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*11*
最終話
「俺は、本当に馬鹿だ」
ゆきの外出中、カイトは一人、家ですすり泣いていた。
「未来、俺、本当は」
お前の事が好きだった。
俺、最低だ。
見捨てるように、ちょっとゆきに何か言われただけで。
一方的に別れてしまったんだ。
その時。
インターフォンが鳴った。
「誰だよ、こんなときに…」
ごしごしと涙を服で拭うと、ドアを開けた。
「拓海……!」
一瞬で気持ちが変わった。
拓海には、もうあわせる顔がない。
「ごめん、今、ちょっと」
カイトがドアを閉めようとした。
「待てよ、このままずっと逃げる気かよ」
拓海はグッとドアノブを握った。
「お前は、間違ったことをしてる!」
「俺らは友達なんだから、俺がお前を正しい道に行かせるのは当たり前の事だ!」
拓海は叫んだ。
カイトはそれを聞いて、泣いていた。
* * *
「ただいまー、カイト」
ゆきが帰ってきた。
「あれ、誰か来てるのー?…って!西川!何で居んの!?」
ゆきが居間に向かうと、カイトと拓海が普通にくつろいでいた。
「あぁ、ゆき、おかえり。ちょっと、話があるんだ」
拓海が、何かあったらアシストするからと言ってくれた。
それだけで、カイトは十分だった。
「俺と、別れて」
ゆきは泣きわめいたり殴りかかろうとしてきたが、拓海が上手くなだめていた。
時間はかかったが、ゆきは荷物をまとめるとさっさと出ていった。
そして、それから一年の月日が立った。
俺は引っ越しをした。
未来のCDとギターだけを持って、後は自分の家具も服も全部捨てた。
金はかかるが、気持ちを切り替えたかった。
ゆきとは極力会わないように、もし会っても目を合わせないようにしている。
拓海とは話す回数は減ったが、気が向くと一緒に飯を食っていたりする。
俺は、作詞作曲を学び始めた。
未来のギターを、何か活かしたかった。
そしてついに今日、一つの曲が出来た。
君に贈る、最初で最後の歌。
曲名は、君の体温。
Fin