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作者: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (総ページ数: 6ページ)
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*5*
………
「…………」
七夜は、知世子達からある程度の事を聞いた。
「死人が赤いフィギュアに……?そこだけ引っかかるが、それ以外は分かった」
「あのバカが……俺達F.D.Xがどれだけこの世界の奴らが暗滅教や真実に辿らないように苦労してきたか分かってんのか……」
七夜はため息を吐くと、後ろで隠れていた知世子が話しかけてきた。
「あ、あの……あなた、そういえば名前は……」
「……桜井七夜、所属組織はF.D.X」
「簡潔に言えば、お前ら魔法少女とやらにとって敵みたいな存在だ」
「……とか、言ってる場合じゃねえ状況だけどな」
「それにお前らは暗滅教を見ちまった以上、そう振る舞う理由もない」
七夜のその言葉を聞いて、知世子は何か思い出したが、それは七夜にはどうでもいい話だっただろう。
「魔法少女……人々を安心させる平和の象徴、戦えない人達の安らぎのシンボル」
「その凪って奴が、お前らをそういう目的で魔法少女なんてのに任命したんだな?」
「はい……もう1人いたんですが、その……」
「………分かってねえな、何が平和の象徴だ、ヒーローだ」
「アニメやマンガとは違う、何の訓練も実績も精神も足りていない」
「本当にただ望んでもないのに能力を持たされただけのただのガキだぞ………」
そう言った瞬間に七夜の姿は消えた、と思った次の瞬間には知世子の前に立っていた。
その右手には短刀を持っており、その刃先は知世子の首に向けられている。
首元まで来ており今にも切られそうだ。
「分かるだろ、お前らは『普通』側の人間だ」
「こんな殺意の無い攻撃にも対応出来ない……まあ、それが当たり前の奴らだ」
「ヒーローの名前や存在ってブランドだけで人々が安心するほど人間ってのはバカじゃねえし、そこまでの強さがある人間ってのは限られてンだよ」
「…………」
「確かにそうかも……」
「万古さん…?」
「私達はあの凪って奴に勝手に魔法少女の見込みがあるとか言われて、こんな格好させられて、更には……」
「最初の仕事で……目の前のこいつが居なかったら私達は死んでたかもしれないわね」
「……っ」
「暗滅教のあいつらは規則外だが、それより少し下程度の奴らが裏にはゴロゴロいる」
「ファミリーが壊滅したとはいえ腐った性根の奴らはゴロゴロいる、ヒーローごっこで近付いたらお前らなんて……いや、こんな事聞きたくねえわな」
「が、人々を救うなんてのはそういうことだ」
「状況を分かってるようで何も分かってないような奴に絡まれてお前らも面倒なことになったな」
万古は知世子から離れると、そのまま歩き出す。
「あっ……」
「止めるな、あれでいい」
「望まれただけで危険に足を突っ込むよりは、その足を洗った方がそいつの為になる」
七夜は知世子達に背を向けたままそう言うと、知世子達の前から姿を消した。
残された知世子はその場から去った万古を追いかけようとする。
万古は既に知世子達から離れており、もう既に見えなくなっていた。
世界を救い人々を安心させる『魔法少女』
ある男が希望となる為に考えついたそれは非現実的だが恐ろしい今の現実によって、あっという間に塗り潰されてしまった。
万古は知世子達から離れながら、考える。
(これでいい、これでいいでしょ、そもそも魔法少女とか勝手にやらされてただけだし、凪なんて勝手に……)
……
「私は……これからどうすれば……」
知世子はまた1人になってしまった。知世子達がいる場所は、先程七夜と万古達といた場所から少し離れた場所にある路地裏。
知世子は1人になった途端に心細くなり、寂しく感じていた。
「ロリポップキャンディ……魔法少女」
「凪さんが、私に世界を安心させる魔法少女になって欲しいと言って、この格好になって……」
「1週間だけだったけど…楽しかった」
知世子でも分かる、あの赤いドラゴンに襲われそうになった時自分は逃げるだけしか出来なかった。
七夜はそれを一切恐れず、拳1つで叩き落とした。
あの時理解した、人々を安心させるにはあれだけの力が必要だということを。
自分達は無力だった。だから助けられた。
「……」
知世子は沈黙していた、自分の無力を痛感して、そして後悔をしていた。
自分が強ければ、少なくともこんなことは無かったのではないかと。
「……」
知世子は、七夜の事を考えてみる。あの人はどういった人物なのか。
「…………えっと」
そして、何をすべきか決めた。
「………俺が任天堂世界に来て41年8ヶ月19日8時間48分」
「歳は変わらずとも長居しすぎた奴らの精神は擦り切れ始めてきた」
「その分犯罪は減った……だが、本格的に組織と言えるものは俺達F.D.Xという表向きの悪だけになったか」
「マスターアマゾネスはイツメンが焼け死んで終わり、ア・カウント・バーンも壊れて、遂に世界総合研究所も無くなったか……」
「魔法少女なんてもんが欲しくなる気持ちは分かるが、よりによって小学生の戦いも知らない小娘にやらせるなっての……」
「………」
「あいつこれからどうすんだろ……」
七夜は、知世子達が歩いて行った方角を見ていた。
その視線の先には、知世子達の飾りに着いていた飴玉が転がっていた。
魔法少女…大海を知らない蛙のように淡い考えで生まれた、平和のマスコット。
そんな存在を七夜は理解出来なかった。
「平和とか、終わりとか、脅威とか……もうわけわかんねーな」
「俺は今、はたして生きてるって言える状態なのだろうか……」
「………そういやあの小さいの、1人で大丈夫か」
「一応まだ小学生なんだし、移住区に連れてやるくらいはしとけば良かったか……?」
七夜は知世子達の心配をしながら、とりあえずは歩くことにした。
向かう先は、任天堂世界の怪物の1つであるブラキディオスの元だ。
七夜は知世子達と別れてからすぐに、ブラキディオスのいる場所に辿り着いた。
その場所は、街から離れた所にあった。
そこは暗滅教の施設、つまりは暗滅教団の本部近くである。
「……クロスオーバー能力、あいつはそう言っていたな」
「任天堂世界は基本『任天堂ゲーム』が能力になる、それを無視した例外みたいな奴があれか……この間リオレウスを見た時点で、予感はしていたが」
七夜は辺りを見渡す。
すると、建物の中から悲鳴や叫び声が聞こえてくる。
建物の中に入ると、そこには血塗れで倒れている人々がいた。
その中には、知世子もいた。
知世子は全身傷だらけで、意識はかろうじてある状態だった。
「う……あ……」
「……………」
「……ううっ」
知世子はなんとか立ち上がろうとする、しかし体が思うように動かない。
体中に激痛が走り、動こうにも動けない。
向こうには……暗滅教の使徒がいた。
「………あれはなんだ?」
「レイア様が能力で呼び出した黒と黄緑の竜……粘液が爆発を引き起こし、あちこちを蹂躙していたところに来たのが、そこのロリポップキャンディと名乗った戦士」
「彼女が愚かにも竜に立ち向かった結果、この通りに」
レイアと呼ばれる女性は、倒れた知世子を見ながら言う。
知世子はもう動くことすら出来ずにいた。
その様子を見た七夜は、ため息をつく。
そして、その瞬間に七夜の姿は消えた。
次の瞬間には、レイアの背後に立っていた。
「あの時しっかりお前を仕留めておかなかったことが、俺の完全な落ち度だ」
「!」
ブラキディオスの拳が七夜の腕とぶつかり合うが、互いに弾かれて地面に付く。
「ブラキディオスの粘液は空気に触れて起爆するが……タイムラグはある」
「この任天堂戦士でカプコンがやるような奴相手なら、手慣れた人間でもやりあうのはムズいだろうな、ましてやこんな化け物だ」
「だが俺は違う」
七夜は、拳で地面を叩きつける。
衝撃で砂埃が発生し、ブラキディオスと知世子の姿を隠した。
そして七夜は、その場から消えていた。
七夜はブラキディオスの真後ろにおり、そのままブラキディオスの背中に居るレイアを殴った。
七夜の一撃で、レイアは吹き飛ばされる。
そしてレイアはそのまま気絶する。
七夜は倒れている知世子を抱えて、ブラキディオスから離れる。
………
「俺一人じゃ流石に人狩り出来ねえ、後で仲間を呼ぶか……」
「ん……」
知世子は既に事切れていたが、何かを伝えたかったのか、自分の顔にチョコレートで文字を頑張って書こうとしていた痕跡があった。
『生まれ変わったら 優しくて強くて 貴方も守れるような魔法少女になりたいです』
「こいつは……………見せかけじゃない、結果はどうあれ本気でやろうと思っちまったのか」
「平和の象徴、魔法少女……ロリポップキャンディ」
「心配するな、俺は人の事は覚えやすいし中々忘れない、もう何十年も前の奴をずっと覚えようと努力してるんだ、お前の生き様は保証してやる」
知世子の体も消えていき、彼女もまた赤色のフィギュアのように変化していった。
「……あいつが言っていたことは嘘じゃなかったのか」
七夜は知世子が別れる前に最後に残した言葉を思い出しながら、呟く。
知世子が直前に言った言葉は、魔法少女の有様についてだった。
「私にとって、この魔法少女は……ただのコスプレの類ではなく、凪さんが願ったように人々の安心の為に戦うもの……」
「だから、私は戦う……皆の笑顔を守りたいと思った」
「けど、その願いも……結局は叶わなかった……」
「ごめんなさい……本当に……」
「……もし生まれ変わることが出来たら、その時は……あなたも守れるような……魔法少女に……」
………
「悪くない、お前は弱くない、よくやったよお前は」
「この世界が理不尽なだけだ、俺でも一度は勝つことを諦めたような奴らだ」
「少なくともお前は、俺にとってはまだこの世界に足掻く理由になった」
しかし、七夜をもってしても任天堂世界を突破し、ダンテを倒すことまでは適わないだろう。
ここから数年後、万物を司る存在、神にも等しい存在、人知を超えた生命体、そしてダンテと対等の異星人の使いが現れるまで…………
…………
『数年後』
F.D.Xにて
「あの人形が紛失しただと!?」
知世子の死後に生まれた赤い人形が無くなった、あれから七夜は、あの人形をずっと持っていたのだが、それが突然無くなったのだ。
「別に無くなってもいいでしょ、魔法少女みたいな格好してるのにデブみたいな見た目してたし、全然可愛くな
『ズゴッ!』
「…………七夜が二葉の顎に蹴り入れる所初めて見た」
七夜は、持っていた物を握り潰す。
それは知世子の変身アイテムだ。
知世子が死んでいた場所に落ちていた、知世子の持ち物である。
七夜はそれを生きていた証として残していた。
…………
そして、知世子は目を覚ます。
「え……なんで……私は、死んだはずじゃ……」
辺りを見てみると、遠くには海が見える……どうやら島のようだ。
島の設備は結構充実しているので、無人島では無いことは分かる。
「私はどうしてここに……!!」
「知世子…?」
「凪さん!!」
「寂しかった……無事で、無事でよかった、凪さん……」
「………無事じゃないよ」
「え?」
「知世子、俺はね……ここに来て分かった、人は死ぬ時どこに行くのか、天国でも地獄でも、煉獄でもあの世でもない」
「やあ、ロリポップキャンディ……いや飴野知世子ちゃん?君の能力は面白そうだ」
「僕のトモダチにしてあげるよ」
知る人は少ないが、任天堂戦士に死は存在しない。
死んだ後に待っているのは生き地獄なのだから。
【スマブラ戦記 ロリポップキャンディ】
END