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*5*
「解けた?」
中2全員で式場の片づけをしていると、九石が話しかけてきた。
私は両手にパイプいすを持っており、生徒手帳を取り出せないけれど、
「3√2a/7でしょ」
「おー、正解、さすがー」
両手にパイプいすを2つずつ持った九石を見て、やっぱり男の子って力強いんだなぁ、とか思った。
でも、その前に、
「つかあんたさ、笑い過ぎだよ!いくら私が1テンポおくれたからって!」
「いや、あれは1テンポじゃないと思う、2テンポくらいは…」
「それでも笑うな!」
いやぁ、ごめんごめん、と笑う九石。
やっぱり癪だ。
しかも、こいつなんかを見上げないといけない事実になおさらイライラする。
私の身長は147?、九石は169?。その差実に22cm。こんなムカつくやつを22cm差で見上げないといけないのが嫌だ。
「でもさ、良い問題だろ?あれ。」
「まぁ…うん。」
九石らしい問題だったと思う。一日にいくつも難問を考え出せるのはすごいが。
「また考えとく、あー言う問題。」
「分かった…じゃなくて、もういらないよ!少しは自分のパスカルの三角形の研究させてよ!」
「そこ、喋ってばかりいないでちゃんと手を動かしなさい」
少しヒートアップし過ぎた様で先生に叱られた。
その後一週間学校があった。
いつもと変わらず、友達はいないし、強いて言うなら友達もどきの九石がほぼ毎日(迷惑なほどに)何かしらの数学の問題を持ってくる。数学以外の科目は全てが全く理解できず、大抵は授業中もパスカルの三角形を眺める毎日。
中3になっても、きっとこの毎日が変わらないだろうと思っていた。
――この時は。
そして、舞台は中学3年になった今年へと移る。
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