コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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勇者は可愛らしい女の子【主人公の武器の名前決定】
日時: 2011/07/27 13:28
名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)

三作目だったりもします・・・だいこん大魔法です^^;
前回の作品はなかなか更新が進まないのですが、この作品は一作目の奴と同時にあげていきたいと思っていますので・・・まぁそのへんはきにしないでください^^;
更新速度は亀なみですが、楽しんでいただけたらうれしいです^^;あ、もちろん荒しは反対よ?荒しで楽しみたいっていうんなら別のところでおねがいね?

まぁ今回の作品は・・・シリアスがけっこうまじるファンタジー(といってもなんだかんだでギャグもいれるけど^^;)になると思いますが、気に食わなかったらごめんなさい^^;
そして最近どうもネタがおもいつかなくて更新がぜんぜんできない状況になってしまっているのですが、まぁ気にしないでくださいませwww(おいw


登場人物紹介

とりあえず主人公のみ紹介

神凪 黎(カンナギ レイ)  十八歳、男

身長百七十五 体重五十九

対魔王特殊部隊、極東支部所属、階級 大尉、使用武器 爆砕剣【ブラッドレイジ】

勇者の存在を信じないひねくれ者の主人公。実力のほどは相当なもので、黎の戦いぶりを見た違う支部の人々が、彼のことを勇者ではないかと思ってしまうぐらい、強い。最高実績として、大型、大尉レベルの【キメラ】である【キマイラ】の百体以上もいる群れを単独で三回殲滅したのがそれだ。

サンボイ
「さあようこそ・・・この腐りきった世界へ」

「世界が絶望しきったあとにでてくる勇者なんて・・・偽りの正義だ」

「俺が勇者なら・・・出来損ないの勇者だな」


自作絵>>9

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Re: 勇者は可愛らしい女の子【自作絵】 ( No.10 )
日時: 2011/03/25 13:17
名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)

やがて廊下のつきあたり、俺はそこを右に曲がり、また続く長い廊下を歩いていく。そこには、左右に計算されてできたドアの列はない。
さきほどの廊下までは、居住区、つまり、対魔王特殊部隊関係者居住区だ。それは、対魔王特殊部隊に入っている子供の親であったり、祖父母であったりとかず多くの人物がそこに住んでいる。対魔王特殊部隊宿舎は、そういった関係の人々も中にいれているため、外部からの【キメラ】の侵入対策はものすごい。たしか、対魔王特殊部隊の維持費の半分をそっちにおくっているとかなんとかっていう話だったようなきがする。
誰もが寝静まるこの時間。俺は一人廊下を歩いていく。この先に待っているのはひとつの巨大な扉で、そこが支部長室であることは明白だった。・・・俺が、対魔王特殊部隊に入ったときもここに呼ばれているし、何度も報酬をもらいにいっているから、そんなのはわかりきっていることだ。だけど、すぐになにか物を忘れてしまう俺にとって、再確認というのは重要だからな。

「・・・やっぱでけぇよなぁ。ここ」

俺は、眼前に迫る、巨大なドア、大きさはだいたい二十メートル前後か。なんでこんなでかくしたかなんてしらないが、まぁいい。

『ピピ———だれだ?』

そのドアの前にある、センサーらしきものが俺の姿をとらえる。それはたしか、支部長室のモニターにリンクしていて、支部長が起きている限り起動するしくみだったな。・・・やっぱ支部長さんはおきていらっしゃったか、多忙だねぇ。・・・知り合いとしては、あまり無理をしないでほしいという願いもあるのだが、それは無理な願いってもんだ。支部長はいろいろなものを管理しなくちゃいけないしな。

「あー・・・神凪だ」

普通、ここではコードネームといわれている個人識別用の名前と、その人の階級を言わなければならないのが、俺はそれをしない。実際それをしなかったやつはすごい目にあってしまうのだが———

『お兄様!?』

と、機械ごしの素っ頓狂な声を支部長が上げる。それに俺は苦笑いをして、

「ちょいと報酬の取り忘れだ。あけてくれ」

そう気軽に話す。さっきもいったように、支部長と俺は知り合いだ。だから、二人のときなら気兼ねなく話すことができる。まぁ人前では当然のように上下関係というものを示していなければならないのでそんな気軽に話すことはできないが、だいたいいつもはこんな感じだ。

『わかりました、どうぞ入ってください』

その声とともに、ガシャンッという大きな音が扉のほうから鳴る。それによって、扉の上からいつものように見張っているセンサーの光が消えて、扉が重い音を立てながら横にズレていく。この扉は真ん中から割れているような扉でもなく片方のとってから開けるような扉でもない。横に開閉するしくみの、支部長の趣味でつくられた扉だ。まぁいっている意味はよくわかんないとは思うけど、すぐにわかるさ。外構えはどっかの神話にでてくる門みたいな感じだっていうのに中が・・・ね?

「んじゃ、おじゃまするぞ」

と俺は一人つぶやいて、けっこうな勢いで横にずれていくドアを無視してそのまま入ってしまう。完全にあききっていない状況でもしも一般の対魔王特殊部隊のやつらがはいったら即刻処罰をうける対象となるのだが、やはり俺にはそういうものはない。知り合いだからって甘やかしすぎじゃないか?とも思うが・・・まぁ、それは俺もいえたことじゃないので今はおいておくとしよう。

「お兄様・・・夜這いならいつもいつも裏から入れといっているじゃないですか———」

「・・・お前さ、俺の目的聞いてなかったの?」

俺が支部長室にはいったのを確認するやいなや、幼くて、その声を聞いているだけでも守りたくなってくるような愛らしい声が、俺の耳にとどく。俺はその声の主を睨みながらもそう言い返すと、その声の主は若干可愛そうだと思えるほど声を悲しみの色に染めて

「だって・・・お兄様ったらいっつも私のことを蔑ろにして・・・」

その本人は、えらく背もたれが大きい椅子に座っているらしい。だが、背もたれがこっちにむいているためその姿を確認することはできない。第一、あまり人前に姿をさらすことが好きな奴ではない。こんなふうに、一般の対魔王特殊部隊のやつらと接するときはだいたい背もたれをこちら側にむけて、姿を隠してしまっている。

「まぁそんなことはどうでも———」

「どうでもよくないです!!私がどれだけお兄様のためにがんばったとおもっているんですか!?」

Re: 勇者は可愛らしい女の子【自作絵】 ( No.11 )
日時: 2011/03/25 13:20
名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)

「いやしらねぇし・・・」

そもそも支部長として一人の隊員を特別扱いするのはよくないと思うんだけどな・・・と思っていると、その声の主は思い切り椅子を回転させてこちら側をむき、とんでもないことをはきすてる。

「まったく・・・私がどれだけお兄様の部屋のロックを解析するのに時間をかけたと思っているんですか」

「・・・おいおい、人に夜這いとかいってるけどお前が夜這いしようとしてんじゃねぇかよ」

「しようとなんてしていません!!もう実行に移してます!!」

「いやそっちのほうがだめだろうが」

俺は完全にあきれて、その声の主のことを見据える。椅子に座っていて、豪奢な机が前にあるので、その姿全体を表すことは出来ないが、できるかぎりのことはいっておこう。こいつは・・・俺よりも年下だ。
こいつとの出会いはまぁ今説明するのもめんどくさいのでとりあえず容姿だけでもいっておきたいと思う。性別は知っての通りだと思うが、女だ。髪型は俺が見る限り、一度もツインテールから変わったことは無い。髪の色はピンクブロンドとでもいうのだろうか、とにかく見ているだけで目が潤されていくようななんというか・・・とりあえず見ていて飽きない色だ。目は大きくでクリクリで小動物を思わせるような感じで、眉は細くて、その目とのバランスが絶妙な感じになっている。小さな鼻は可愛らしく、桜色の小さい唇もそれまた可愛らしい。
顔は小さくてものすごく整っている・・・がしかし、その外見はものすごく幼くて、見た感じだと十一歳とかそんくらいに見えてしまう。
まぁ本人の年齢は十四歳なのだが。
よくこんなやつが支部長になれたなと思う。第一、ほかの支部の支部長はだいたいいかつい顔のおっさんばっかりだというのに、ここだけ異例なのだ。でもまぁこいつの優秀さ、実績、などを毎日飽きずに聞かされていた俺は、こいつがどれだけすごくてどれだけ優秀でどれだけ人望があるのかを知っているから、こいつが支部長になっていることを全否定できるわけではない。

「それとお兄様、私のことはレミアと呼んでくださいっていいましたよね?お前・・・なんてひどいですよ?」

「あーわかったよ、レミア」

レミア・K・エクリエ、レミア・クロイツ・エクリエ。それがここの支部長の名前だ。名前としては十分な威圧感をほこるその名前も顔負けしてしまっている。・・・ってああもう、そんなことはどうでもいい。とっとと報酬をもらわねぇと

「なぁレミア、無駄話はここまででいいからとっとと報酬をくれって」

「え・・・ほ、報酬?そ、それって私の体をお兄様に・・・」

「んなわけあるかボケ」

「む〜、わかってますよぅ。後でお部屋にまとめて送信しますから今は私とつかの間の雑談でも楽しんでくださいよぅ」

部屋にまとめて送信か・・・。それもまぁいい。自分で持ち帰るのよりは幾分か楽だし、こいつともなかなかできない会話ってのをできそうだからな。
まぁ、二人きりで会話したいのは俺のほうも同じなのだ。同じ思想の持ち主として、こいつとはいろいろと話ておきたいことがいろいろあるのだ。たとえば———

「ところでお兄様、昨日は何をお倒しになったんですか?」

あー・・・昨日報告さえもしていないから何を倒したかも伝えてなかったんだっけ?いちいちめんどくさいことだが、伝えないといけないのは当然のこと。伝えなかったら報酬の内容がなかったことになったり、報酬の無いようが格下げされたりもするからな。
「ま、知っての通り退治以来がだされていた———【キマイラ】だ」

「っ!!流石お兄様です!!」

レミアが俺の倒した敵の名前をきいて、その小さな手で拍手をおくってくれる。それに俺は気恥ずかしくなり、頭の後ろをボリボリとかく。
「やっぱり私の見立ては間違いありませんでしたね。たった一ヶ月で【キマイラ】討伐回数が五百二十体もいくなんて・・・」

Re: 勇者は可愛らしい女の子【自作絵】 ( No.12 )
日時: 2011/04/26 23:02
名前: だいこん大魔法 (ID: OkVLMN/u)

その言葉を聞いて俺は・・・ああ、そういえばそうだったなと、思い出す。俺がこの一ヶ月、どれだけ戦場に借り出され、どれだけ武器をふるい、どれだけ返り血を浴び、自ら血を流したということを、思い出す。そのたびに俺は、毎回勇者のことを考え、毎回勇者のことを罵った。世界はこんなにも荒れている。世界はこんなにも絶望に染まっている。世界はこんなにも・・・壊れているのだというのに、どうしてお前はこないんだよと罵る。そのたびに俺は【キマイラ】を倒したことを忘れる。まぁそんな俺に【キマイラ】を倒したんだということを思い出させてくれるのが藤夜なんだが・・・まぁそんな話はどうでもいい。
時には【キマイラ】十体以上をあいてにした事だってあるし、ほかの【キメラ】と同様に現れた【キマライ】を、そのほかの【キメラ】もろとも殲滅したことだってある。ゆえに俺は自分の素性を明かすことはなかった。誰に聞かれようが自分の階級を伝えることなく、誰に言われようが自分の考えを改めなかった。普通、大尉レベルのやつがいたとしても、その実力は全長五十メートル以下の【キメラ】と一対一、つまりタイマンができるっていうだけなのだ。なのに俺は・・・そんな理を無視して、常識を無視している。
・・・そんなこんなの説明で分かるとおりだが、俺がこの極東支部唯一の大尉レベルの、対魔王特殊部隊だ。だが、それはレミアと藤夜以外に、三人ぐらいにしか話ていないという事実だ。そのためか、曹長以下の対魔王特殊部隊には、この極東支部の大尉はもうとっくに死んでいる・・・とまで言われているほどだった。
それでも所詮・・・五十メートル以下、二十メートル以上の【キメラ】を単独で多数相手にできるからって、世界を救うことは出来ない。
どこからか現れる【キメラ】の生態系を知らない人類の内の一人で必死に戦ったところで、世界は変わらない。ただただ破壊の道を進んでいくだけ。どれだけ化物のような力をもっていようとも・・・世界のために役にたたなければ・・・ただの化物だと、忌み嫌われるだけだ。

「本当にお兄様は・・・すごいです」

・・・そんな話はもう、どうでもいい。ただの俺の戯言だと思って受け流しておいてくれ。所詮俺はただの大尉だ。どこの支部にでもいる大尉となんら変わらないちょっと強いだけの男だ。だからレミアに褒められるとか、支部長に特別待遇してもらったりとか、される身分の人間ではないのだ。

「・・・ところでレミア」

「はい?」

「各支部からの報告に勇者と関連する内容の資料はあったか?」

話を戻そう。俺とレミアは、ある一つの考えが重なっている。そのためか、昔から何かと仲がいいのだ。年が少しはなれているけど、それは兄妹みたいな感じだからとくに気になりはしない。んで、そのひとつの考えって言うのが・・・勇者。

「いえ、ありませんでした。本部、支部とともに全力を注いでいる勇者捜索の資料にそれらしいものはありませんでした。ですが・・・一つあげるとしたら———」

「・・・なんだ?」

「・・・いえ、これはお兄様に言っていいことなのかどうか———」

俺が言った勇者に関連する資料と聞いて取り出した資料をパラパラとめくっていたレミアが、一つだけ目印をつけていてページを開く。その内容はどうやら勇者となにかしらかかわっているらしいのだが、どうして俺に言っていいか言ってよくないかとかが関係するんだ?

「・・・いえ、ですがこのような勇者資料の中にいつも入っていますし・・・今隠していてもいずれバレることでしょう」

そうレミアが独り言を呟く。その言葉に俺はますますわけがわからなくなったが、眠気が急に襲い掛かってきたのでその疑問はどこかに飛んで言ってしまう。あー、もういいからいいから、と俺は適当にレミアに言って、その続きを言うように促す。
レミアはまだなにか納得いかないような感じの顔でうーんうーんとうなっていたが、どうせいわなければならないことだろうとたかをくくったのか、俺を机の前のあたりまで呼んで、資料を渡しながらいう。
そして俺は驚愕する。その資料に書かれている内容を見て、驚愕に目を見開く。眠気はどこへやら・・・俺が大尉になってから約一年、その中でこんな噂と目撃例が挙がっているなんて・・・思っても見なかったから。

「・・・極東支部に訪れた人の目撃例、およびその目撃例を基にして作られた噂話では・・・黒髪の中に鈍い赤色の髪の毛が混じる、見た感じ爆砕剣を使う青年が、勇者なのだと・・・つまり、お兄様が勇者なのではという・・・話があがっています」

ばかげた目撃、噂話だとつくづく俺は思う。俺が勇者?そんなわけない。俺がいくら【キメラ】を倒したところで世界は救われない。誰も救われない。その後に必ず代わりとなる【キメラ】が生まれてくるだけ。だから俺は誰にも求められる勇者なんかという存在ではない。俺が武器を振るって出るものはただの血だけ。血なまぐさい連鎖を延々と繰り返すだけ。そんな勇者は、誰にも求められていない。第一・・・俺は、勇者という存在が、嫌いだ。人々の希望を集めながらも、まるで現れようとしない、暴虐な勇者なんか、嫌いだ。
だから俺は、その資料をマホガニーの机に投げ捨て、鼻で笑い、唇を自虐的にゆがめて・・・

「・・・たとえ俺が勇者なら、それはただの、出来損ないの勇者だな」

そういって俺は・・・支部長室を後にする。そのときに・・・レミアが、かつて同じ孤児院で育ち、俺のことを今でも兄と慕ってくれているレミアが・・・かすかな声で、こう呟いていた。

「・・・お兄様の刃で、救われた人も———いるんですよ」

俺は・・・その言葉をうけとらず、すぐさま頭の中から追い出して・・・暗い廊下にでるのだった。

Re: 勇者は可愛らしい女の子【自作絵】 ( No.13 )
日時: 2011/04/20 21:24
名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)

ま、そんなこんなで一日が明けるわけだ。
俺はあの後、支部長室から退散して部屋に戻り、すぐに寝た。眠気がさらに強くなったためってのもあるが、あの内容・・・俺が勇者なのではないかという資料の内容を早く忘れたくて、寝た。だけどもそれはかなわなかった。寝たはいいが、その内容は俺の夢の中にまでもでてきて、全然眠ることができずに、俺はだいたい一時間程度で目が覚めてしまった。当然のごとくその内容を忘れるまではいたらず、むしろ逆に、頭の中に焼きついて離れようとはしなかった。
俺はまだ眠りたいという意思を押しのけて、布団からでる。布団はめんどくさいから畳むことなくそのまま放置して、俺は一時間のうちにレミアがおくってきてくれた報酬の内容を確かめに入る。四角いダンボールの箱をあけて、中を確認してみると、その中には俺が前々からほしいとレミアに頼み込んでいた武器の強化素材である、神鉄といわれている素材が入っていた。神鉄というのは極東支部周りではよく見られる大尉レベルの【キメラ】である、【ダマスク・レイヤ】からごくたまにとれる素材であり、俺が持ち帰ってもそれを俺に回してくれるわけでもなく、毎回別の支部に回されていたから俺はだいぶもどかしく感じていたところだった。だが、ようやく俺に回ってきたということは、レミアがほかの支部にはもう必要ないと判断したからだろう。ということはつまり・・・俺と同じぐらいの実力を武器で補強したやつが増えたっていうことだよな?よしよし、いい傾向だ。これで俺が勇者ではないということが全世界に広まるだろう。勇者と噂されていた人物の実力は武器で補強できる程度のものだったとかそんな感じに噂してくれ。
あー・・・言い忘れていたが、武器にはその人、持ち主の能力を上げる能力が備わっている。たとえば片手剣なら【キメラ】に与える物理的なダメージを大きくするためにその人の腕力と俊敏性を上げる力が備わっていて、細剣ならば【キメラ】を圧倒する素早さを獲得するためにその人の俊敏性を極限まで挙げる力が備わっている。両・片手剣の場合は片手剣よりも強い腕力強化と片手剣よりも少し弱い俊敏性の強化がある。大剣の場合は片手剣を圧倒するほどの腕力強化がされ、・・・俺の扱う爆砕剣の場合は、そのすべての能力を極限まで高める力がある。そんでもって、その強化能力というものをさらに高める力をもつのが、素材だ。
素材というのはそこらへんに落ちている鉄の欠片から始まり、最終的には【キメラ】の体パーツに使われている素材まで幅広くある。だがそのレアリティーにより能力のアップからダウンまで変化する。たとえば一番レアリティーの低い鉄の欠片とかならば、その人の腕力は高まるけども俊敏性が低くなる。次に、今発見されているなかでもっともレアリティーの高い素材である神鉄の場合だと、すべての能力の上限を更に高めるという能力と、さらに自己再生能力まで備わるという。
こういったレア素材はかならず大尉レベル、少尉レベルの人に渡される。それはやはり、敵を倒す効率などを考え、武器の扱い、戦闘に長けている人の渡すのが一番いいと考えているからだろう。だがそれにもやはり順番というものがある。自慢ではないが、俺は幾度も【ダマスク・レイヤ】を狩っている。それによって何度も神鉄を入手して、レミアに渡したりしている。そのことから、今の俺にはこの素材は必要ないと判断され、まだ【ダマスク・レイヤ】を倒せない大尉に渡される。その全部に行き渡ってからようやく俺のほうに回ってくる、つまり、大尉の全員が全員、負傷をおっても【ダマスク・レイヤ】を倒せるようになってから、今までそいつを軽々と狩っていたやつらにその素材が回されるということだ。
・・・ま、今はもう俺に回ってきたわけだし、そういった細々とした内容はほうっておくとしようか。
さてさて・・・これを貰ったのはいいけど、今すぐ武器にこれをつけてもらうとなると、それなりの時間を有してしまう。一週間後には一応、支部長さま・・・レミアと一緒に過ごすための休暇とかいうやつを頂いているので、まぁそのときに藤夜あたりに頼んで強化をしてもらうとしようか。
俺はそれをその箱にもどし、そのまま放置することにした。だいたいは神鉄、そのほかは報酬金だし、いま金に困っているというわけでも無いので。個人証明をしないとあけることの出来ないこの報酬ボックスにいれておくほうがなによりも安全だ。そう頭の中で思いながら俺はその箱を部屋の隅っこに移動させて・・・ソファの上においてある、かつては携帯電話といわれていた機械とほぼ同型の黒メッキでできた電子機器、アナグライザー4000を手にとる。
アナグライザー4000は、依頼、つまり一般人からの【キメラ】討伐依頼から、支部長直々に依頼を発注したときに確認したりできる機械だ。
そのほかには仲間に連絡を取ったりもすることができるが、ほとんどが依頼の受注目的に使用されることが多い衣。ま・・・それはそうだろう。この時代、このご時世で、誰かと仲良くなったり、誰かと戯れたり、誰かと遊んだりするなんて———できっこないし、そんなものは不要だと思っている人が、多いからな。
俺はアナグライザーを起動して、依頼受注画面までもっていく。すると、そこにはレベル1〜10、つまり一メートル弱の【キメラ】から四十
メートル強ぐらいの【キメラ】の討伐依頼がずらりと並ぶ。俺はそれの下のほう、つまりレベル8〜10あたりの【キメラ】の依頼内容を見てみる。その中のほとんどが【キマイラ】の討伐依頼で、そのほかにはポツポツと【ダマスク・レイヤ】の討伐依頼がかけられている。
・・・どうやら、支部長からの依頼はないようで、俺は適当に依頼の内容を見ていく。そのほとんどが『怖いから』とか、『こいつら家族を殺されたから』とか、そんなんばっかりだ。それに俺は・・・
「いつもとかわんねぇなぁ・・・」とつぶやきながら、もっと細かく依頼の内容を見ていく。

Re: 勇者は可愛らしい女の子【自作絵】 ( No.14 )
日時: 2011/04/26 22:21
名前: だいこん大魔法 (ID: OkVLMN/u)

依頼の数は多すぎて、全部読んでいるともしかしたらそれで一日が明けてしまうかもしれないのだが、それはそれでいいかもしれない。無断で仕事をさぼったりしたらそれまたレミアにこっぴどくしかられてしまうかもしれないが、まぁ・・・それだけで、血を見ずにすむのなら———
その瞬間、俺の頭の中に電撃が走る。いや、違う。電撃が走ったかのような錯覚に陥る。俺はアナグライザーを落とし、頭を抑えながらグラリ、とよろめく。俺の頭の中に思い浮かんだもの・・・雷が走ったと思った瞬間に頭の中に入ってきた映像・・・それをみて俺は、吐き気がした。気持ち悪すぎて、いや・・・違う。思い出すまいとして頭の中に封印していたはずのそれが突然頭の中にでてきて———俺は吐き気を覚えた。
・・・かつていた孤児院。俺とレミアしか生き残らなかった孤児院。・・・たった一踏みで殺されていく仲間たち———そして———それをたった一撃で殺した———血の色に染まった瞳をもつ———俺の姿。

「———っ!?」

突然よみがえった記憶に、俺はひどく狼狽する。封印してきたはずの記憶。だがしかし、絶対に忘れることの出来なかった記憶・・・それを思い出して、俺はひどい吐き気におそわれる。
自分ではない自分の姿。人間がもつ、隻眼のそれとは違う・・・本物の赤、本物の血のような色を宿したあの瞳はまるで———俺が人間ではないといわんばかりで———

「・・・そんなはずは・・・ねぇ!!」

そう言葉にしてみる。だけども———やはり、それだけは昔から捨てきれていなかったのだ。自分はただの人間なのだろうか、【キメラ】を何の苦もなく一人で殲滅してしまう俺は・・・本当にただの人間なんだろうかという思いだけは、どうしても捨てきれないのだ。
それは、俺が勇者だといいたいわけではない。レミアにもいったように、もしも俺が勇者ならば、俺はできそこないの勇者だ。勇者は圧倒的な力もっていて、それが人々を救う力になる。だけども俺は・・・そんな力があっても、自分がこの世を生き抜く為にしか———使えない、ただの自己中心的なやつだ。だけど、それが当たり前な世界だ、誰も文句はいえるまい。
だったら・・・俺は、その出来損ないの勇者でもない俺は、どうしてこんな力をもっている?昔、剣にふれたことも無い俺が、どうして大尉レベルの【キメラ】を・・・素手で殺すことができた?そして過去の俺の瞳に宿る血の色はなんだ?そして———俺のこの髪の毛にまじる赤は———本当にただの返り血なのか?
・・・思い出すことは、ではない。俺が昔、どこで生まれたか、どこで育ったか、両親は誰なのか・・・思い出すことは出来ない。俺の昔の姿も思い出すことは出来ない。写真というものが今の時代にあったのならば、一枚ぐらいは残っていたのかもしれないけれど、この世界にもうそれは存在していないために、確認しようがない。俺の幼馴染といえる存在はレミアだけだし・・・そのレミアでさえ、俺とは孤児院で出会っただけだ。だから・・・本当の俺、つまり、孤児院に入る前の俺をしるやつは・・・誰も、いない。
———頭の痛み、吐き気は自然とおさまっていた。自分を落ち着かせようとなんとか奮闘したからではない。ただ時間がたつにつれ・・・、その記憶を再び、頭の奥底にしまいこんだからだ。
・・・俺は、人間だ。他の何者でもない、人間だ。
そう、俺は自分に言い聞かせながら、まだ落ち着かない心を治める・・・そう、そうだ、俺は人間だ、ただの人間だ。———けして、人々が待ち焦がれている勇者でもないし、人々を苦しめている【キメラ】でもない、ただの一個人・・・普通の、人間だ。
次第に心は落ち着き始める。自分が普通の人間なのだと理解したからなのかどうかなんてわからないが、とりあえずは収まった。


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