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作者: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (総ページ数: 6ページ)
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*2*
【第2話】
サテラビューワールドのラジオが目まぐるしく流れる。
18時になるとサウンドリンクゲーム『スーパーマリオブラザーズ3』からマリオとルイージ、そしてクッパが登場して番組が始まる。
「はい! こんばんはー!」
「こんばんは~」
「……ふぅ……」
マリオが元気よく挨拶すると、続いてルイージも笑顔で挨拶し、クッパは不機嫌そうに受け答えをしている。
キャストとしてマリオ達と共に芸能人によるラジオトークや話を盛り上げる音読と共にゲームを楽しめるというのがサテラビューの魅力だった。
ソラはその音声をバックにゲームをプレイしながら、今後のことを考える。
「現実世界へ帰る…….にしても、その方法は分からない」
「なら、どうにかしてこの俺だけの電子空間で平和に永久移住する方がいいのかな」
いつまで任天堂世界で過ごすことになるのか分からない、命の危険性もあるのなら安定した供給があるここに居座っていた方がいい。
「しかし、どうやったら元の世界に戻れるんだ?」
「それに、俺はなぜここに来て、選ばれてしまったんだ?」
「…………分からないなぁ」
彼は頭を抱えながら悩む。
今、悩んでいることはそれだけじゃない。
「……サテラビューワールドにいる間は向こうでは完全に存在が消えている」
「死んだならまだしも、生きて何回も目撃されているとなると怪しまれる……なるべくこの世界と能力は誰にも知られたくない、どうすれば……」
「……ん?……あれってなんだ?」
考え事をしながら歩いていたその時、目の前に何かが落ちていた。それは小さな箱だ。
ソラは拾い上げる。
「これは……ゲームソフトか?」
「パッケージには『エキサイトバイク ぶんぶんマリオバトル』と書かれているぞ」
マリオがバイクに乗ってレースをする、サテラビューのサウンドリンクゲームの一つだ。
「………そうだ!」
ソラは一度、能力を解除する……任天堂世界でソラがいるのは、狭くてボロい一軒家。
任天堂世界の『どうぶつの森』は戦いをしない任天堂戦士達の居住区となっており、そこで平凡に一日を過ごしている。
女性だけで構成された傭兵組織の『マスターアマゾネス』と治安を守る中規模な自警組織『ア・カウント・バーン』の2つの組織によって規律を保たれており、平和そのものでこの辺りに争いごとはない。
そんな彼らの住む森の奥深くにある古びた洋館にて、彼らは生活していた。
ア・カウント・バーンのメンバーである山吹桜に連絡を入れた。
「え!?これからは自分が移住区に食べ物を提供する……ですか!?」
「はい、移住区や組織の皆には世話になっていますし、何か役に立てることがあれば……と」
「そ、それでも……前はアテも無くさまよっていたのに、どうやって……」
「大丈夫です、任せてください」
危険を犯さず平穏に生きる秘訣、それは周囲や組織に対するコネと恩を作ることだ。
これさえあれば万事上手くいく。
ソラは笑顔で答えた。
「わ、分かりました!すぐに用意しますね」
「ありがとうございます」
電話を切ると、すぐさま必要な道具の準備に取り掛かる。
「さて、あとは」
マリオぶんぶんバトルのラジオ放送が始まり、ゲームが始まる。
サテラビューの任天堂戦士としての能力はもうひとつあることが分かった、それはラジオで配信されている間だけそのゲームの力を使えるのだ。
これによってソラの傍には赤いバイクが出てくる。
「よし、これに乗って……」
ソラは移住区からバイクに乗り、飛ばして果まで一気に飛んでいく。
……そして、ここで止めて周りを見る。
バイクの能力は自身を『エキサイトバイク』の任天堂戦士と思わせるためのブラフ、何より自分がちゃんと手伝っていると思わせるためだ。
遠くまで来たら再度サテラビューの世界へ行き…コンビニで多数の弁当を自費で購入。
むろん、いくらゲーム世界が多くてもコンビニ弁当のパッケージが付いたまま運ぶのは不自然…
そこで、中身を一度出し…空っぽにして別の皿の乗せて持って行く。
こうして、ソラはサテラビューワールドでマリオぶんぶんバトルのラジオを聴きながら運転しているように見せかけつつ、料理を持って移住区の人達の元へやって来た。
「おまたせしました!」
「ほ…本当に来た!しかも、沢山持ってきた!!」
「はい、いつものお礼です」
「こ、こんなにいいんですか!?」
「もちろん」
ソラが微笑みかけると、移民達は喜んでくれた。
「うぉー!ありがてぇ!」
「これで、明日も生きられる!」
「す、凄い…一体どこでこんなに…」
「それはまぁ……秘密で、それでお願いが…」
……
ソラは移住区の組織と話を付ける。
「定期的に食事を提供する代わりに俺の身の安全を…」
「うむ…分かった、君を守る、約束しよう」
「ありがとうございます」
「この移住区は住むことは容易だが常に食料問題がある、フルーツや釣った魚にも限度はあるし、かといって他所の世界から取りに行くのはリスクが高い」
「そんな中…ここまで料理といえるものをここまで回収してきたのは非常に素晴らしい成果と言えよう」
組織の長らしき男が言う。
彼は、ソラに感謝した。
組織のリーダーである男の名は……
リーダーの男の名=オダ・ノブナガ……だった。
彼は、自分の名前を偽名として名乗る事で、何かから身を隠しているらしい。
しかし、その名前を聞かないことが自分に深堀しないことの約束であった。
「それで頼みがあるんですが、共同スペースじゃなくて自分一人だけのマイホームが欲しいのですが…」
「住居か?それならウチよりマスターアマゾネスのイツメンの所に行った方がいい、奴が能力で家を作っている」
そう言われ、ソラはイツメンの元へ向かう。
マスターアマゾネスの拠点は、巨大な洞窟だ。
その奥深くには、大きな屋敷が建てられている。
そこにソラがやってきた。
その家の玄関で見張りをしている女性がいた。
ソラは彼女に話しかけ、自分だけの家を作るように伝えて、マイホームを手に入れた。
「よし……ここまで外堀を深めておけば、安全は保障された」
「後は……この移住区にいる限り、この能力は極力見られないようにしないとな」
「サテラビューワールドを知られれば、必ず面倒なことに巻き込まれるだろう」
「……ふぅ、疲れた」
今日も色々あった、ソラはベッドで横になる。
この世界に来て約1ヶ月、ようやくこの世界に順応してきていた。
最初は不安だったが、今は大分慣れてきた。
仕事を終えた後の疲労感と共に、心地よい眠気が襲ってくる。
「…明日から大変だが、まあ仕方ない」
それから数日経った頃。
ソラがバイクで遠くに行って、こっそりサテラビューワールドから食材を回収して、それを移住区に運ぶ、それを繰り返していた。
山吹は釣竿を構えて、魚を釣っている……これも食材になる。
「貴方の能力、ダンボールがあればなんでも作れるんですね」
「便利じゃないですよ、そもそも任天堂世界にダンボールがそんなにありませんから……」
「あれ」
大きな家…オダが住むところに見慣れない男性が居た、ア・カウント・バーンのメンバーでもなさそうだ。
「あれは?」
「知りませんか?あの方は祖父江四柳さん…私たちよりもずっと規模が大きい『灯火』という組織で……」
「私も詳しくはありませんが、リーダーのオダさんは彼と親しいらしくて定期的に会いに来ているみたいです」
ア・カウント・バーンの山吹桜と話をしていたその時だ。
「……えっ!?」
山吹は驚きの声を上げると、その場で硬直してしまう。
それは……その四柳が、扉から出てこちらに向かってきていた。
「ソラ・テンドウはそこの男か」
「えっ、ああ……はい、そうですけど」
「俺は祖父江四柳、この任天堂世界全ての監視、及び治安維持をしている『灯火』という組織を経営している」
「そ、そんな人が………何か?」
「危険を顧みずに……移住区にわざわざ大量の食糧を回収しているようだが………」
「まあ、はい、色々ありまして」
「………」
「来るか、灯火」
「え!?」
「AKB(アカウントバーンの略)には所属していないのだろう」
「は、はい……彼はここで住んでるだけのフリーですけど……」
ソラは、祖父江の言葉に戸惑うしかなかった。
目の前にいる男は、ただ者ではない。
そう感じさせるオーラがあった。
祖父江はソラに尋ねる。
しかし、ソラはその問いに答えられなかった。
「………」
「何かあるのか」
「ひとつ聞きたいのですが、灯火に行くとなるとここから出るしかないのですか」
「………そうだな、確かに移住区には住めなくなるぞ」
「すみません、なら無理です」
「……」
「この移住区が大事なところなので……何より俺戦えませんし、ここにずっと居たいかなって……」
「最後に聞くが脱出をする気はあるのか?」
「脱出……脱出?んん、どうだろう……今の所は快適だし……」
「……………」
「ならいい、無理強要はしない」
「………快適なのか?ここが」
「え?ああ、まあ他と比べて平和だし……」
「………」
祖父江はソラを見たあと、世界を抜けて去っていった。
「灯火もですけど……貴方、あんなに頑張っているのに組織に入らないなんて……」
「俺、そういうの苦手なので……自分だけの空間では1人で居たいんですよ」
「…………」
………
「脱出か……サテラビューワールドは現実並、いやそれ以上に快適な俺だけの世界、現実でもここに居られるならいいけど、そうなるかも分からないしな」
ソラはサテラビューワールドで今日起きた事を考えていた。
「それに……なんだかんだ言って、こっちの世界も悪くはないからなぁ」
……
翌日、ソラ今日もマリオぶんぶんバトルを聴きながら、バイクを走らせる。
しかし、今日は様子が違った。
「……誰かに見られている?」
最近食糧を運んでいるせいで目を付けられたのだろうか、視線を感じることが多くなった
。
「おい!待て!」
「……やっぱりバレたか」
追ってきたのは、黒い服を着た男たちだ。
彼らは、恐らく現実でアウトローな立場の危険人物だろう。
「こっちはバイク乗っているから最悪……待てよ?」
「こんな時こそ能力だ!」
ソラはバイクを飛ばし、視界が悪い場所まで向かった瞬間に能力を使用してサテラビューワールドに飛ぶ。
サテラビューワールドはサウンドリンクゲームの放送が開始されている時、そのゲームに連動したイベントのあるエリアが自動的に開通される、そこからソラはサテラビューワールドへ侵入していた。
サテラビューワールドは一応任天堂世界のゲーム世界と繋がっていて、そこを経由して何とか追っ手を撒くことが出来た。
「す、すみません、ちょっと危ない人に追われかけたので遅れてしまって………」
「……し、問題無しだ」
「え?」
弁当を運んで移住区に帰ってくると、自分のマイホームから祖父江と知らない男が出てくる。
「あの………」
「ああ、悪い……連日で来ることになったが」
「そいつが最近移住区に来たやつか」
「あの……ウチに何か?」
「お前を怪しんでるわけじゃない、実はア・カウント・バーンから移住区に違法な薬物売買を目撃したとタレコミがあった」
「家のアチコチにそれっぽいのが無いのかガサ入れしてたんだよ、灯火でヒマなのは俺と四柳くらいだからな」
「七夜、一言余計だ」
「えっ、それは物騒な……いや、本当に困るな折角……」
「……ん?それ飯か、そういや四柳がお前が食糧を配達してるとか言ってたが」
「………へえ」
「何か?」
「いや、なんかやべーもんあったらお前もその移住区の自治組織に話しとけよ、じゃ俺らはコレで」
「はあ………」
そう言って、祖父江と相方の男はまた何処かへと向かっていった………
「…………どうだ、七夜」
「信じらんねえことに今まで以上に黒だ、まさか……有り得んのか?こんなことが」