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*9*
「こんなもん役にたつのか?」
放課後、カフェでバイト中こっそりとポケットから出した物を見つめながら呟いてみる。涼が幽霊かどうか確かめるために俺にくれた一枚の御札。意外にオカルト好きな涼は、こういった得体のしれないアイテムをいっぱい持っている。――まったく、どこから入手しているんだか。
「こら、まーたサボってる」
「うわっ!!」
御札に気を取られていた俺は、背後からかかる声に不覚にも驚いてしまった。
「……なんだ、渚か。驚かすなよ」
「なんだじゃないよ。急に大声出すから、こっちがびっくりしちゃったよ」
渚は胸に手をあてて驚いた表情でこちらを見ている。しかし、すぐさま俺が手に持っている物を見つけて不思議そうに問いかけてきた。
「……準一って、そういう趣味あったっけ?」
「は?」
そういう趣味とは何の事だ? まさか、御札を趣味で集めていると思われてるのか?
「ほ、ほら、最近流行ってる……ぶ、仏教系男子とかいう……」
「何だそれ?」
渚は胸の前で両手の人差し指をクルクルさせながら恥ずかしそうにそんな事を言う。そんな男子なんて聞いた事がない。ってか、系ってなんだ?
「だ、だからって、仕事中に私物で遊んでちゃダメなんだからね」
「……渚、何を勘違いしているのか知らないが、俺は遊んでた訳じゃないぞ」
それに私物じゃなくて借り物だしな。俺の言葉に渚は目を丸くして、さらに驚いた表情に変わる。
「あ、遊んでた訳じゃないって……その、め、瞑想とか?」
――何を言ってるんだこいつは。
どうも勘違いの変なスイッチが入ってしまった渚は、結局仕事が終わるまでそんな調子のままだった。
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