コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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金曜日(ほとんど)に出る三題話!みんなで書くページ!
日時: 2011/07/03 12:52
名前: 北野(仮名) (ID: arQenQl7)

クリックありがとうございます!
ここは簡潔に言うと短編小説を募るページです

毎週金曜日(まあ、ほとんど)にお題を出してですね、そのキーワードを使って短編物を創作するってのを内輪でやってんですよ
お題はスゲー適当(パソコン・ニート・仕事とか単語で)
それをその中の一人が「カキコに投稿していこうぜ」とか意味の分からないことを言い出してこんな事になってるんですけどね

下には今までのお題とそれから出来た短編を少し載せています
「何これ?ショッボ。俺のがまだ書けるわ」
と思い、書く元気のある人は是非、一作投稿して頂ければと思います
まあ、文章が上手になったらなーと
投稿して頂いた物は私『北野(仮名)』が責任を持って、この、下の、クリックしたら飛ぶ感じのにしてまとめさせていただきます



滝、ダンボール、ビックリ箱
北野…>>1>>2

阪神タイガース、信号、おじいさん
北野…>>3>>4 バリ男…>>8 雪国…>>10>>11>>12



アイスクリーム、テスト、鏡
北野…>>5>>6>>7

エアコン、カレー、高校生活
雪国…>>9

辞書、時計、文化祭
北野…>>13>>14>>15>>16

サッカーゴール、禁固刑、効果音

ミッキー>>17

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Re: 金曜日(ほとんど)に出る三題話!みんなで書くページ! ( No.8 )
日時: 2011/06/14 18:39
名前: 磁気バリ男 (ID: R6.ghtp2)

「おーっっと!これは大きい!はいったー!吉田選手ホームラン!このホームランで今季73本目のホームラン!これで42年連続本塁打王は間違い無しだ〜!!」


わしは吉田武雄。64才じゃ。もうおじいちゃんやけどいっぱいホームラン打つよ。打率も二割八分前後をキープしとるよ。今日もホームラン打っちゃった。やっぱり野球はこれだから楽しいねえ。打つ瞬間が気持ちええ。


月日は流れ、今年の開幕戦が今日始まるぜ!!


今日はジャイアンツとの試合じゃ
あ、ちなみにわしはタイガーの4番じゃよ
すごいでしょ



「さあ、始まりました!大事な開幕戦!今年はいきなりタイガース対ジャイアンツです!」


一回表
さかもっちゃん     サードゴロ
まつもっちゃん     ライトフライ
oh!がさわら        三振


一回裏
マトン                  ヒット
ぴらの                  送りバント失敗
鳥達                     フォアボール
じいさん              レフトフライ
ブブゼラゼル              三振


わしはチャンスで凡退…
やっちった


二回表
ラミネス              センターオーバーツーベース
亀寺                    送りバント
原原                    レフトフライ     タッチアップで一点
細道                    三振


二回裏
鉄人金本             三振
ジョー島             ピッチャーゴロ
俊介の助             センター前ヒット
脳み                    ピッチャーフライ


三回表
うちみ                 ライト前ヒット
さかもっちゃん   ショートゲッツー
まつもっちゃん    ライトフライ


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


九回表
代打      だに          三振
oh!がさわら         センターフライ
ラミネス                三振


ゲームセット!



じいさん「やったー、80対1でタイガースの勝ちだ!うれしいなうれしくて何だか買い物したい気分だなぁー、そうだ!!妻に信号を買ってあげよう!前から欲しいと言っていたからなきっと喜ぶぞー」


ブブゼラゼル「ジイサンオマエオクサントラブラブヤナイカ、ウラヤマシイゾ」

ジョー島「じゃあ今日の飲み会はじいさんなしですか、残念だなぁ〜」

じいさん「すまんね!!」


鉄人金本「いいってことよ!奥さんと仲良くやれよっ」


じいさん「うん、わかった!ほんとありがとう」












Re: 金曜日(ほとんど)に出る三題話!みんなで書くページ! ( No.9 )
日時: 2011/06/17 20:26
名前: 北野(仮名) (ID: bEKYC/sm)
参照: これは雪国の作品だよ

今回は作者の友人の作品です。
その人忙しいんで代わりに俺が投稿するよ。
二作品連続で行くからねー。




「暑い熱いッ!!!!」

いつも昼になるとウチの店に食いに来る顔見知りの客が、できたてのカレーを頬張ってわめいている。

「いやー、そらこんな夏の真っ只中に辛さ最大のカレー冷ましもせずに食うと熱(暑)いだろ」

俺は皿を洗いながら言った。

ここはとあるさびれた商店街の路地にある
「本格!インドカレー」
という店だ。

どうも胡散臭い名前だが、この店を開いた親父のカレーはインド仕込みなのだから看板に偽りはない。

俺は違うけどな。


俺も今年で三十路になるが、このカレー屋はやっていて全く飽きない。

収入は少ないが、贔屓にしてもらっている客が何人かいるおかげでなんとか生きることができている。

「あんた、この店エアコンあるんだから、つけたらどうなのさ!見なよ、現在気温35度なのよ!」

「お客さん、悪いがこのエアコンはつけるわけにはいかなくてな」

「なんかあるのかい?壊れてるとか?」

「いや、ちゃんと動くよ。そんなんじゃなくてよ、昔ここにいたバイトのやつに動かすなってだいぶ前に言われてるんだよ」

「なんで店長のあんたがバイトの言うことなんか聞いてるの?そんなん無視してつけりゃいいじゃない」

「あの頃の俺はバイト以下の立場だったからな…」

「なになに、そんな昔の約束守ってんの!?なんであんたがそんな約束守ってんのか気になるなぁ。教えてよ」

「そうだな、まだ時間もあるしな…
あの頃の俺は、まだ高校に入りたての若造だった…」

___________
┬┴┬┴┬┴┬┴┬┴┬
‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾

高校に入学した時の俺には目標があったんだ。

『高校三年間の間に彼女をつくる!!』
っていうしょうもないモンだがな。


 「で、結局あんたに彼 女はできたの?」

 「いんや、できなかっ た。」


まあ、そんな目標をかかげながら、俺の高校生活はスタートしたんだ。

滑り出しは好調だった。

なるべくフレンドリーに、と心がけた甲斐あってたくさんの人と話をする事ができた。

でも、やがて進学校の厳しい勉強についていけなくなっていき、周囲からバカだアホだとからかわれ、目標なんかどうでもいいや、って感じにやる気がなくなってしまったんだ。

 「うわー、ドンマイだ ね」

 「当時の俺は全然気に してなかったけどな」


そんな中、奈落の底まで落ちた俺を、引っ張り上げてくれたやつがいたんだ。

「ねぇ、何読んでんの?」

一人で読書をしていたとき、俺は声をかけられた。

そいつは同じクラスの女子だった。

「へぇ、グリム童話かぁ」

「…イメージに合わないグロさが好きなんだ」

俺が答えると、そいつは目を輝かせて言った。

「えっ、グリム童話ってグロいの!?また読ませてよ!」

俺は当時陰気になっていた俺にはなしかけたそいつの勇気と気迫に圧倒されながら、答えた。

「ああ…別にいいよ」

「ほんと、ありがとう!」

んで、それから俺の生活は一転、明るくなった。

休憩時間も、いろいろな本の話題で盛り上がった。


「へぇ、よかったじゃ ん」

「グリム童話には感謝 だよ」


ちなみにこのときはまだ、カレー屋は親父が経営していて、俺はその手伝いをしていた。

ある日の放課後、俺はいつものようにあいつにはなしかけた。

するとあいつは、
「ゴメーン、今日はバイトの面接があって、はよ帰らないとダメなの」

と言って、手を振りながら帰って行った。

俺は少し寂しさを感じながら、帰路についた。


家では、かぎなれたカレーの匂いの中で親父がナンをタンドールで焼いていた。

店のカウンターをよく見ると、なんだか見慣れた顔のやつがそこに立っていたんだ。

「あれー、なんでグリム君がここにいるの?」

「グリム君?…まあいいか。
俺は、この店が家だからここにいるんだよ」

「ほんとに!?じゃあこれからはバイトのときも一緒だねっ」

このときばかりは神様も俺に味方してくれたんだなって思ったよ。

んで、それからは学校でも家でも楽しくてさ、ああ俺は青春してるんだなって感じだったよ。

知り合ってから一年ほどたった頃だったかな、一緒に帰っている途中だった。

突然あいつはこんなことを聞いてきたんだ。

「ねぇ、グリム君って好きな人いるの?」

俺は脈絡のないあいつの質問に、正直に答えた。

「まあ、気になってるやつはいるな。」

「うわー、フラグおも いっきり立ってるじゃ ん」

「え、あれってそうい う意味だったの!?」

「…あんたって以外と 朴念仁なのね」

まあ、その質問をするときのあいつの顔があまりに可愛くて、俺は惚れちまったんだ。

それ以来あいつと会うときは緊張して言葉も出なくなってしまったんだ。

「…あんたって以外と 初心なのね」

あいつが俺のことをどう思っているかはそのときの俺には分からなかったんだ。

で、あいつと話をする機会がだんだん減っていって、しまいには愛想を尽かされたんだろうな、あいつは家の事情だと言って遠くへ引っ越してしまったんだ。

そのときに最後にあいつに言われてのが、なぜか
「店のエアコンはつけずにいつかはずして」
だったんだ。


___________
┴┬┴┬┴┬┴┬┴┬┴
‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾


「あれ、エアコンはずしてないじゃん?」

「なぜかな、あいつの思い出をはずすのはどうかなって思ってさ」

「でもはずしてくれ、って頼まれたんでしょ?」

「…そうだな、あいつに頼まれたんだもんな」


それから俺はその客に協力してもらい、エアコンをはずした。

すると、エアコンの裏から何か紙切れがひらりと落ちてきた。

よく見ると、それは手紙だった。

あいつの名前の下に、小さなハートのシールが貼ってある。

俺はさまざまな思いがよぎる頭を落ち着かせ、手紙を開いた。

そこにあいつの字で書いてあったのは……




(完)
ラストは想像にお任せします、だそうですよー

Re: 金曜日(ほとんど)に出る三題話!みんなで書くページ! ( No.10 )
日時: 2011/06/17 20:28
名前: 北野(仮名) (ID: bEKYC/sm)

俺が深い眠りから目を覚ますと、外はもう真夏の快晴。

時計の針は昼の一時を指している。

「アラームつけたのにな…」

俺はポリポリと頭をかきながら体を起こし、眠気でぐらぐらと揺れる意識を気合いで覚ましながら大きなあくびをした。

『よう!えらく長い睡眠だったなあ、相棒!』

まだ完全に目覚めていない脳に、やたらと快活で響く声が聞こえてきた。

『ちなみに、相棒がセットしたアラーム、俺ちゃんと鳴らしたぜ?すぐに相棒の手が飛んできて止められたけどな』

声の主はベッドのわきに置いてある、
. . .
腕時計。

機械の声がなぜか聞こえるようになって半年。

突然知らない機械に話しかけられるのも、それを無視するのも慣れた。

大概の機械は一度無視すると
『あ、こいつも俺たちの声が聞こえないんだな』
って話しかけるのをやめる。

だが、致命的なことにこの腕時計にだけは昔一度だけ答えてしまったことがあった。

まあ、何も知らないときに突然腕時計から声をかけられたら、普通びっくりして聞き返してしまうだろう。

しょうがないのだ、しょうがない…

『相棒?なに俺と真反対の遠くを見て悲しい目をしている?まさか、俺の悪口考えてるな!?』

なんで…こんなうるさいやつに…

『そうだな、図星だな?まったくいつもお前は俺を批判することばっかり考えてるな!やっと俺に口を開いたと思ったら、うるさいうるさいうるさいって、お前はうるさい星人かっての!』

「うるさい耳障りだ黙れ」

そう言って俺は時計を引き出しの奥にしまう。

『あ!こら!こんなとこに閉じ込めるな!!基本的人権の尊重!こらほんとに閉じ込めるのか!おい、お〜い……………』

「人じゃねぇだろ…」

一度新しい時計を買おうと思ったこともあったが、あいつが
『よっしゃ仲間がふえるのか!会話も二人より三人のほうが楽しいしな!!』
と騒ぎだしたあたりであきらめた。

ちなみに俺の家の他の電化製品たちも俺が機械の声が聞こえることを知っているが、腕時計のやつが話しかけるたびに俺が一蹴しているのを見て、なかなか自分から話しかけてこようとはしない。


俺は邪魔者が引き出しというそいつにとってはグランドキャニオン以上に深い谷に消えたことにすっきりすると、今夜の用事に備え、栄養をつけるためリビングに行った。


:::::::::::::::::::::::


普段から俺は寝坊が多いため、親も両方放置して仕事に行っていた。

俺は冷蔵庫からテキトーに食べられるものを見繕うと、若干物悲しい朝食&昼食を食べた。

その後、パソコンを起動。

購入して8年になるこのパソコンは、最近起動するたびに異音を奏でるようになってきた。

それでも不平を言わずにしっかり動いてくれる。

俺はそんなパソコンに感謝しながら俺の好きな読売ジャイアンツのホームページにアクセスし、今日のナイトゲームの予定を確認した。

開始時刻は6時。

「よし、今日はまだ余裕があるな」

今日は家の近くの甲子園球場で試合があるので久々に見に行くことにしていた。

「さて、この時間どう潰すかな…」
と暇人にしか言えないセリフを言って悩んでいると、タイミング良く友達から遊びの誘いのメールがきた。

俺は仕方なしに
『やっと出してくれた〜!』
と喜ぶ腕時計をつけ、外に出た。


@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


待ち合わせの場所で待っているときも腕時計のマシンガントークは止まない。

『なあ相棒、あそこにいるやつ、すごいスネ夫みたいな髪型してるよな』

「ん?ああまあしてんじゃね?…」

『あ、相棒、あの車いま信号無視したよな!?』

「…べつにいんじゃね?事故りもしなかったしよ」

『相棒、いま小島よしおが目の前を通ったような…』

「古すぎて興味がまったくわかない」

『おい相棒、あっちにいるねーちゃん、すごいべっぴんじゃねーか?』

「ッ!!!
どこだ、どこにいる!!」

『冗談だよ、相棒。やっぱり相棒も健全な日本男児だな!』

「………」



そんなやりとりは、ちょっと遅刻した友達がくるまで続いた。


{{{{{{{{{{{{}}}}}}}}}}}


友達とゲームをしたり駄弁ったりしている間も腕時計のマシンガントークはとどまることを知らない。

『なあ相棒、今日のあいつの服のセンス痛くないか?』

ばしっ。

流石に友達の前で腕時計に話しかけたら変に思われるだろうから、無言で時計を叩いた。

一応機械にも痛覚もあるらしく、今ので懲りただろう…

『相棒!いくらなんでも殴らなくたっていいだろう!それよりあいつよ、あのシャツにあのジーパンはよくないよな?あくまで機械感覚で見たらだけどな』

懲りていませんでした。

(いい加減黙れよ腕時計風情が…)

ばしっ。

『に、二度もぶったな!親父にもぶたれたことがないのに!!』

「いい加減黙れ腕時計!」

しまった!思わず叫んでしまった!

恐る恐る前を見てみると、やはり友達が怪訝な顔でこちらを見ていた。

俺は何もできず、とりあえず愛想笑いでごまかしておいた。


;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;


なんとかうるさい腕時計を抑えて友達との会話を乗り切り、時間になったので甲子園に行った。

飲み物がなんとなく欲しかったので、近くのローソンに入った。

中は虎ファンが山ほどいた。

中でも元気なのはレジ近くを占拠しているシニアの集団で、中央にいるラメだらけのタイガースTシャツを着たじいさんが
「阪神今年こそ優勝—っ!!」
などと叫んでいる。

その阪神を忌み嫌っている俺としては、不快なことこの上ない。

やたらと元気なシニア集団が出ていってから、俺はゆっくりと飲み物を選ぶつもりだったが、もうすでにお茶しか残っていなかった。

まあ何もないよりかはいいので、俺はそれを買って球場に入った。

…ん?球場の中で買えばいいんじゃないかって?

ダメダメ。あんなの高すぎて話にならねぇよ。

だって普通の倍以上はかかるんだぜ?


Re: 金曜日(ほとんど)に出る三題話!みんなで書くページ! ( No.11 )
日時: 2011/06/17 20:29
名前: 北野(仮名) (ID: bEKYC/sm)

球場の熱気は凄かった。

なぜか虎ファンはとても熱狂的で応援がものすごいことになるが、巨人ファンも負けてはいない。

一切盛り上がる気のない俺は、周囲の空気に終始押されっぱなしだった。


しばらく見ていると、一度ホームランでファールかフェアか微妙なプレーがあった。

悩んだ挙げ句、審判はフェアの判定をだし、ホームランを打った阪神側の応援がどっと沸き立った。

俺が
「今のはファールだろう…」
と呟くと、
『そうだな、今のは明らかにファールだったな』
と機械の声がどこからか聞こえてきて、少し驚いた。

『ほう。小僧、お前は私の声が聞こえるのか』

その声の主はスタンドライトだった。

『この角度からだとよく見えるぞ。今のはファールだった。』

「…そうだよな。まあ別に俺は阪神が勝とうがいいのだけどな」

『何!?お前巨人ファンじゃないのか?自分の応援するチームに不利な判定がでて憤慨しないなんて!』

「一応巨人ファンだが、そこまで勝ち負けにこだわらないんだよ。それよりお前は甲子園のライトなのに阪神ファンじゃないんだな」

『昔はそうだったんだがな、どうも最近の阪神はナヨナヨしていて気に入らん。だからいつも甲子園でゲームがあるときは相手のチームを応援しているんだ』

「へぇ…そんなもんなんかね…」

そこで俺はスタンドライトに別れを告げ、一旦トイレに行くため席を立った。


≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫


トイレから出てくると、入り口の前に朝見た元気なラメ虎Tシャツのじいさんがいた。

だが、なんだか様子が変だった。

フラフラとして、足取りがおぼつかない。

(なんだろなー)
と思いながら見ていると、じいさんは
突然倒れた。

「ラメじいさんどうした—————ッッッ!!!!!!!!」

慌てて俺は球場の係員を呼び、じいさんの手当てをしてもらった。

「あー、これは重度の熱中症ですねー。あなた、何か飲み物持ってますか?」

「あいにくさっき飲み干しちまったよ。そう言うあんたは持ってないのか?球場の係員なんだから水くらい持ってるだろう?」

「すいませんねー。残念ながらいま給料日前でして、そこまで余裕がないんですよー」

「給料関係あるの!?というか、水も用意できないって、そうとうヤバイよな!?」

「分かっていただけましたかー?ってことで、なんか飲み物用意してください」

「ひでぇ係員だな!?」

俺は泣く泣く死ぬほど高いお茶を買ってじいさんに持っていった。

医務室に着くとじいさんはもう体を起こして元気そうにしていた。

係員に殺意が湧いた。

‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖


じいさんは名を長谷蔵と名乗った。

ずいぶん古くさい名前だな、と思ったことは心にしまっておくことにする。

じいさんはどうやら病気の関係でもうあまり先は長くないらしい。

だから死ぬ前に思う存分好きな野球を見ておこうということらしい。

「はっはっは、まさか応援する球団が敵対している少年に助けられるとはな。ワシももっと強くなって若いもんに負けんようにせねばな」

「お元気なんですね…(さっさと観戦に戻らせろよ)」

「ハハハどうじゃ、少年。お前から見てワシはまだまだ走り回れるくらい元気に見えるか?」

「たぶん、…………」
「ハッハッハッ、そうかそうか、若者から見てもワシは現役か!なんだか俄然やる気が湧いてきたぞ!!」

…ダメだ!言えない!
"たぶん"のあとに"無理"がつく予定だったなんて……

「まあいつまでも元気に現役でいてください…」

俺はそう言ってそそくさとスタンドに戻った。


/\/\/\/\/\/


試合はもうほとんど終わっていて、巨人の快勝だった。

大事な場面を見逃してしまい、ややあの長谷蔵とかいうじいさんが憎かった。

特に他に見るものはないので、甲子園から出てその辺を歩き回ることにした。

甲子園の周りは以外といろいろあって、特に暇になることはなかった。

近くのマクドでコーヒーだけで一時間粘ったあと、
「そろそろ帰るか…」
と立ち上がったところ、突然機械の声が聞こえてきた。

『小僧、小僧!私の声が聞こえるか!

必死に叫んでいた。

どこかで聞いた声だなぁ…
と考えていると、久々に腕時計がやかましい口を開いた。

『相棒、ありゃ昼間のスタンドライトの声だぜ!』

「ああ、確かにそうだ。なら返事しても大丈夫だな。
なんだスタンドライト!俺はここにいるぞ!」

『どこだ!!私の位置からでは見えん!見えるところに来てくれ!重要な話があるのだ』

「なんだよ俺今から帰るとこなんだよ…」

『おい相棒!いくらなんでもそれは冷たすぎるんじゃねぇか?あんなに必死なんだ、きっと何か大変なことがあったんだろ!!」

俺はしぶしぶという言葉がぴったりくるような気分でスタンドに戻った。


(((((((((((○))))))))))


スタンドに戻る途中で、ひと悶着あった。

一度出たのだから、もう一回金を払わなければならないと受付のやつに言われたのだ。

機械に、スタンドライトに呼ばれたなんて言えるはずもなく、俺が返答に困っていると、小声で(そんなことしなくてもいいのに)腕時計が囁いてきた。

『…相棒!忘れ物ってことで一旦入らせてもらえ!』

俺は納得すると、慌てて言った。

「席の方に忘れ物をしたんです!!正直他の人に盗られていないか心配で……!」

受付のやつは突然そんなことを言い出した俺を若干怪しみながらも、一応通してくれた。

「ありがとよ、腕時計」

『礼なんていらないぜ、相棒!俺とお前の仲だろう?』

そんなカッコつけた腕時計のセリフが気に入らなかった俺は、パシリと軽く腕時計を殴っておいた。

Re: 金曜日(ほとんど)に出る三題話!みんなで書くページ! ( No.12 )
日時: 2011/06/17 20:31
名前: 北野(仮名) (ID: bEKYC/sm)

スタンドに着くと、スタンドライトたちはとても焦った様子でしゃべり合っていた。

『どこだ?』

『どの角度のライトが見ていたんだ?』

『私だ、私。人通りの少ない路地だったぞ』

何がなんだか分からない。

「おーい、来たぞ!何も用がないなら帰るぞ」

『来たか、小僧!実はな、一人のじいさんが甲子園から少し離れた路地で信号無視した車にはねられたんだ。その車はそのまま逃げてどこかへ行ってしまったし、人が全く通らない道で誰もじいさんがはねられたことに気づかないんだ』

「もしかしてそのじいさんって…何か特徴はなかったか?」

『そうだな…服が変だったな。
ラメだらけの虎Tシャツを着ていたな』

「何ッ!?」

俺はそれを聞いた次の瞬間、はじかれたように走り出していた。


≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪


走り出して五分ほど後。

俺はすさまじく後悔していた。

「路地の場所聞くの忘れた……」

今さらもう一度忘れ物だと言ってスタンドに入るなんてことはできないだろうし、かといってスタンドライト以外に場所を知っているやつは分からないし…

俺が途方に暮れていたとき、再び腕時計が口を開いた。

『相棒、ライトが言っていたことを思い出せ!なんでじいさんは轢かれたんだ?』

腕時計は普段うるさいくせに、肝心なときはやたらと役にたつ。

「え…?あ!分かったぞ!」

俺はすばやく周りを見回すと、目当てのものを見つけた。

そして、こう聞く。
     . .
「おい、信号!お前の仲間で近くにじいさんが倒れているやつはいないか?」

—信号無視した車にはねられたんだ—

『ん?ちょっと待ってくれ。いま聞いてみる』

信号は流れを車のスムーズにするため互いに連絡をとり合って調整している。

だから、ある程度近くなら他の信号のことも分かる!

『お、ひとつあったぞ。どうすればいいのか焦っている』

「教えてくれ!それはどこの信号だ?」

『ここから球場を挟んでほぼ真反対のやつだ。この道に沿っていけばたどり着ける』

「よし分かった!ありがとよ!!」

『気を付けろよ!それと、信号はちゃんと守れよ!!』

俺は一目散に球場前の道路を行った。


≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒


「じいさん、大丈夫か!!」

俺がじいさんのところにたどり着くと、じいさんは頭からわずかに血を流しながら歩道に横たわっていた。

「ん、少年…ワシは大丈夫や…もう若いモンにはかなわないの…」

「じいさんしっかりしろ!待ってろ、いま救急車呼ぶからな!」

俺は大慌てで携帯から119番にかけた。

やく三分後、じいさんは病院へと運ばれていった。


×××××××××××


俺がそこに突っ立っていると、目の前の信号が話しかけてきた。

『あのぅ…さっきのおじいさんが轢かれるところ見ていたんですけど…』

「そうか、信号。でもその車はどっか行ってしまっただろう」

『はい…でもナンバーは覚えています…』

「何!?そんなもん知ってるなら早く言え!!」

『うぅ…すみません…』

俺はその信号からナンバーを聞くと、捜索を始めた。


† † † † † †


まずはそこらじゅうの信号に聞いたナンバーの車を探すようにたのんだ。

次に甲子園の近くのコンビニにあった防犯カメラにも捜索を頼んだ。

ネットワークをもつ防犯カメラは、とても強力な味方だった。

その上、連絡手段として公衆電話を使うことにした。

信号や防犯カメラが犯人を見つけたら、俺の近くの公衆電話が鳴り出すという仕組みだ。

さすがに車が見つかって突然公衆電話が鳴り出したときは周りの人がとても驚いていたが。

俺はあっという間に見つかった車を追うため、タクシーに乗った。

タクシーに乗ったいる間も近くの信号から情報を得て、少しずつ近づいていった。

しかし相手も長い間後ろをついていると、気づいてきたようで、少しずつスピードが速くなっていった。

「おいもっと速く走ってくれ!あの車を見失わないでくれよ!!」

「お客さん、これ以上は制限速度オーバーですよ。っというか、なんでそんなにあの車を追うんですか…」

「ひき逃げだよ、ひき逃げ。あの車にちょっとした知り合いを轢かれてね」

「ひっ…ひき逃げ!?そんなの私も巻き込まれるかもしれないじゃないですかっ!冗談じゃない、そんなのごめんですよ!!」

そう言うと運転手はタクシーを止めてしまった。

「おい!あんたは人を運ぶのが仕事だろう!?追ってくれよ!」

「嫌だ…巻き添えで死ぬのは嫌だ!」

俺と運転手がそうやって押し問答していると、腕時計が横から口を挟んできた。

『相棒、もうそんなやつほっといて、別の方法考えようぜ』

俺は結局タクシーを降り、他の手段を考えることにした。


‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡


ここで俺と腕時計が思いついたのは、やはり信号だった。

俺は近くの信号に頼んで、あの車の行く先々の信号を赤にしてもらうようにした。

しばらく走ってあの車の行った方面に行くと、信号であの車が止められているのを見つけた。

「動きを止めることはできたけど、俺だけじゃ捕まえるなんて不可能だな…」

『ここはもう警察に頼るしかないな』

「でも証拠もないのに通報して、警察は捕まえてくれるわけないよな…」

しばしの沈黙のあと、突然腕時計が叫んだ。

『…!相棒、あの車よく見てみな』

「よく…?あっ!血痕がついてる!!よし、これで通報できるぞ」


∀A∀A∀A∀A∀A∀


その後すぐに警察が周りを囲み、今までの逃走からは想像もつかないほどあっさりと取り押さえられた。

最終的に、車に乗っていた若いカップルは逮捕され書類送検されることになった。

それから一週間後、俺はじいさんの入院している病院へと見舞いに行った。

じいさんはもうだいぶ回復していて、とくに後遺症などもないらしい。

俺が病室に入ると真っ先にじいさんは礼を言ってきた。

「ありがとう、少年!君はたかが一人の老いぼれを救っただけかもしれないが、その勇気はすばらしいものだ!」

「いや、そこまでたいしたことはしてないと思うけどな…」

「少年、それは謙遜だよ!君は本当によく頑張ってくれた!!」

そう言ってじいさんはばしばしと俺の肩を叩いてくる。

じいさんがずいぶん俺に感謝しているのでなんだか俺は頑張った機械に申し訳なく感じ、思わずぼそっと呟いた。

「………頑張ったのは俺じゃなくて信号……」

俺のその呟きに、じいさんはただただ首をかしげるだけだった。



(完)

この作品のお題は信号、阪神、お爺さんです。
一つ目はカレー、高校生活、エアコンです


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