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*25*
日も暮れ始め、部屋の中が夕日でオレンジ色に染まる頃、軽いノックが聞こえてきた。
「どうぞ」
僕がそう返事をすると、ノックの主は部屋へ入ってきた。
舞だった。
「翔太…。咲が帰りました」
「うん」
僕はなんともいえず、ただ、素っ気ないような返事をしてしまった。
「泣いていましたよ…?」
「うん」
「なんで断ったんです?」
舞の声はかすれていて、仄かに震えていた。
「咲ちゃんのことはあまり知らないから…。それに、初めて会ったし…」
僕がそう答えると、舞は顔をひきつらせ、僕の言葉を復唱した。
「初めて…あった―…?」
舞の反応が不思議でたまらない。本当に合った記憶が無いのだ。
「咲は何度も翔太に会っていますよ…?」
「へ?」
驚いた。全然、覚えていない。
「覚えていないんですか?」
舞悲しそうにこちらを見ている。
「ごめん」
僕はつい視線を外した。
「そう…ですか…。あ、でも、もしもどこかで咲と会うようなことがあれば、
その時は普通に接してあげてください」
「あ、うん」
言われなくともそのつもりだ。
「では、そういうことなので」
舞は回れ右をして、僕の部屋を出て行った。
でも、それ以来、咲ちゃんが家に来ることも、僕が咲ちゃんに合うこともなかった。
舞の友達に告白される。
そんなことが、なんどもあった。
でも、僕はその子たちと付き合うことはなかった。
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