コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- もう一度、青空を。
- 日時: 2016/07/12 18:16
- 名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=129.jpg
- 貴方に青空を届けよう。 
 それが僕に出来る唯一の幸せ。
 またの名を愛、だから。
 『君にこの青空を贈るよ___ソラ』
 _________________________________
 あき朱音です、こんにちは。
 元はめろんそーだ、として活動していました。
 今回書くのは、しんみりとした恋のお話、です。
 青い空って、見るのも、描くのも、何をしても綺麗ですよね。
 これは、そんな青空を巡る、少年と少女のお話です。
 それでは、是非、楽しんで頂けると嬉しいです!
 ※挿絵を描きました! URLからです※
 *もくじ*
 登場人物>>1
 おたんじょうび。>>2
 手作りクッキー。>>3
 蒼空のこころ。>>4
 おめでとう。>>5
 綺麗な瞳。>>6
 恋しちゃった。>>7
 伝えても。>>8
 満点の星が。>>9
 届くことなく。>>10
 恋の想い出。>>11
 貴方が大好き。>>12
 恋する乙女。>>13
 恋の話でも。>>14
 何で貴方は。>>15
 喫茶店事変。>>16
 二人の話に。>>17
 尖った笑顔。>>20
 あの人の過去。>>21
 信じることが。>>22
- Re: もう一度、青空を。 ( No.8 )
- 日時: 2016/01/24 22:54
- 名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
- 参照: 伝えても。
- 俺はもともと、好きなんて感情、持ったことがなかった。 
 女の子は皆近付いてきたけれど、その態度は皆、作り笑いに見えて。
 モテるためだけの笑顔なんて気持ち悪い、って思ってたんだ。
 でも、その女の子と出会って。
 その笑顔がホンモノだって、分かった。
 嘘偽りのない笑顔は、俺の心を溶かしていくように甘かった。
 でも、その子には好きな人がいるし、両片思いらしい。
 伝えたくても伝えられないのが、つらい。
 ホシの送ってきた内容は、とても悲しくなるような恋の文面で。
 僕は苦しくなって、ベンチにもたれかかる。
 恋なんてしなければよかった、と。
 そう思うことは、誰だってある。
 でも、ホシは…………哀しいだけの恋をしてる。
 『ホシはどうしたいの?』
 その気持ちを確かめる為に、僕は文面を送る。
 だって、彼が恋を実らせたいのか、諦めたいのか、わからないから。
 わかるのは自分自身で、僕にはホシの気持ちの端っこもわからない。
 だから、その気持ちを知ろう。
 『諦めたい。
 この気持ちはもう、伝えても届かないから』
 伝えても、届かない____。
 その言葉を、小さく口にしてみる。
 その響きは重くて、夜の闇に押しつぶされるような感覚をおぼえた。
 ホシの話を聞いたら、早く帰ろう。
 歩きスマホは絶対にしない主義の僕はそう決めて、また画面を見る。
 『だったらさ、告っちゃえばいいんだよ』
 『ねちょねちょ引き摺るのはつらいよ。
 それなら、告って振られて、諦めたほうがカッコいい』
 これはただの僕の考え。
 ホシがこれにどう思うかはわからないし、これでいいのかどうかもわからない。
 けれど、大事な友達の為ならば、僕は自分の意見はしっかり伝えたい。
 『……そうだね、俺、勇気が足りなかったみたい』
 彼はそんな文を送ってきた。
 『告白、してくるね。ありがとう』
 画面の向こうで、ホシが笑っているような気がした。
 嗚呼、神様。
 どうか、彼の恋を……叶えてあげてください。
 僕は月を見上げて、小さく祈った。
- Re: もう一度、青空を。 ( No.9 )
- 日時: 2016/01/25 21:39
- 名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
- 参照: 満点の星が。
- 俺は、走った。 
 あの家を目指して、全速力で走った。
 中学時代に陸上部だったとはいえ、もう体は鈍っている。
 足は引きちぎれそうに痛いし、息が止まるほど苦しかった。
 それでも、走り続ける。
 今止まってしまったら、もう一生伝えられない気がしたから。
 口の中に、走ったとき特有の渋い、何とも言えない味が広がって。
 それが気持ち悪くて、吐きそうになっても。
 俺は、足を止めなかった。
 「は、あ、つい、た……げほっ」
 震える足が、冷たい汗を落とす。
 その足を止めたのは、『暮見』と書かれた表札の前___。
 震える手でチャイムを押すと、心が癒されるような淡い音が鳴った。
 「……あれ、ホシくん……?」
 そこに立っていたのは、俺の最愛の人。
 さらさらの黒い髪を下ろして、優しい香りを漂わせて。
 綺麗な瞳は、俺を真っ直ぐに見ていた。
 「くれみ、さん」
 整わない息で、彼女を呼ぶ。
 そして、止まる。
 ……いいのだろうか。
 自分の気持ちを伝えても、振られるのは分かっている。
 それに……優しい彼女にとって、これは迷惑なのではないか。
 「……少し、話があるんだ。
 ……そこの広場まで、来れる?」
 彼女は少し考えてから、大和撫子のような優しい笑顔で頷いた。
 広場について、ふたり、ブランコに並んで座った。
 きぃ、きぃ、と響くブランコの音が、夜の静寂に響いている。
 「ホシくん……? お話って、なあに?」
 自販機で買ったホットのミルクティを両手で包み込んで、彼女はマフラーで口元を寒そうに隠す。
 白い息は、闇の中に溶けて見えなくなった。
 「……あのね、暮見さん」
 言わなければ、ならない。
 伝えなかったら、俺は一生後悔する。
 「俺、君のことが好きです。
 ずっと、ずっと好きでした」
 彼女の瞳が見開くのが、夜目でもわかった。
 困っているのか、焦っているのか。それは、彼女しか知らない。
 「___ありがとう、ホシくん。
 でも、わたし……好きなひとが、いるの」
 申し訳無さそうな声が、隣のブランコから聞こえた。
 その声は、やっぱり可憐で、溶けてしまいそうで。
 「……うん、知ってたよ。聞いてくれて、ありがとう」
 「……ごめんね、応えられなくて。……ばいばい」
 彼女はブランコから降りると、いつもの優しい笑みを浮かべた。
 ばいばい、と言い返せば、ほら。
 彼女は、闇に溶けていく。
 もといた場所に、戻っていく。
 ぱたり。
 俺は、草っぱらに倒れた。
 目じりを、冷たい水が伝ってくる。
 ……涙だ。
 あぁ、本当に好きだったんだなぁ。
 これで、諦めなきゃならないんだなぁ。
 「だいすき、だなぁ」
 伝う涙は、一向に止まらなくて。
 滲む視界に、『ありがと』とだけ夜空に伝えて。
 「…………これからも、好きでいていいですか…………ソラ、ちゃん」
 見上げた夜空には、満点の星が広がっていた。
- Re: もう一度、青空を。 ( No.10 )
- 日時: 2016/01/27 20:28
- 名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
- 参照: 届くことなく。
- 「おはよう、夜空!」 
 にっこり。
 あんなことがあった翌日、ホシは笑顔だった。
 その瞳は、とても充実しきったような明るい光を湛えている。
 ____いいこと、あったんだろうか。
 彼の話では、彼女には好きな人がいる、と聞いていたが……。
 叶っているといいな、なんてね。
 「あ、あぁ、おはよホシ……どうだった?」
 昨日の、とだけ言って。
 こんなこと聞くのは失礼かもしれないけれど、友達だから。隠し事は嫌だなぁ、なんて思ったり。
 「……振られちゃった、呆気なかったよ」
 あはは、と小さく舌を出す。
 彼は悲しそうな素振りなんて全然見せなくて、ずっと笑っていた。
 「あ、なんで泣かないんだって思ったでしょ?
 昨日散々泣いたからさ、もう平気なんだ」
 バカみたいな情けない振られ方、と彼は言った。
 「でも、後悔はしてないんだ。
 伝えられただけ、良かったって思ってる」
 そんなカッコいい台詞を吐く彼は、情けなくなんかなくて。
 寧ろ、憧れる位。輝いて見える位、かっこよかった。
 僕も、いつかはソラに……なんて。
 そんな夢みたいな想像をして、小さく笑った。
 僕には無理、そんなこと知っている。彼女に伝える勇気が無いことも、伝えても届かないということも。
 僕は、彼女の友達でいい。
 仲の良い幼馴染み、のレッテルのままでいい。
 この気持ちは、届くことなく消えていくだけ。
 それを待つだけ。
 悲しい気持ちを抑えつけて、「そっか。よく頑張ったじゃん」とだけ言って、笑うのだった。
- Re: もう一度、青空を。 ( No.11 )
- 日時: 2016/01/30 00:04
- 名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
- 参照: 恋の想い出。
- 好きだと気付いたのは、いつだっただろうか。 
 それは中学生の頃の、寒い冬だった気がする。
 お互い、何年の頃だったかなんて、覚えていない。
 大事なのは今であって、昔のことなんて関係のないことだ。
 でも、今日は特別。
 彼の誕生日には、想い出を振り返ると。
 そういうことに、決めているからだ。
 冬、私は友達を待っていた。
 どんな理由だっただろう……彼女が所属する何かの仕事、だったかな。
 根暗で無表情、感情が分からない___そう言われていた私には、片手で数えられる程しか、友達は居なかった。
 マフラーもなく、カイロもなく、薄いブレザーの制服のまま……ただただ、待っていた駅前。
 指は寒さで悴み、送ったSNSにも既読は付かない。
 もう帰ってしまおうかとも考えたが、数少ない友達を寒さで手放すのは、流石の私も気が引けた。
 そのとき、向こうから人影が。
 その影は段々と私に近付いてきて、正体が見えた。
 整った顔に、夕日に映えるような淡い綺麗な瞳。
 決して『クラス一のイケメン』とは言えないような男の人。
 その人は私の学校の制服を着ていて、先輩だろうか、と気付く。
 「……寒くない?」
 彼は、それだけ聞いた。
 優しい、心が暖かくなるような声で、それだけ。
 その瞬間、私はすっかり恋に落ちてしまっていたのだ。
 これまでの人生で、ここまで『好き』と感じた人間は、先輩が初めてだった。
 「だ、大丈夫……です」
 話すことに慣れていない私は、片言で言葉を紡ぐ。
 「あはは。声、震えちゃってるよ。
 寒いんだよね? ちょっと待ってて」
 男ものだから恥ずかしいかもしれないけどと、マフラーを掛けてくれる彼。
 マフラーから伝わる彼の体温が、私の心までもを熱っぽく染める。
 去っていく彼は、優し気な背中をしていた。
 寒い筈なのに、そんな素振りを見せない優しさに胸を打たれたのだった。
 恋は憧れ。
 そんな言葉が、今では身に染みて分かる様。
 その優しさと笑顔に憧れた私の愛。それは異様な程に歪んでいると、なんとなく気付いていた。
 私は、彼を愛していた。それは、今も昔も変わらない。
 ずっと好きだった、そして知りたくなった。
 夜空先輩の全てを、知り尽くしたいと思った。
 だからこれが、私の愛。
 これが、私の恋の想い出。
- Re: もう一度、青空を。 ( No.12 )
- 日時: 2016/01/30 19:06
- 名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
- 参照: 貴方が大好き。
- 「好きです」 
 彼、告られちゃったのね。
 今日で何回目?
 ……私が知る限りでは、まだ三回目。
 人生で三回目の告白に、彼は驚いている。
 中学三年生、卒業の近いこと。
 でも残念ね、貴方は私以上に「愛されていない」。
 私は知っている。
 彼の愛する人も、ぜんぶ。
 「……ごめんね。
 嬉しいけれど……君のこと、まだ全然知らないから……」
 とても申し訳無さそうに目じりを下げる姿が、ただただ可愛らしい。
 そのおどおどと困り果てた態度に、後輩らしきその女生徒は小さく涙を浮かべた。
 ふにゃん、と罪悪感に駆られて笑う顔は平均よりは可愛いもの。
 そう、私よりは可愛いもの。
 「大丈夫です。……聞いてくれてありがとうございます」
 彼女が、先輩に直接の嫌がらせをしようなんて悪い事に至る子じゃなくて良かった。
 「じゃあ、私。行きますね」
 深々とお辞儀をして。
 その生徒は去っていった。
 それは私の横を通っていったが、哀しさで気付いていないようで。
 覗いてしまったことに『罪悪感』を感じたのは、初めてのことだった。
 彼は呆けたような顔で空を仰いだ後、悲しそうに一瞬、くしゃりと顔を歪めた。
 苦しそうな、哀しそうな、息を止められたかのような、何とも言えない表情。
 その表情の憂いさに、私はもっと、もっと彼の中に堕ちていくのだ。
 まるで、彼に汚されてしまったように……依存してしまったように。
 「……これで、良かったのかな」
 小さく声が聞こえた気がしたけれど、途端ひんやりとした冬の風が吹いて、言葉を聞くことは出来ず仕舞いだった。
 「私も、貴方が大好きですよ」
 だから、気付いて下さい。
 私はそう呟くと、其処を後にした。
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