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ユキノココロ【完結】
作者: ゴマ猫  (総ページ数: 79ページ)
関連タグ: 恋愛 切ない 三角関係 先輩 幼なじみ  
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*36*

 結局片付けは夜遅くになってしまい、楓さんのご好意で夕飯までごちそうになってしまった。(それでもまだ頼まれている片付けが終わった訳ではない)いつもコンビニ飯や出来合いの飯を食べている俺にとって、久しぶりの家庭の味は実家に居るであろう母さんを思い出した。家出同然の俺だが、まったく気にならないかと聞かれれば嘘になる。――が、今早急に考える問題はそれではない。

「なぜだ?」

「ん? 何が?」

 白地に青色の水玉模様のパジャマを着て、ベットの上に寝転がりにこやかに笑う幼なじみは、年頃の女子とは思えないくらい無防備な姿をさらしていた。

「何がじゃない。何で渚と同じ部屋で寝なきゃいけないんだ?」

 ――――数時間前。
 夕飯をごちそうになった俺は、楓さんにせめてものお礼という事で『何かしてほしい事はないですか?』と尋ねたところ、『準一くんが最近遊びに来なくて渚が寂しがっていたから、たまには泊まっていってほしい』とお願いされたのだ。と、ここまでは別に問題ない。が、なぜ渚の部屋で一緒で寝る事になる? 

「来客用の部屋がまだ片付いてないから?」

「だからって、この歳で一緒はまずいだろう?」

「準一だって、この間は私が泊まっても問題ないって言ってたじゃん」

 自分の家に泊めるのと、他人の家に泊まるのは全然違う。ましてや、幼なじみとは言え女の子の部屋で寝るなんてのは、なんかこう……入ってはいけない場所へと入ってしまったような罪悪感すらある。

「あれは、俺の家だから。どうしてもと言うなら俺は廊下で寝るつもりだからな」

「違いがわからないけど。あと、準一は私と同じベットだよ?」

 渚は、さも当然の事実を告げるようにサラリと爆弾発言をしながら、右手でベットを軽くポンポンと叩く。何それ? 俺死ぬの?

「ば、ばかやろう!! 一緒のベットで寝る訳ないだろ!!」

「……なるほど」

 俺が強めの拒絶をすると、渚はなぜか納得したような表情になり、瞳から光彩が消えたような目で俺を見つめてきた。

「……やっぱり、準一は女の子の服にしか興味がないんだね」

「なっ!?」

 一瞬言葉を失った。
 そう、俺はすっかり忘れて(封印とも言う)いたが、渚が家に来た時にユキがあまりにもうるさくて、夜中にユキと話していたら誤解されてしまった事がある。あまり思い出したくないが、その時渚にはユキが見えておらず、ユキが着るワンピースだけが見えていたのだ。つまり、真夜中にワンピースと会話する変態な俺がその目に焼き付いた事だろう。その後、渚が持ってきたワンピース(多分、小さい頃着てたやつだろう)を渡された時は結構マジで死にたいと思うくらいだった。まぁ結局何が言いたいかというと、俺は渚に誤解されている。今もまだ、多分、清川準一はそういう趣向なんだと。

「……渚。前にも言ったが、それは誤解なんだ。神に誓って俺はそんな趣味はない」

「……じゃあ、私と一緒に寝て証明してよ」

 ……しまった。一緒に寝ないと言ったら、変態確定。かと言って、一緒に寝たりしたら俺の精神がもたない。これなら野宿でもした方が気が楽だ。

「……やっぱり、そうなの?」

 沈黙が長かったからか、不安げに揺れる瞳。やっぱり、そうだよな。ちゃんと返事をしないと ――――

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