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*34*
姉さんと翔太さんはリビングで談笑していた。
とても楽しげに話しているが、翔太さんの目はどこか熱っぽく、姉さんのことをじっと見つめていた。
私と舞はその様子を扉の影からそっと見つめていた。
翔太さんが姉さんに恋をしている、というのもおそらく…いやきっと間違ってないだろう。
そして、もしかしたら姉さんも……翔太さんのことを……
私は自分が何をすればいいのかわからなくなってきた。
姉さんが好きだ。
姉さんに幸せになってほしい。
姉さんをとられたくない。
でも、姉さんは翔太さんを好き…?
私の中でいろいろな感情がうごめいている。
自然と、涙が出そうになる。
泣いてしまおうか。
心が、疲れてしまった。安堵、恐怖、愛情、驚き、そして…哀しみ_…。
感情の波が形となり、目から零れ落ちそうになった。
その時。視界の端に白いものが写りこんだ。
それは舞だった。
舞は、一瞬だけ私を一瞥し、微笑をうかべると、なんのためらいもなくリビングへ入って行った。そして、翔太さんの腕を掴んだ。
「翔太、もう暗くなりますから家に帰りますよ」
「え、あ、うん」
翔太さんは少し驚きながらも椅子から立ち上がった。
…とても残念そうに。
私は急いで洋服のそでで涙を拭き取り、姉さんと一緒に舞と翔太さんを玄関まで見送った。帰り際、舞は、そっと私に耳打ちしてきた。
「――――――――――――――…?」
そして、舞はにこりと笑い、家を後にした。
あぁ、そうね、舞。
先程、舞が耳打ちしてきた言葉が頭に浮かぶ。
『予想的中でしたね、さえかさん…?』
だって、姉さんと翔太さん私達のことなんかお構いなしでずっと見つめ合ってたんだから―…。
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