。
有馬君についていきながら、私は家に入る。
 中はきれいに掃除をされていた。有馬君は私をリビングに入れるなり「お茶を準備する」と言って部屋を出て行ってしまった。
 有馬君のお家にはいれたということだけで幸せなのに、有馬君が私におもてなしを……。あれ、でもこういう時は女の子がお茶とか準備するのをやるべきでは? 何が何だか分からなくなって、私の頭はぼかーんと爆発。



「あ、ゲームってあれかな?」



 テレビ近くに置いてあるゲーム機に私は目を奪われた。ゲームなんてやるのは何時ぶりだろう。記憶をたどってもなかなか出てこない。
 私はあんまりゲームに関心がない。たまに、いとこの美咲ちゃんが持ってくるゲームをするくらいだ。でも、それをやったのもいつだったか記憶がうっすらだ。
 有馬君はどんなジャンルが好きなのかな?
考えながら、私は部屋を見渡す。壁紙は真っ白で統一されていて、そこにピンクや茶色の小物が置かれていておしゃれだ。
 カレンダーや写真たて……



「写真っ!! 有馬君のっ」


 私は飛びつくように、その写真たてのもとに駆け寄った。
中に入っていた写真には、にっこりと笑う二人の少年が映っている。左側の少年は、何だか有馬君の面影があるように見えた。
 お茶を持ってきた有馬君は、じーっと私が写真を見つめている姿を見てびっくりしたように声をかけてきた。


「どうしたの、沢渡さん」
「……!? え、いや。これ、有馬君なのかなって?」


 私が写真を指さすと、有馬君がお茶を机に置いて私のもとにやってくる。有馬君自体もあんまり写真を見たことが無いのか、

「こんなのあったんだ」

 とまるで初めてその写真を見たかのような反応をとった。
事実、初めてだったのかもしれない。有馬君が言うには、最近まで違う写真が飾られていたらしい。
 有馬君の両親は海外で仕事をしているらしく、たまにしか帰ってこないらしい。そして、その両親が最近帰って来たらしく、そういえば写真をいじっていた気がする……と有馬君は言っていた。
 また有馬君の新しいことが知れて、私は何だかうれしい気持ちになった。




「じゃぁ、ゲームしようか」
「うんっ」



 ゲーム機を取り出すなり、有馬君はすぐにテレビに接続し始めた。その有馬君の表情はやけにワクワクしていて、まるで子供だ。
 有馬君はゲーム初心者に優しくやり方を説明してくれたし、きっと手加減してくれたのだろう。
私は今までの人生でこの時間が一番楽しく感じた。


彼と付き合い始めて、そう思う日ばかりだ。
明日ですべてが終わってしまうかもしれない。そう思うと何だかつらかった。でもそれでも、私は有馬君の前ではずっと笑顔を絶やさなかった。


 大好きな彼に少しでも可愛く見られたかったから。
そんな考えはきっと甘いのだろう。そう知っていてなお、私は有馬君を想わずにはいられなかった。
 そんな君をもっと好きになった火曜日。







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