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プラネット・ホットライン
作者: むう  (総ページ数: 8ページ)
関連タグ: SF ショートショート コメディ 宇宙人 カオス 短編集 
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*6*

 【異世界転星】その2

 「つまり貴方方『田口』さんは兄弟そろって僕からの電話を受けているということですか」
 『そのうえ弟は無事テスト赤点取ったし、ボクは異世界転生したあげく……いや、まだ転生してないから転移? ま、どうでもいいけど宇宙人と会話してる。ふつうないよこんなこと』

 ―――――――ー

 「いやあ、僕もよみがえった人からの電話なんて初めてです」
 『あのな、異世界転生ってのは、死んだと思ったらちがう場所で寝てて、神から特殊能力を与えられて、仲間作って魔王を倒すってのが主流なの』
 「田口兄さんはなぜ、そんなに物知りなのですか? ご自分が死ぬことを理解していたのですか?」
 『そーだよ漫画の読み過ぎ! 冴えない陰キャの高校生! ワンちゃんあるんじゃねと思ったら本当に現実になった。現在ちょっと転移する世界がおかしい系ラノベの真っ只中にいる』

 「情報過多です」
 『そりゃこっちも同じだよ。なんか毒気が抜かれた気分だ』
 「特殊能力って話ですが、その神とやらはまだ来てないのですか? だったら異世界転生? ではなく、貴方のいる場所は地獄か天国か……」
 『やめろ夢を壊すな。実際一時間くらい経ってるけど』
 「……神などいないのではないですか」
 『やめろ、それ以上は自分が本当に痛い奴になるからやめろ』

  ――――――――ー
 
 「もしかすると魔王? のポジションが僕だったりします?」
 『……なにその冴えなさすぎるムーブ。あんまりだよ。論破で戦うんか? 宇宙人相手に?』
 「【スキル】 コミュニケーション、とか」
 『お前無駄に話対応するのやめろよ。傷をえぐるな。そして伏線を回収するな。すごいぞ回収しても虚しさしかない』

 ――――――――――ー
 
 「うーん、らのべ? ってやつは分かりませんが、僕の星にも主人公と仲間が悪を倒す話はあります」
 『マジ? どんな話?』
 「主人公が持ってるのは【対応力】という能力です。舞台は白いお部屋。敵さんは、ちょっとイラッとくる言語で攻撃を仕掛けます』
 『……ん?』
 「主人公とその仲間は、【対応力】で敵をやっつけます」
 『え、待って、クレーム対応じゃねそれ。いやいや、全然華もないストーリーじゃん』

  ―――――ー

 「生憎セキュリティに難のある星ですので、結局は言葉で封じ込めるしかないんですよ……」
 『哀愁を漂わせるな。コミュ障の傷が増えるからやめて。ことごとく失礼だねお前。弟から聞いてるけどマジで失礼。天然? っていうか、なんだろう、悪意のない言葉づかいがなんかなあ、心にこう、グッとくるんよ』
「【スキル】かどうかは知りませんが、僕は、自分の話がシラン人の体調不良につながるらしく」
『これが【コミュニケーションスキルに難のある】ってやつか……いや、一周回って怒りもないな』
「怒られると僕も困ります」

 ―――――――

「それで田口兄様。神はどこにおられますか? もしよろしければその、大賢者とやらのデータも取りたいのですが」
 『神はボクを見捨てたようだ。すげえ、言葉並びはめちゃくちゃかっこいいのに、めちゃくちゃダサいぞこれ』
 「美少女とやらは、どこにおられますか? キャッキャウフフの意味を拝受願いたいのですが」
 『二次元の中にしかいなかったみたいだ……」

 「……貴方のいる場所のお名前を、今一度確認したいのですが」
 『多分地獄だ。それかあれだ、【無駄に三輪車にはねられた男子高校星】だ。絶対これ異世界転生じゃない。ひどすぎる』
 「んじゃ、【異世界転星】としておきますね。グッドラック。……すみません僕は地獄には行けそうもないや」
 『また電話がかかってきたら、そんときは多分地獄でキャッキャウフフしてると思うから、こうご期待ってことで』
 「……その際もまた寝そべったままだってセンはないでしょうか」
 『そん時はまた、グッドラックって励ましてくれよ大賢者』


 【X月X日 シラン星『無駄に三輪車にはねられた男子高校星』を記録】
 

 

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