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*1*
【オートー星】
「はいこちら、オートー星。オートー星。応答願います」
『………ん?』
「ん? というのはそちらの言語でしょうか? できれば、ん? ではなく別の言葉で対応してほしいんですけど」
『……は?』
「は? というのもそちらの言語ですか?」
『あんたなに言ってんの?』
「こちらオートー星。オートー星。他星のなんかしらん人と受信中。翻訳通信オン。どうやら判別可能な言語のようです」
『は?』
「は? というのがどうやら、彼の星で一番使われる言葉のようですねマスター。はい、さっそく登録を……」
『ちょちょちょい。待って待って待って』
「ん?」
『さっきから訳が分からんこと言われても困るって。なんなの? 何か急に俺の電話が鳴って、そしたらアンタの声が聞こえたんだけど』
「はい、こちらはオートー星です」
『オットセイ?』
「いえ、オートー星です」
『応答せい?』
「はい」
『今応答してるけど』
「あー、マスター。会話難航中。会話難航中。至急翻訳電波の供給を頼みます」
『おーい、勝手に話を進めんなー』
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『で、さっきからずっと出てくる【マスター】ってなに? あとアンタ誰? 結局これはなに?』
「僕は、オートー星……いえ、オットセイじゃなくて、オートー星のカウンセラーです」
『カウンセラー?』
「オートー星は、他の星の電波をすべて受け取ってしまう、超セキュリティガバガバの星なので、こうしてたまにしらん人から連絡が来ます。そのしらん人と応対をする仕事が我々です。しらん人が困ってたら相談に乗りますし、しらん人が失恋したらなぐさめます」
『セキュリティガバガバすぎるだろ』
「そういう星です」
『そんなもんか、で片づけて良い問題じゃないよコレ。本当に大丈夫なの?』
「大丈夫です。お気遣いいただきありがとうございます、しらん人」
『しらん人って言うのやめてくれる?』
――――――――
「と言われましても、僕の国では、他の国の人間は【シラン人】と呼ぶのです」
『ネーミングセンスよ。もっといい方法あるだろ』
「我が国の個性です」
『悲しいよ』
「ところであなたのお名前をうかがってもよろしいでしょうか」
『俺は田口だよ』
「シラン人の……田口様で? 出身星はどちらになりますか?」
『地球。日本』
「ほお。マスターマスター。シラン人の情報を確認しました。はい、ぬかりなく」
『マジで心えぐられるから、シラン人って言うな……。それでアンタの名前は?』
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「僕の名前は『シツ・レイ』です」
『色々終わってるよ君の国』
「マスターっていうのは僕の上司になります。名前を付けてくれました。カウンセラーからは『リー夫人』と親しまれています」
『理不尽すぎるマスターじゃねえか』
「リフジン? それはどういう意味ですか?」
『……失礼だから、やっぱいいわ』
「シツレイ? はい、僕の名前はシツ・レイですが」
『もういいって』