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*2*
「お前!?どうした!?」
「…何でもないよ、気にしないで…」
バスの発車からもうすぐ1時間。その短い時間ですでに私はギブアップしていた。
「何でもなくないだろ、顔白いし…」
別に、とリバース寸前の私。以前、修学旅行に行ったときはここまで乗り物酔いに弱くなかったはずだが。
顔面真っ白の私はなるべく九石を見ないように(もしリバースしてしまった際に申し訳ない為)窓の外に顔を向けていた。
コツコツ、と肩をつつかれ振り返ると、飴玉のようなものを渡された。
「酔い止め薬。効くから飲んどきなよ。」
遠慮せずに、私はありがとう、と受け取る。小さいころに親からもらったことのあるもので、苺のような味と薬っぽい味が同時に口の中に広がる。
「あと、外見るな。余計に酔うから。」
私の方を見ずに淡々と言う九石。ここに来てからずっと九石はガロア理論ばっかり読んでいる。
見せて、と除き込もうとすると、
「お前はダメ」
「なんで…」
「酔いが酷くなる。その状態で車内で活字読むと逆効果なんだよ」
分かった…と私は渋々目線を前に向ける。事前に栞に一つ目のパーキングエリアまで2時間って書いてあったはず。ということは、この暇な時間が後1時間も続くのか…。
そして、暇なだけではなく、気持ち悪い…。かなり悪条件ばっかり揃っている。
もうやだ、と目をつむると、私は数分後に眠りに落ちた。
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