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作者: 大和 撫 (総ページ数: 17ページ)
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*13*
高校の時 叶わない片想いをした
相手は一つ下の後輩 しかも同性の。
きっかけは 高校二年生の最後の年
テレビでお前を見かけた時だった。
一年生ながらエースにトスを上げている姿が
何故か俺の目に焼き付いて離れなかった。 でもその時抱いていたのは ただの憧れだったはずだった。
(きっとこいつもすごいやつなんだろうな)
そんなくだらない潜入感を抱いた。
後に大きな後悔になるなんて知りもせずに。
IHで青葉城西に敗れてすぐ。その話は舞い込んだ。 東京の強豪との合宿。そこにはかつて
練習試合を行った音駒高校も含まれていた。
音駒の他にも、三校の高校でできているグループなんだそうだ。
(..ん?梟谷...か)
梟谷と言えば、一年前に見たあのセッターがいる所ではないか。一年前という事は、今は彼は高校二年生になる。 少し興味があった。
それだけだった。
その時までは、ただ凄いやつなんだと思っていた。同じ副主将でも、自分とは違って
ちゃんと主将を支えているし、実際にトスも上げている。二年生なのに、すごいな。そんな視点で彼を見ていた。
でも、実際はそんなものじゃなかった。
「......もっと、ちゃんとしないと...」
それを聞いて分かった。 合宿三日目の夜。
なんとなく落ち着けず、外に出た時。
体育館前の水場に彼はいた。 どうやら突き指をしているようだったが、何故かなんの処置もせず部屋に帰ろうとするので引き止めた。
(手、やっぱり大きいなぁ)
なんて考えながらテーピングを巻いていく。
その指はきっと今まで何回も突き指をしてきたのだろう。節が少しだけ太かった。
天才なもんか。なんて事を考えていたんだろう自分は。 きっとこいつは今まで血のにじむような努力をしてきたんだ。 俺なんかとは違って
(周りからの嫉妬とかもあったろうになぁ)
会ったばかりだが、試合を見ていたらなんとなく性格が分かった。
きっと 誰にも弱みなんて見せずに頑張ってきたんだ。 そんな馬鹿みたいに真面目なあいつの弱さを見て何故か、守ってやりたいと思ったのだ。そばにいて守ってやりたい。 おかしいに決まってる。彼はただの後輩のはずなのに。心臓が何故かバクバクとうるさい。
だから誤魔化すように笑った。彼の頭を撫でた。 彼を梟谷の部屋に送り届けて自分の部屋に戻るまで、心臓はうるさいままだった。
それから何年かたった。 あの時の気持ちが
恋なんだと自覚した頃にはもう 全部が遅かったような気がする。 あんなに親しかったはずなのに、自分でも気が付かない内に距離を置かれていた。理由はわからない。それでも往生際の悪い俺は彼を追いかけた。恋をすると人は馬鹿になると言うけれど、本当だと思う。志望校を変えて東京の大学にした。幸い元々目指していた大学と学力は大差しなかったし、勉強を第一にするなら、と反対はされなかった。東京の大学に進んで、毎日梟谷の練習を見学しに来てる俺は本当に馬鹿になったと思う。そんな中、気づけば二年が過ぎていた。そして彼が事故で死んだというのを聞いた。ショックは大きかった。 けど、片想いのままの現状を後悔はしてはいなかった。彼を追いかけて東京まで来たが、結局俺の気持ちはそれまでだったのだ。 葬式ですれ違った人が何故か彼に似ていて戸惑った。
それからまだ俺は日課のようにここに来ている。隣にはあいつもいる。 俺が倒れた時は
必死に助けを呼んでくれたよな。だから
無力だっただなんて思わないでくれよ。
あの日倒れた後。不安だった。戻ったら
あいつはもうあそこには居ないんじゃないか。
(結局縛り付けてるのは俺なんじゃないか)
それでも やっぱりお前はいるから
お前がどうしようもなく俺の事が好きなんだと伝えるから。
「なんで、なんで、お前は」
こんな事になる前に
お前に会いたかったよ
その次の日。 あいつは来なくなった。