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*2*
「シャドーライン? ああ、思い出したよ。確か去年の戦隊の敵組織だったねぇ。でも、去年にお役御免なはずの君がどうして僕の命を狙うのかな」
「ほう……我らの事を知っているようだな、ではグリッタ嬢の事は知っているか」
「グリッタ嬢ね、分かるよ。君を一途に慕っていた女の子だよね。でも、彼女と僕と何の関係があるのかな」
「大ありだ!」
将軍は振り向き彼を斬りつけますが、相手は瞬間移動で回避していました。
「ウフフッ、無駄だよ。君は軍人としては強いけど、忍者と闘うのは無謀だよ」
「黙れ、九衛門。私は貴様が憎くてしょうがない……!」
黄色い目に殺気を宿し、拳を音が鳴るほど握りしめるシュバルツ。
一体彼はどうしてそこまで九衛門に敵意を向けるのでしょうか。
「楽しみの密偵ラッキューロ、グリッタ嬢に次ぐ第三のマスコット的立ち位置の敵幹部だ。つまりそれが何を意味しているか……我がグリッタ嬢の人気低迷に直結しているという事だ!!」
闇の斬撃を二発も炸裂させる将軍に、九衛門は武器である小槌を長刀に変形させそれを受け止め左右に弾き返します。そして彼の懐に入ろうと急接近します。ですが闘いのプロである将軍は、彼の剣を捌いて隙を与えようとしません。
忍術においては有利な九衛門ですが、そこは小姓という役割上、剣術に関しては常に前線、それも単独で修羅場を潜り抜けてきた将軍には及びません。
「どうやら僕は、君をみくびっていたようだね。少なくとも剣の腕だけは牙鬼軍団一番槍、蛾眉雷蔵(がびらいぞう)殿と同等の実力があると言えるね……」
「シャドーライン屈指の武道派である私の実力の程が分かったようだな。ならばそのままくたばるがいいっ」
ここで九衛門は後ろに飛び退いて間合いを取ると、静かに笑います。
「何がおかしい!?」
「君は僕を倒したい。でも残念だったね、僕はこれから晦正影様のいるアジトへ帰って夕飯の支度をしなくちゃならないんだ。だから、この勝負の続きはまた次にしよう」
「よかろう、九衛門。だが、試合時刻と場所はこちらが指定させてもらうぞ」
「その方が面白いだろうからねぇ。じゃあ、君から決闘状が来るのを楽しみにしているよ」
彼は踵を返し、煙のように消えてしまいました。
それを見た将軍は、ニヤリと策士的な笑みを浮かべます。
「十六夜九衛門、残り少ない日々を精々楽しむがいい。フハハハハハ……」