コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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萩原さんは今日も不機嫌
日時: 2013/04/18 19:48
名前: トレモロ (ID: NXpyFAIT)
参照: http://blog.goo.ne.jp/roki000

オリ小説執筆経験は持ち合わせていますが、学園物は初めてでありまして、作品を上手く作れる自信がありませんorz
ですがどうしてもやってみたくなってしまい書かせて頂きます。
どうかあなたのお時間を少々この作品に向けていただけると、作者としては光悦至極ッてなもんでございます。


『作品のジャンル」
・学園モノ
・コメディ?
・多少シリアス
・ほのぼの成分増し増し・・・・にしたい!

『登場人物』&『性格容姿設定』
主人公—萩原 琳奈(はぎわら りな)
無表情・男口調・恋愛無関心症状。という乙女という種類の生物から正反対の女。ちなみに結構の美人だがそれについて無頓着で髪に寝癖があっても全く気にしない。
基本、人に愛想は良く人間嫌いというわけではない、だが積極的に人に関わろうというタイプでもないようだ。

熱血漢—藤堂 奏 (とうどう そう)
熱い・五月蠅い・イケメン。という熱血イケメン馬鹿という単語がぴったりの男。
萩原同様自分の容姿に興味はないがファッション誌を少し位気にする程度には気を使っている。
人好き合いは女子男子ともに上手く立ち回っており、両性から人気。
転校生だが、たった一ヶ月で学校になじんでしまった。

貧弱男—浅木 隼人(あさぎ はやと)
貧弱・内気・優柔不断。という、モヤシ男。
高一で十月に入った今でもその内気な性格の所為なのかクラスに友人が少ない。
【エコ会】に入ったのは萩原と木内の影響であり、自分を変えたいという願いである。
実は成績学年トップの秀才であり努力家。

天然女ー木内 希 (きうち のぞみ)
おっとり・上品・美少女。という典型的なお嬢様。
入学仕立ての高一の頃はクラスの人間にもてはやされてきたが、彼女はそういう普通でない自分を嫌っていた、だが、他クラスの萩原と知り合い、色々在ったのち友人。その後当時二年生だった【エコ会】会長に誘われ入会。
人を疑うことを知らない、内外共に綺麗過ぎる女性。実はトラブルメーカー。

破天荒—清水 恵美(しみず めぐみ)
唯我独尊・自己中心的・天才。というハタ迷惑極まりない人間。
【エコ会】副会長だが、最早会長の様なふるまいを普通にする。絶対的な天才であり、それが破天荒な振る舞いに拍車を掛けている。【エコ会】を作り会長を風宮にした張本人。
実は片思いの幼馴染が居る、純情少女でもある……。

苦労人—風宮 来夏(かぜみや らいか)
苦労・疲労・労働。というスローガンを持つ生粋の苦労人(本人不本意)
いろんな人間に頼られて、仕事を押し付けられている見ているだけで涙が出そうなお人。
【エコ会】会長に清水に無理やりさせられた訳だが、一つの信念を持って行動している。
実は片思いの幼馴染が居るが、最早告白は諦めている。
頑張れ!


以下登場人物考慮中

『補足』
主人公視点での物語
主人公は女ですが男口調です、不快に思ったらゴメンナサイ。
誤植や意味の繋がらない文が在るかもしれませんが、温かい目で見守っていただくかご指摘頂けると嬉しいです。
今後どうなるかは神のみぞ知る……いや神にも解らんだろう…… 

ちなみにコメントやキャラのイラストなどは諸手を挙げて歓迎しているのでご気軽にお願いします。


【他の作品】
『殺す事がお仕事なんです』>>15
『結末を破壊する救済者達』>>53
『頑張りやがれクズ野郎』>>65

【交流場】
雑談場にあります。

【挿絵】
『私はあなた方の絵を求めている!!』>>28

【アトガキ】
『とあるトレモロの雑記帳』
——《カテゴリー》にて >>29

【目次】
『物語のハジマリ』
>>1

『第一話 萩原さんの日常』
>>2】【>>3】【>>6】【>>7

『第二話 萩原さんのお仕事』
>>10】【>>12】【>>13】【>>14】【>>16

『第三話 萩原さんの休日事情』
>>19】【>>23】【>>30】【>>31】【>>37】【>>38】【>>41】【>>42】【>>46】【>>54】【>>55】【>>56】【>>57】【>>58】【>>59

『第四話 萩原さんと厄介な連中』
>>63】【>>64】【>>67】【>>68





それではこの作品があなたに何らかの影響を与えることを祈って、作品紹介を終わらせて頂きます(ペコリ

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Re: 萩原さんは今日も不機嫌 ( No.9 )
日時: 2010/08/29 19:17
名前: トレモロ (ID: C4aj9LgA)
参照: http://blog.goo.ne.jp/roki000

おお!このような駄作にこんな事を書いていただけるとは!
しかも心配までして頂けて、作者としては嬉しさで泣きそうです!

今日は更新できなかったのですが、これからも更新頻度は少なくなっていくと思います。
何故なら学校が始まったからです。
ですが、これからも見ていただける方の温かいお言葉を胸に頑張っていきたいと思います。
では、ご縁が合ったらまた会いましょう。といううか会いに来て頂けると嬉しい!(かなり本気

Re: 萩原さんは今日も不機嫌 ( No.10 )
日時: 2011/09/03 00:36
名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
参照: http://blog.goo.ne.jp/roki000

『第二話 萩原さんのお仕事』2‐1

夢の世界。
それは自由な世界だと言うが私はそこまで夢で自由になった覚えは無い。
大抵の夢は意味のわからないものを見て意味のわからない事をして意味のわからないまま目覚める。
訳のわからない言葉の羅列だがそれは、『夢だから』の一言で片付いて仕舞うだろう。
それだけ『夢』というものは不思議な何かを持ち合わせているのだと思う。

だが、私は現実でも意味のわからない事になっていた。
夏休み明けに転校という珍しい事象を携えてやって来た男にいきなり所構わず『結婚』という事象を突き付けられ、当然の如く断ったら今度は私の事を知りたいと言う。
本当にわからない男だ。
恐らく私がこの男を理解することは一生無いんだろうな。
そんな事をおぼろげに考えていると突然の衝撃に私は飛び起きた。


「こら! 萩原!! 授業中に寝るな!!」
目の前に怒りを携えた中年の顔が在る。
どうやら教科書で頭を叩かれたようだ。
不覚にも寝入ってしまっていたらしい。
だが仕方ないだろう、今受けている授業は『数学』という文系科目好きの私にとっての一番の宿敵なのだから。
親の負担を少しでも減らすため姉は国立大学に行っている、私もそれを見習い大学は国立と決めているのだが、如何せんこんな状態ではそんなのは夢物語で終わりそうだ。
夢と言えば私はさっきまでどんな夢を見ていたのだろうか?
忘れてしまった。
「聞いているのか!」
またしてもどなり声、私は適当に頭を下げ許してもらおうと思ったが数学教師吉崎は私に、黒板の問題を罰として解け!
とか言いだした。
仕方なく黒板の前に立つ私。
とてつもなくみなの視線が痛い、木内だけが心配そうな顔で見ている、後は半笑いだ。
「……」
当然ながら理解不能だ、つーかわかるわけ無いだろう?
数字がどこか別の次元の言葉に見える。
だが、時間というものはこんな居眠り女にも平等に降り注ぐらしく。
キーン、コーン、カーン、コーン。
という今日一日の授業の終了を知らせる音が学校中に鳴り響いた。
「……、今日はここまで、次の授業のはじめに萩原にはその問題に答えてもらう、以上」
そう言って、不機嫌な顔で吉崎は教室を出て行った。
助かったとは思ったが、次の授業で不安要素が増えてしまった、後で木内に答えを教えてもらうとしよう。
だが、そんな暇は在るだろうか?今日は【エコ会】の活動があり、昨日。
『俺、この同好会に入ろうと思う!』
とか抜かした男の初めての【エコ会】デビューだ。
まあ、デビューというほどのものでもないが……。
その新人エコ会員藤堂奏の方を見ると。
「zzzzzz」
机に突っ伏して寝ていた。
アレ?私は怒られてなんであいつの耳にはどなり声を叩き込まないんだ吉崎センセ?
これは男女差別という奴か?


コンコン。
「どうぞ〜」
返事が在ったので会室に入る。
会室と言えば勿論【エコ会】の事だ、数々の試練(嫉妬の眼と奇異の目—小説のタイトルになりそうだな)を乗り越え私は放課後のこの安らぎのひと時を満喫するために、HRが終わった瞬間木内の手を引き駈け出して来たのだ。
何故か後ろに無神経熱血バカも走って追いかけてきたが。
「あ、先輩方。お早いですね」
部屋に入った途端後輩の声を聞く。
お前の方が私たちより速いがな浅木。
そんな感想を抱きながら私、いや私たちは部屋に入って思い思いのいすに座る。
目の前にすぐに四人分の麦茶が置かれた。
私はそれを一口啜ってから、目の前に陣取る男に話しかけた。
「それで藤堂、昨日帰り道に言っておいたものは持ってきたか?」
「ああ、軍手にゴミ袋に、あと、三角巾とマスクだろ?」
その通りだ、これは活動に欠かせないものなので昨日のうちに持ってくるように言っておいたのだ。
忘れてきたらどうぶん殴ってやろうかと考えていたのだが、その考えはどうやら実行に移せないらしい。
残念だ。
「ねえ、琳奈」
「どうした?」
木内が話しかけてくる、どこか困った表情だ。

「私軍手忘れちゃった……」

沈黙
流石に木内を殴る事は出来ない、どうしよう。
代わりに藤堂を殴っておこうか?
「ちょ、なんでにじり寄ってくるんだ萩原!寄って来てくれるのは嬉しいがそれは系統が違う気がするぞ!?」
気持ち悪い事を言われたので中断する。
「あ、木内先輩。僕が予備の軍手持っているので、良かったら貸しましょうか?」
「あら、ありがとう浅木君」
ニコニコ笑いながら木内が浅木から軍手を受け取る。
流石ミスター気遣い浅木隼人だ。
抜け目がない。
「それで萩原、他のメンバーはいつ来るんだ?」
「ん、そのうち来るさ、あの人たちはいつも遅れてくるんだ」
他のメンバー。
会長と副会長の事だ。
彼と彼女は委員会なども掛け持ちしているので結構忙しい、高三だから受験関係の何かもあるのかもしれない。
「なあなあ、その二人ってどんな人たちなんだ? 木内曰くずいぶん面白い人たちらしいじゃないか?」
キラキラした目で藤堂が問いかける。
反対に私は冷めた目で木内をみた。
「余計な事を吹き込むなよ」
木内は返事の代わりにウインクしてきた。
……、いや、ウインクされても私は女だからときめかないぞ?
浅木はなんか顔が赤くなっているが。
「そうだな、会えばわかると思うが、なにがあっても冷静でいた方が良いぞ?」
「?」
私の言葉の意味が解らなかったのか藤堂は眉をひそめる。
私はそれ以上言葉を紡がず、のんびり麦茶を飲んで、会室のドアがノックされるのを待った。

Re: 萩原さんは今日も不機嫌 ( No.12 )
日時: 2011/09/03 00:41
名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
参照: http://blog.goo.ne.jp/roki000

『第二話 萩原さんのお仕事』2‐2


「ああああああ、暑い暑い暑い! むしろ熱い!! おいおいおい、なんなんだよこの暑さは! 今10月だってのによ! 地球温暖化の馬鹿野郎!!」
随分と乱暴な口調に成りながら、藤堂は雑草をやったらめったら引き千切っている、どうしようもなく苛立っているようだ。
そんな状態を見兼ねて私は藤堂に声をかける。
「五月蠅いぞ藤堂。この位【エコ会】では楽な方だ。おまえは私たちの『仕事』がどんなだと思ってたんだ?」
その言葉に藤堂は淀んだ瞳を私に向けながらぶつぶつと返答した。
「【エコ会】って名が付いてんだからきっと公園でボランティア活動とかすると思ってたんだよ!」
「それなら予想通りじゃないか?」
今私たちエコ会員は公園に来てボランティア活動に励んでいる、藤堂の予想通りだと思うのだが……?
「あのなぁ、俺の考えるボランティアってのは公園のごみ拾ったり、分別の出来てないゴミ箱を分けたりするようなもんなんだよ!」
段々ボルテージが上がってきたのか、藤堂の顔が私に近づいてくる、あと一センチでも近づいてみろ、私の拳がお前の顔面にめり込むぞ?
そんな私の思考を知ってか知らずか藤堂はここ一番の大声で叫ぶ。
「なのになんだ今俺たちがやっている『仕事』は! ゴミ袋持って! 軍手嵌めて! 三角巾して! 汗をだらだら垂らしながら公園中の雑草を刈り取ってんだぞ!!」
「十分ボランティアだろ?」
私の冷めた声にがっくりとうなだれながら、藤堂は先ほどの叫びで余力を使いきってしまったのか小声で喋ってくる。
「明らかにボランティアの範囲を超えてるぞ、よしんばボランティアだとしても明らかに六人でする仕事量じゃねえよ……」
ため息を付きながら藤堂は蚊の泣くような声で言う。
もう慣れてしまった私にはわからない感情だ、そう慣れてしまった私には、これよりも遥かにだるい、いや辛い【仕事】というより【事件】に関わってきたからな。
それは、あまり語りたくない事でもあるわけだが……。
「だが、一番疲れる原因はあの人かもしれないな……」
そう言いながら藤堂は今雑草を排除していた花壇から後ろに目を向ける。隣にいた私も後ろを振り向いてみた。
そこにいたのは。

「ほらぁ、なぁ〜にへばってんのさ浅木後輩!! 血反吐吐くまで休むじゃないわよ! 敢えて吐いても休んじゃ駄目よ!」
「ヒィ! そんな無茶な!」
「ちょ、辞めろこのアホ! 隼人君が可哀そうだろうが! つーか、おまえみてえな頑丈な人間なんざめったにいなんだよ!? 琳奈ちゃんや奏君の方が珍しいんだから! ほら、希ちゃんも疲れちゃってベンチで休んでんじゃないか!」
「な! 木内後輩! あんたも何休んでるんじゃあ! ちゃきちゃき働けこの野郎!!」
なんて事を笑顔で言っている女性とそれを必死で止めている疲れた顔をした男性だ。
「確かにあれは強烈かもな……」
「だろ? 俺会室で初めて会った時はビックリしたよ、世の中にはあんな人が居るんだな……」
藤堂のそんな言葉を聞き、私の記憶は副会長と会長に藤堂が初めて会ったときにまで遡って行った———


———コンコン
ノックの音がドアから聞こえる、浅木がいそいそとドアを開けようとした時。
バァン!!
という音が会室に響く、そしてそのあけ開かれたドアから一人の女がズカズカとはいって来ていきなり叫ぶ。
「ヤッホォオオオッ!! みんな元気ィ!? 私は元気だこんちきしょう!! さあ、我が同好会に入りたいと言っている勇気ある男はどこにいるんだい!?」
ニッコニコした笑顔でそんな事を言った女性は見慣れない顔である藤堂に目を付けたようだ。
「おおう! 君かい!? 名前はなんていうの?」
「と、藤堂奏です」
「良い名前だ! 海と大地の恵みを感じさせるね! さあ、君がこの同好会に入る事は最早決まり切ったことで一々確認をとる必要はないね?」
大地の恵みは置いといて、藤堂が【エコ会】に入るのが決まり切った事になっているのは恐らくこの女性、清水 恵美(しみず めぐみ)にとってだけだろう。
その清水先輩、【エコ会】の副会長というポストに就いている女性は短い髪を整った顔の前で揺らしながら嬉しそうに言葉を紡ぐ。
「さてさて、では学校と云う呪縛から解き放たれた幸運にして不幸な少年少女たちよ! いざ行かん我々の使命を全うすべき場所へ!」
突っ込みどころが多すぎてどこから言えば良いのか解らない、とりあえず学校を呪縛というのは貧民層の人間にかなり失礼だ。
私が副会長に対処できずにいると救い主が、開け放たれたドアから駆け込んできた。
「おいこらアホ女! 俺が行くまで待ってろって言ったでしょうが! って、コラ! お前変な事言ったな! 新人君あっけにとられて呆けちゃってるじゃないか!!」
入ってきた救い主は、疲れた顔をしている男性で。
なんと言うか、不細工ではない整った顔をしているのだが、如何せん顔に疲労が現れているのが少々痛々しい。
この人が我が【エコ会】の会長風宮 来夏(かぜみや らいか)だ。
そして、私が恩を感じている人間の一人でもある。
そんな風宮先輩—会長が藤堂に迫っている副会長を必死で羽交い絞めにしている、いつもは浅木や木内が被害に会っているのだが、今日は藤堂という副会長にとって旨味のある人間が居るので安心しきっているようだ。
木内は副会長に負けず劣らずの表情で藤堂にニッコリと笑いかけている、私にはそれが『ほら、私の言った通り面白い人たちでしょ?』という表情のように見えた。
残念な事なのだが木内、その面白い人たちを見て藤堂はかなり引いているようなのだが……。まあ、あいつがこれ位で【エコ会】に入るのをやめてくれるのなら、私もありがたい事ではあるのだがな。
私はそんな風に考えながら浅木が私の麦茶が入っていたコップが空になったのを何時気づくのか時間を計って、副会長が落ち着くのを待ってみることにした……。

Re: 萩原さんは今日も不機嫌 ( No.13 )
日時: 2011/09/03 00:43
名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
参照: http://blog.goo.ne.jp/roki000

『第二話 萩原さんのお仕事』2‐3

「つまり、君は萩原後輩の事が知りたいが為に、この同好会に入りたいってわけね?」
「まあ、端的に言えばそうなりますね」
ようやく落ち着いてきた副会長は、いつもの定位置である一番端にいる私の隣に座って藤堂に質問する。
ちなみに会長はその向かい側だ。こうやって座ると六人で円を作って座っている事になる。
「そうか〜、君はそんなに藤堂後輩の事を愛しちゃってるんだね!」
「はい! もう結婚を視野に入れるところまで愛しています!」
……。
イラッ!
「……、でも萩原後輩の君に対する印象は悪いみたいだけど?」
「それは照れってやつですよ!」
「なるほど〜〜」
こいつは本気でそんな事思ってんのか?
人が人を好きになるのには順番ってものがあるんだ、今のところ藤堂はその順番を、自らの行動に照らし合わせていない気がするんだが。
私は何だが盛り上がっている二人を無視して、会長の方に言葉を向けた。
「会長」
「ん? なんだい琳奈ちゃん」
「今日の『仕事』の内容をまだ聞いてないんですが」
「ああ、そうだったね」
ごめんごめん、と言いながら会長は少し疲れた笑顔をこちらに向けた。
この笑顔はこの人独特のものだ。誰かさんの所為でいつも苦労してるからな。
ご愁傷さまだ。
「ええ〜と、今回は公園での仕事だね」
「また公園ですか?最近多くありません?」
前回の仕事も公園だった、あの時は公園の遊具に書いてあるいたずら書きをふき取る仕事だったな。
「そうだね。あそこは最近治安が悪いから。でも、今回は治安と関係ないよ? だから、安心して?」
「そうですか……」
それなら草刈りとかだろう、雑草ってのは成長スピードが無駄に速いからな。
「それで僕からも君に質問したいんだけど、いいかな?」
なんだろう、会長が私に質問なんて珍しい。
私は空になったコップに何時まで経っても気づかない、浅木に催促しようと思ったのだが。
浅木は木内と共に仲よさそうに。
「猫って可愛いよねぇ〜、特に仰向けに倒れてゴロンとしてるとことか〜」
「ああ〜、確かにあれは可愛いですよねぇ〜」
とか笑顔で会話しているので、仕方なく自分でテーブルの中央にある麦茶のポットを引き寄せて、セルフサービスでコップにいれた。
「それで何でしょうか会長」
私はいれた麦茶を口に含みながら尋ねた。
「いやね、聞きにくい事なんだけどさ、君って……」
そこで言葉を区切って、言いにくそうに次の言葉を紡ぐ。

「奏君と付き合ってるの?」

ブッゴハァッ!!
母さんゴメンナサイ、私女なのに口から麦茶吹き出してしまいました。
「な、何を言っているんですか会長! んなわけ無いでしょうが!」
私は少しひきつった無表情で会長に叫ぶ。
「ご、ごめん。でも琳奈ちゃん奏君をみる目が、ちょっといつもと違う目だったから……」
それは不快感を表す目です!
とは、私は言えなかった。何故なら。
「ニヤニヤ」
何を誤解したのか、副会長が私を見ながら自分で『ニヤニヤ』とか言いながらこっちを見ていたからだ。
ちなみに藤堂は疲れたのかぐったりしている、副会長の相手は初対面だと疲れるからな、はじめは話が合っていたみたいだが。
それはそうと、ちょっと大声で叫びすぎたか?だが、会長と私の席は離れているので、彼と話すと自動的に彼女にも伝わってしまうのだ。
といううか、期待を裏切るようで悪いですが、私の考えは今副会長の考えているのとは全く違いますよ。
「じゃ、じゃあそろそろ『仕事』に行きますか!」
浅木がひきつった笑顔で言う。それはフォローのつもりか? 随分とむなしい感じになっているが。
「そうね、もう行きましょうか」
木内もそれに乗っかる。おまえらの方がよっぽどお似合いだ。
「解ったわ、では藤堂後輩の初めての萩原後輩との共同作業に行きましょう!」
そう言いながら、会室のドア開け放つ。
どうでもいいが——いや全然良くないが、言い回しがとてつもなく嫌だった……。

Re: 萩原さんは今日も不機嫌 ( No.14 )
日時: 2011/09/03 00:45
名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
参照: http://blog.goo.ne.jp/roki000

『第二話 萩原さんのお仕事』2‐4

「おい、萩原聞いてんのか?」
「ん、ああ…、なんだ?」
どうやら少し記憶を遡っていて、ボーっとしてたようだ。藤堂の言葉で私は『今』を取り戻す。
あの後会室を出て副会長に藤堂との仲を囃したてられながら、イライラしながら公園にやってきたんだった。
後は現状の通り。雑草を黙々と抜き取る作業を、草刈り機よろしくやっていたのだった。
「何か私に伝えたい伝達事項でもあるのか? もし事務的ではなく、私情の挟んだ言葉だったら私は無視するかもしれんぞ?」
その言葉を聞いて、藤堂は少しひきつった顔をしたがすぐに元に戻り、口を開いた。
「いやさ、もう一時間ほど作業を続けてるわけだが、一体いつになったら終わるんだ?」
そんな言葉をため息をつきながら発する藤堂に、私は雑草を一束掴んで抜きながら答える。
「知らん」
そんな味もそっけもない言葉を聞いて、藤堂は電池が切れたおもちゃみたいに崩れ落ちた。
「おい、サボるなよ」
「無理だ、もう俺は疲れた。少しぐらい休憩しても良いだろう! なんか飲みたい! 割と切実に!!」
そんな子供みたいな事を言う藤堂。
確かに適度な休憩は作業の効率を上げることにもなる。正直私も少々疲れた。
「じゃあ、あっちのベンチで休むか?」
「へ?」
私の提案に藤堂は意外そうな声を出す。
「…なんだその顔は」
「いや、てっきり『馬鹿野郎、ぶっ倒れても作業は続けろ! 男だろ!!』とか言われるものと思って……」
何だそれは?そんな暑苦しい事は言う様なキャラに私は見えるのだろうか? それにどちらかというと、それは副会長のキャラだ。
「それじゃあお前は、その言葉を勝手に自分の妄想の中で信じて、そこで作業を続けてろ、私は休ませてもらう」
「ちょ、待てって。俺も限界だから! お〜い! 本格的に置いてくなって!!」
大股に歩き去ろうとした私を藤堂が必死で追いかけてくる。


公園の端にあるベンチには、上に日陰を作るためにモニュメントが作ってあり、一時的な避暑地となっていた。
そんな、今の私たちにはオアシス的な所について、ステンレス製の安上がりなベンチに腰かけたとき、藤堂が明らかに不満そうな顔をした。
なんでそんな顔ををしたかというと。
「御苦労さま! さあさあ、麦茶でも飲みなさい、後輩たちよ!」
副会長が堂々と私たちの向かいの側に設置されたベンチに座って、涼んでいたからだ。
「なんで清水さんが先に休んでんすか! さっき浅木や木内にあんだけ労働を強いてたでしょうが!!」
「細かい事気にしてると、脳の血管ぶちっ!って行っちゃうよ? ぶちって」
けらけらと明るく笑いながら、副会長は藤堂の不満を受け流す。
「浅木、私にも麦茶くれ」
「あ、はい!」
「おい! 萩原は文句言わないのか!?」
私は浅木からお茶を受け取りながら、藤堂に返答する。
「叫ぶなよ暑苦しい。ところで木内、会長はどこ行った?」
適当に藤堂に答えてから、周りを見渡して疑問の声を上げる。
どうやら私と藤堂が草をむしっている間、他の会員は皆お休みタイムに入っていたようだ。だが、会長だけは姿が見えない。
「ん〜、なんかさっき『少し用事があるから頑張って作業続けてて』とか言って行っちゃったわ」
ニコニコと笑いながら木内が答える。
なるほど、それで皆一時的に休憩しだしたのか。
会長が『作業続けてて』というときは副会長には『ちょっと休んでて』と変換される。
どういう脳内回路してるんだ?
まあ、それに乗っかってる私たちも私たちなんだが……。
「じゃあ、仕事しろよ!」
さっきまで休みたいとか言っていたくせに、自分の事を棚に上げて藤堂が突っ込む。
だが、一人として——木内と浅木でさえも苦笑交じりに——反応する者はいない。
少し可愛そうなので皆の代わりに私が言ってやる。
「とりあえず怒りを納めて、麦茶飲めば?」
「……、うん」
藤堂はこれ以上言っても無駄と感じたのか、妙にしおらしく言って目の前に置かれた麦茶を飲んだ。


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