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*15*
「翔太。明日は美藤邸に行きますよ」
舞は美藤邸から帰って早々、夕食の準備をしている僕に向かって、そう告げてきた。
『は?今日行ってきたんじゃなかったのかよ?』そう、言おうとした僕の口は、開いたまま、閉じることを忘れていた。
舞が怒っている。
僕の全身の筋肉が強張った。まずい。バレてしまったか。
というのも、実は今朝、舞のお気に入りのマグカップを割ってしまったのだ。
…いや、でもまてよ。もしかしたら、舞は別のことで怒っているのかもしれない。ここで墓穴を掘るほど、僕はバカじゃない。
「何か、あったのか?」
僕は顔が少し青ざめているのが舞にバレていないだろうか、と内心ヒヤヒヤしながら、舞に尋ねた。
「…別に…」
「そ、そう―…」
「ただ」
僕が全てを話し終わらないうちに舞が切り込んできた。
「美藤さんちの妹さん―…さえかさんは私のお友達だから」
舞が無表情で僕に詰め寄ってきた。
「今度は許さないからね?」
自分と同じ顔とは思えないくらい、恐ろしい顔だった。
「…う、うん…」
僕がそう、返事をすると舞は満足そうに口元を歪ませた。
「約束ですよ。ふふ。お腹が空きました。ご飯は何ですか」
無邪気に微笑む、双子の妹――…。
妹は…舞は、独占欲の強い子だ。特に友達のこととなると、異常なほどの執着をみせる。
今回、僕達兄妹だけがこの家に引っ越してきた理由もそこにある。
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