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*2*
「全敗したぞーっ!」
結果を言おう。
私と九石による算額対決は九石の圧勝だった。油わけ算を含めて。
私の方が早かったと思ったら、答えを間違っていたり。
それどころか、まず解けなかったり。
「勝負挑んできて、ものすごく自信満々だったのに、一勝もしないなんてことあるんだな…」
「嫌味ですか!?嫌味なの!?嫌味だよね!?」
「3回もくどい。活用させたつもりでも、活用できてないし。」
しょうがないじゃん、古文とか文法知らないし。
一日中算額で楽しかったには楽しかったのだが、悔しい。とてつもなく悔しい。
空はもうオレンジ色の綺麗なグラデーションを演出する時間となっていた。
「何か疲れたなー……」
くいーっ、と伸びをしてみる。今日はこの後何もないから、真希ちゃんやちとせちゃんとカードゲームをして遊ぼうっと。
ひゅー、と強い風が吹く。涼しい。
「ねぇ、九石?」
「…ん?」
「何時から私の事『友達』だって、思っててくれたの?」
九石は私の方を見ずに、少し考えてからいった。
「…さぁ、知らない。」
「…何それ…」
「だって、友達って自然にできるものだろ。今日から俺らは友達だ、とかそう言う宣言して、その瞬間から友達、なんてことはないわけだし。いつの間にか、だよ。本当に。」
言う間も九石は一切目線を向けようとしなかった。…照れてるのかな…。
でも、「いつの間にか」と言う言葉には共感できた。私の思い違いで、私はもっと昔から九石を「友達」だと思っていたような気もする。気が付かなかっただけで。
「…そっか。ありがと」
「…こちらこそ」
目線を向けると、逸らされた。何だか面白くなっちゃって、笑いがこぼれた。
九石と友達になれて、本当に良かった。
そう思った。
他のセミナー生も列をなして、夕日の方向へ歩いてゆく。全員の影が長く伸びていた。