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作者: もも (総ページ数: 206ページ)
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*203*
だっ。
竜輝の腕から、シンベーが飛び出す。
来た。
赤い目を、爛々と光らせて!
まず出て行ったのはブンゴ。
「ごめんな」と、小さい声で言って…跳び蹴り!
シンベー、吹っ飛ぶ。けど、すぐ立ち上がって、こっちへ来る。
危ない!
そう思ったときには、シノが、
「緊急用セキュリティシステム、キの5ですっ!」
といって、あたしの前に立ち、精一杯背伸びをして、鉄の物体で、シンベーを受け止める。
そこへ、ダイカがディジュリドゥを吹く。
きっとこれは…戦いを盛り上げる音楽。
シンベーが反応。
がんっ、と、シノの持っている物体を蹴り、ミッチーのところへ。
ミッチーは、煙玉のようなものをぼんっ、と投げ、姿をけし…シンベーの、後ろへ。
そして…捕まえる。
けど、シンベーだって負けない。
ミッチーの腕をひっかき、飛び出す。
そこには、ソウスケ。
ずっと集中していたらしく、少し驚いている。
けど、そんなの一瞬。
次には、ポルターガイストみたいなので、シンベーだけ、操ってた。
ケノは…悲しそうに、シンベーを見る。
ゲンパチは…悲しそう。
あんな顔、見たことない。
あ…そっか。ケノも含めて、二人は、シンベーの思っていること、放していることがわかるんだ。
だから…あんな、悲しそうなんだ。
よし。
「ねえ、二人とも。シンベーは、今、どう思ってる?」
「「ああ、勝手に動く。心の中が、おかしい。…〈って/と〉」」
ケノとゲンパチ、同時に答える。
そうか…そうなんだ。
シンベーも、おかしくなってるんだ。それが、分かってるんだ。
なら、こんな、体を使って戦うことは、ない。
「ダイカ」
「?」
「音楽…癒しの音楽にして」
「おう…オーケィ」
うん、よし。
あとは…戦闘チーム。
「ソウスケ。ブンゴ、ミッチー、シノ。もう、やめて。何もしないで」
4人とも、黙って道を開ける。
その道を、進む。
シンベーと、話すために。
あたしは、シンベーと話せない。
けど、いい。
シンベーに、気持ちだけでも、伝わってくれれば。
「ねえ、シンベー」
ピタ。動きが止まる。
「シンベーは、やりたくてやってはいないよね。思ってもいないよね。ただ、心の中が、ぐちゃぐちゃなんだよね」
完全に止まって、こっちを向く。
「分かってる。シンベーがつらいのは。じゃあ、シンベーは、みんなと暮らすのと、ずっと、何もかもを敵に回すのは、どっちがいい?」
「…」
答えない。当たり前か。
「きっと、本当は、みんなと仲良く暮らしてたいよね。絶対、敵に回そう、なんて、思ってない」
ぴくっ。耳が動く。
「だから。できるなら、元に戻って。いつもの、強くて誠実なシンベーに。ね?」
言い終わった瞬間、すぅっ。
目の色が、戻る。
竜輝を、ひと睨み、そして、ケノの…皆のところへ駆け寄る。
と思ったら、立ち止まって、あたしを手招きで呼ぶ。
「来い」ってこと…だよね。
ケノ、目が、ウルウルしてる。
他の皆もそう。
さあ、シンベー。
皆のもとに、戻って。
一緒に、暮らそう。
動物でも人間でも、家族。仲間。
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里見家に、そんな壁なんて、ないんだから!
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