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*5*
「俺が来てることに気づかないなんて、何かあったのかな、」
「シズちゃん」
上司と後輩と別れてから1時間が過ぎ、静雄はきれいにラッピングされた何かの箱を抱えていた。その腕を切り裂いたのは、臨也の手の中で鈍く光るナイフだった。
「いざ、」
「ロシア人の後輩のことでも考えてたのかい? それとも、まさかとは思うけど、告白でもされたのかな」
臨也はナイフを手の中で弄ぶ。ナイフの刃の銀が、周囲の光を反射して鈍い光を放つ。
「シズちゃんみたいな化物を好きになるなんて、物好きな人間もいたもんだね」
口元は静雄を嘲笑していたが、その目には真剣さが感じられる。
「でも俺は、その子のことも愛してあげられるよ。俺は全ての人間を、平等に愛してるんだからね」
そして臨也の目に、はっきりと憎悪の色が浮かんだ。
「シズちゃん以外は、だけど」
彼は再び静雄の前に身を踊らせる。しかしその身体は静雄を傷つける前に、静雄本人によって受け止められた。静雄は臨也の手からナイフを奪い取り、ポケットに仕舞わせる。臨也を受け止めたことで、静雄が臨也を抱きしめる形になっていたのだが――それをどうにかするだけの余裕は、彼にはなかった。
「離せよ、化物」
身動きが取れない臨也は、突き放すように強い口調でそう言って相手を睨み付ける。
「・・・・・・なんか勘違いしてねえか」
静雄は臨也を逃がすまいと腕に力をこめ、今までの行動を語りだした。
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