コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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金曜日(ほとんど)に出る三題話!みんなで書くページ!
日時: 2011/07/03 12:52
名前: 北野(仮名) (ID: arQenQl7)

クリックありがとうございます!
ここは簡潔に言うと短編小説を募るページです

毎週金曜日(まあ、ほとんど)にお題を出してですね、そのキーワードを使って短編物を創作するってのを内輪でやってんですよ
お題はスゲー適当(パソコン・ニート・仕事とか単語で)
それをその中の一人が「カキコに投稿していこうぜ」とか意味の分からないことを言い出してこんな事になってるんですけどね

下には今までのお題とそれから出来た短編を少し載せています
「何これ?ショッボ。俺のがまだ書けるわ」
と思い、書く元気のある人は是非、一作投稿して頂ければと思います
まあ、文章が上手になったらなーと
投稿して頂いた物は私『北野(仮名)』が責任を持って、この、下の、クリックしたら飛ぶ感じのにしてまとめさせていただきます



滝、ダンボール、ビックリ箱
北野…>>1>>2

阪神タイガース、信号、おじいさん
北野…>>3>>4 バリ男…>>8 雪国…>>10>>11>>12



アイスクリーム、テスト、鏡
北野…>>5>>6>>7

エアコン、カレー、高校生活
雪国…>>9

辞書、時計、文化祭
北野…>>13>>14>>15>>16

サッカーゴール、禁固刑、効果音

ミッキー>>17

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Re: a lot of stories ( No.3 )
日時: 2011/06/13 17:29
名前: 北野(仮名) (ID: XK5.a9Bm)

これはプロ野球をしてる
日本語を使う国と思って
また話重いけどホンマに明るいの入るから!信じて!
先言っとくけど作者は阪神嫌いじゃないぞ。

お題

阪神、信号、おじいさん



これはとある年の巨人ファンの話。

「なーにーが阪神の優勝だ!くそっ!」

ガンッ!
路地裏の古いちんけなバー、そこで男はやけ酒を飲んでいた。店内はきれいと言うには程遠く、うっすらと埃が浮いている。背の低い、腰のまがったご老人が一人で経営している。そんな中で、空になり氷だけが淋しく残ったやや大きめのグラスを台に叩きつけた。木製の少し染みがついて汚れた横長の台は軋みを上げて大きく揺れた。その音を聞き付けた他の客はほんの少しの間驚きを隠せなかったが、すぐに自分のグラスに目を戻した。そんな視線をも気にも止めずに男は褐色の液体を一息に飲み込んだ。イライラの募る体に鎮静剤代わりのアルコールが浸透する。
「阪神ファンなんて……」
この男は別に阪神は嫌いではない。阪神が勝つだけで怒り狂う熱狂的な巨人ファンでもない。ならばなぜ阪神が勝って機嫌が悪くなっているのかというと、そこにはある一人の阪神ファンとの物語がある。





男は少年時代、阪神ファンであった。正確には熱狂的な阪神ファンに連れられていたせいで自他共に阪神ファンだと思い込んでいたのである。その狂人が誰かというと男本人の祖父であった。普段は至って温厚な年配の方といった印象だが、ひとたび阪神が絡むと鬼神のようだと言われていた。巨人だけではない。あらゆるチームが阪神に勝つだけでマジギレ、果てには物にあたり散らし手に負えない。阪神ファンはもうちょい温厚だと俺は思うが………そんなある日のことだ。阪神が優勝したのは。大阪一帯が熱気に包まれた。なんかよくは分からんが十数年ぶりの優勝らしかった。自分が生まれる前に優勝したのがラストだったと言うことだ。そんなことよりも今の要点はじいさんがそれほど熱狂的な阪神ファンだったということだ。よく少年時代にその感情のアップダウンに付き合ったことだ。そのことを思い出し、嫌な思い出だと苦笑した。では、実際どんな出来事が起こったのか話していこう。










「うおおぉっ!!」
それまでテレビにかじりついていたじいさんがいきなり叫んだ。0対0、9回裏、ツーアウトで走者のない場面でいきなり四番がHRを打った。これにより阪神は優勝した。耳を澄ますと隣や向かいの家でも歓声が上がっている。カラフルな小さな点が画面の中で縦横無尽に空を走り回っていた。赤や黄色のそれは、おそらくジェット風船だと思う。「よくやった、よくやったぞ安部!」
しきりにその打者を褒めちぎっていた祖父に合わせて幼く、何が起こっているか深く理解しないままに手を叩いていた。打った打者本人も、自分がこうしたんだという自覚を持てていなさそうに電工掲示板をピントの合わない目で眺めていた。

「宴会じゃあっ!」

浮き足立ちながらも、財布を手にとって近くの居酒屋に阪神ファンの集いに出かけていった。なぜか………俺を連れて。あそこには同じ年ごろの男の子がいた。保護者の付き合いが深いので、お互いに仲が良く、年長者達で盛り上がっている隣で走り回ったりして遊んでいた。名前までは覚えていないが。



「じゃ、念願の優勝を祝って」

そこの店の店主がそう言った瞬間に弾けるようにまた騒ぎだした。今から考えると無理もない。待ちに待った勝利の前にはどんな祭りも色褪せて見えるだろう。その日の夜は夜が明けるまで騒がしかったかもしれない。でもそんなのどの家も同じだ。
「お前らも飲むか?」
いきなり、すでに調子乗って酒をかっ喰らい、ベロンベロンに酔っ払ったじいさんが来た。
「飲むか!」
未成年どころかまだ幼稚園児の自分達はすぐに断ったが、酔っ払いのしつこいことしつこいこと……



途中からの記憶が無いので途中から寝てしまったのであろう。カチャカチャと陶器の擦れる音に起こされた。騒ぎ倒した大人たちがせっせと後片付けをしていた。その中に自分のじいさんの姿もあった。よく見るとみんな顔色が悪い。二日酔いだと言っていた。
「わしらは片付けておくから遊んでこい」
頭痛に顔をしかめながら自分たちの保護者たちは優しく酒臭い空間から送り出してくれた。俺たちは公園に行くことにした。

@@@

店から出て少し歩いたところにある大きな交差点。いくつもの信号が立ち並んでいる。下の方の鉄柱は錆びて赤茶けてボロボロになっている。この辺の人たちが危ないから立て直すよう市に申請している。しかも古いから見づらいこと見づらいこと……

「ねえ、どうするサッカーでもす・・」

ズンッ

「!」

いきなり地面が揺れた。この時の地震は後に氷庫県北部地震と呼ばれる。この地震による関西への影響は甚大だった。100万人程度の死傷者が出た。突き上げるような振動と全てを飲み込む怒濤の水流、津波。震央付近は壊滅状態に陥ったという。といっても自分達の住んでいたのは境市あたりだったのでそれほど揺れは強くなかった。だが…

グラッ…

「うわぁっ!」

そう、信号機が倒れてきたのだ。特に足元が腐食していた一本が自分たち二人に襲い掛かってきた。

ドシン!

Re: a lot of stories ( No.4 )
日時: 2011/06/13 17:31
名前: 北野(仮名) (ID: XK5.a9Bm)

阪神、お爺さん、信号の続き



「何だ?今の揺れは?」
「あいつらのところに行って来る」

慌てる周囲を尻目にじいさんは落ち着いて用意を始めた。

「無茶だ!止めろ」
「二人が危ない」

止める仲間を振り切って余震の恐怖も振り払い、町へと駆け出した。




「い、痛…い‥」
「大丈夫!?」

俺はギリギリ大丈夫だったが、その友達はゆっくりと倒れてきた信号の下敷きになっていた。早く助けだそうと必死に力をこめたがびくともしなかった。

「どうすれば…」
「無事か!?」

そこでじいさんがやってきた。そして、事情を説明するとすぐに助けようと実行に移った。

「玉将の息子さんを死なすわけにはいかん」

今更だがそれは店名だ。餃子なんかが売りだぞ。

「ふんっ」

近くにあった瓦礫と鉄骨を引きずって持ってきて、てこのようにしておもいっきり力をこめた。するとゆっくりだが信号は動き出した。見る見るうちに子供一人の脱出できるぐらいのスペースができた。すぐに危険地帯から脱出する。信号はもう一度ゆっくりと地に倒れた。ズシッと低く呻くように地は呟いた。

「よし、たすか…」

ベキベキベキッ!

「なっ…」

さっきまでキチンと立っていた他の信号も降り注いできた。幸い、脱出したばかりの男子はすでに遠く離れていたが、じいさんは…

ドサドサドサッ

謀り合わせたかのように、信号は全てじいさんに向かって倒れてきた。このとき、一体自分に何が出来たのだろうか。吐き出す息は生暖かく、何も言葉を放つこともできぬまま、ただただ惨劇を茫然と景色に取り込まれた意識のように眺めていた。目の前の惨劇が画面の中の出来事のようだった。いや、そう思いたかった。その光景は現実だと思っていたものと余りにもかけ離れていた。口の中に砂を詰められたように声は出ず、呼吸すら忘れていた。

「おじ…いちゃん‥」

我に返るより先に声が出た。いや、その言葉が自分を我に返してくれたと言った方が正しいだろう。ようやく言葉を発せたことにやや驚きつつもすぐさま信号の残骸とひび割れ、粉々になったコンクリートの重なる瓦礫の山に向かって走りだした。

「大丈夫!?」

ほんの少し落ち着きを取り戻したとはいえ、まだまだパニクっていた自分にはこれ以外に掛ける言葉が思いつかなかった。言葉だけではない。行動もだ。ただ灰色の塊に声を掛けることしか出来なかった。

「ここにいる、だけど」

じいさんの声が聞こえた。これを聞き付けた瞬間に、首輪を外された子犬のように声のした方向に駆け出した。しかしすぐに歩みを止めざるを得なくなった。

「来ちゃ、ダメだ」

体はすぐに反応した。だがその言葉に頭が着いていかなかった。

「行ったら…ダメ?」
「……そうだ」
「なんで!?」
「危険だからだ!」

いつもは温厚なじいさんが初めて日常で声を荒げた。確かにこんな状態では日常と呼べるかは怪しいが、いつも声を荒げているときと比べると阪神が絡んでない以上、これは日常だ。

「だから何だ!」

それまで黙っていた男の子がいきなり叫んだ。

「あんただって、分かってたはずだろ!こうなるかもしれないって!それでもあんたは俺を助けた。なんでだ!分かってるはずだ。助けたかったから、それだけだろ!?その理由で危険を顧みずに助けたあんたに止めることは出来ないはずだ!」
「私は大人だ!」
「関係ない!助けたいという気持ちに身長の大小は関係ない。考える前に体が出ていた!それでいいだろ」
信号に埋もれるじいさんを探しながらその子はそう言った。額には緊張からか、汗が浮かんでいた。必死でどうするか考える。その甲斐虚しく瓦礫に埋もれたじいさんは一向に見つからなかった。そんな中のことだ、再び絶望が訪れたのは。
グラグラッ…

「余震だ!私はいい!早く、早く逃げろ!」
「いやだ!」
「まだそんなことを!私を助けたいなら逃げろ!」
「ここにいなくてどうやって助けんだよ!」
「私をじゃない!私の心をだ!今お前たちを巻き込んだら死んでも悔やむ!」
「でも…」
「いい加減にしろ!」

ここで会話は途切れた。思ったよりも余震は強く、立つこともままならない様な程だった。瓦礫の山が崩れだす。普段からバランス感覚の悪かった俺はすぐに山から遠くへと揺り動かされた。だがもう1人はまだ格闘していた。

「じいちゃんが言ってたろ!逃げろよ!」
「まだ…まだぁっ!」

神の戯れとはどういうものを指すのであろうか。一人余震と奮闘しているその子に巨大なコンクリート、ビルの残骸が倒れてきた。非情な灰色の建築材はいたいけな子供を飲み込んだ。目の前が真っ白になった。手に持っていた二つの大切なものを手放してしまった。大切な心の一部をぽっかりと抜かれてしまった。人生というキャンパスの二つの色を失ってしまった。逃がしたものは余りにも大きく、その喪失感は量りでは計りきれなかった。




して決めた。阪神ファンとは関わらないと。自分の命を簡単に粗末にする人たちと付き合うとまた悲しみを背負ってしまう。もうあんなことは懲り懲りだ。

「マスター、勘定」
「7000円だ」

財布から一万円札を取出し、机におく。身支度を整えている間におつりが出てきた。無造作に三枚の千円札を掴み取り、バーのドアを開けた。雨が降り出しているようだ。男は何も言わずに雨に打たれつつ夜の闇へと去っていった。


二話目終わり

Re: 金曜日(ほとんど)に出る三題話!みんなで書くページ! ( No.5 )
日時: 2011/06/13 22:07
名前: 北野(仮名) (ID: upXvIKCB)

アイス、鏡、テスト




近年、不良潰しという噂が巷を飛び交っている。正体、そして名前も不明。唯一分かっていることは性別。女だということだ。しかもその目撃例はたった一度らしい。




「うぉい、黒田。俺の変わりにジュース買って来い」

とある高校、とある教室でおとなしそうな男子生徒が一人のガラの悪い青年に絡まれていた。チャラチャラとチェーンをベルトからポケットにかけて斜めにセットし、耳に開けた穴にピアスを付けている。指にはいくつかのリングをはめて髪は茶色に染めている。学ランのボタンは全部開かれ、口からはタバコの匂いがする。
「嫌だよ。頼むなら別の奴にして」
「あぁ?誰に口聞いてんだ?てめぇは」
「分かんないの?」

不良としか言い様の無い生徒がイラついている現状であろうとも手元でシャーペンをノートの上で走らせながら黒田と呼ばれた生徒は淡々と返した。そしてそれ以上喋ることなく今度は視界に教科書を入れた。それを見て絡んだはずの不良も半ば呆れてどこかに行ってしまった。

「勉強オタクが…」

授業のため、教室に入ってきた教師を押し退けて取り巻きと共にドアを蹴開けて出ていった。オドオドとしているその先生が授業を受けろと注意したその時にはもうその姿は廊下には無かった。






「にしてもリーダー、あいつウザイっすよね?」

先ほど哀れにも勉強中毒に無視されたグループの中でも下っぱの部類に位置する男は敬意を払うように変な敬語を使い、イライラする事件をぶり返した。

「本当だ。野郎どうしてやろうか」

怒りを喉の奥に無理矢理押し止まらせるようにして、興奮で上ずりそうになるのを抑えてそう言った。

バァンッ

「ちゃーっす」

いきなり校舎から屋上に出るための扉が轟音と共に開いた。一人の人間が両手で突き飛ばすようにして押し開けたのだ。上靴を律儀に履いてスニーカーを履くガラの悪い連中に歩み寄った。

「ジュース飲みてぇんだろ?買ってきてやるよ」

現われたのは黒田だった。さっき堂々と自分たちを無視した人間の登場で場の空気はすぐに変わった。

「どういうつもりだ?」
「宿題が終わった、ただそんだけの話だよ」
「残念だったな、俺たちゃもう飲み物はいらねーんだよ。どうしてもってんならアイスでも買ってこいよ」
「分かった。金出せ」

黒田は飄々としているが、首領格は内心はらわたが煮えくり返っていた。怒りを喉の奥に無理矢理押し止まらせるようにして、興奮で上ずりそうになるのを抑えてそう叫んだ。だが、金を出せと言われたとき、その意気はすぐに沈静された。なぜかは分からない。普段ならパシらせる奴に払わせるだろう。しかし、予想より、普段よりそれを切り出すタイミングが早かったせいか、普段と違う行動を取ってしまった。みんな自分の手元から財布を出し、200円ずつ出した。それを受け取ったのを確認した後、またドアを今度は引き開けて出ていった。

「一体何なんだあいつは」

行動が謎すぎる。わざわざ一度断ったパシリを自分から引き受けに来た。頭のおかしさに少し気味の悪さを感じた。

「あれ?なんでかな先客がいるねー」

黒田が開けたまま開きっぱなしになっている開き戸から新たに人々がやって来た。あの姿には見覚えがある。学校を締めている三年生の先輩方だ。腕力だけでなく知力も相当なもので前のトップを三人がかりで入学して2ヶ月でぶっ潰した武勇伝がある。

「ここは俺等の溜り場だ。ここに来るってこたぁ下に付くか潰されるかの二択」

指をパキパキと鳴らして、準備運動をするように上下動して、唾を足元に吐きつけてゆっくりと近づいてくる。タバコの類を一切やっていないので、身体能力も圧倒的に違う。唯一勝っている点としては人数だけだ。だったらそれを利用するしかない。人差し指を下に向けてくるりと小さく円を描いた。これは合図だ。意味は、「囲んでいくぞ」だ。その指示通り、一斉に立ち上がり、即座に周囲を取り囲んだ。

「あれ?第三の選択肢、俺等が潰されるパターン?」

かなりの大人数に囲まれているのにヘラヘラとニヤついている。こっちを完全に甘く見ているということだ。好都合、油断している今がチャンスだ。風を切って瞬時に駆け出した。敵が敵なので緊張で頬がピリピリする。瞬く間に間合いが詰められる。全方位から一斉に拳を繰り出す。シュッと鋭く空を貫き相手の顔に突き進んでいく。その悠々としている鼻を捕らえようとしたとき、異変は起きた。

ガンッ!

突如側頭部に衝撃が突き抜けた。自分の気力に反して膝はゆっくりと曲がっていく。不意に受けた衝撃により、ゆっくりと視界が霞む。瞼は重くなり、意識は朦朧としていく。右膝は垂直に曲がりきり、地に付いてしまった。倒れゆくその中、衝撃が放たれた方向を見た。そこには、赤い刺繍のようなものが施されている小さく白い至るところにありふれている球体が、ポーンポーンと跳ねていた。

「野…きゅ…うぼー…る」

不意打ちを加えた正体はなんと野球ボールだった。こんなものが偶然のタイミングに自分に飛んでくる訳が無い。薄れゆく意識の中、目をこらして投げられたであろう方向を見た。そこにいたのは暴力事件を起こして停学を喰らっていた野球部エース。エースが事件起こすとかどんなだよと思ったことを覚えている。

「ぐっ…くそぉっ」

今だに視界がぼやけている現状で吐き捨てるように呻き声を上げた。呟くために動かす唇さえも重たく感じる。脳震盪が起こっているのか、腕どころか指さえも、ピクリとも動かせそうに無い。

「そういやさっき誰か階段降りてたなー。あれは誰かなー?」

自分では思うように動かせない首を乱雑に髪を掴まれ無理矢理起こされた。毛根に激痛が走り、叫び声を上げようとしたが、小さくうぅっと口からこぼれ出るほどの弱々しいものが限界だった。

「く…ろだか?」
「へーぇ、黒田ってゆーのかー?鬱憤がこの程度じゃ晴れないからその子もボコっちゃお」

そう言って倒れている男のポケットからケータイを取り出した。

「黒田黒田…ってあれ!?無くね!?」
「当然だパシリの番号なんて知るかよ」
「そーだねー」

何やら身内で楽しそうに会話をしているが、殴られた方としてはたまったもんじゃない。自分と知り合いの情報の塊を取り返そうとしたそのとき、今度は腹に重撃が食い込んだ。さっきまでヘラヘラ笑っていた奴が真剣な顔つきで蹴りを入れたのだ。今度の一撃は迅速に意識を奪っていった。

「メモでも置いとくかねー。この前返ってきたテストの裏でいいや。体育館横集合っと」

そんな長ったらしい会話を最後まで聞く前に意識は完全に闇に沈んだ。

Re: 金曜日(ほとんど)に出る三題話!みんなで書くページ! ( No.6 )
日時: 2011/06/13 22:08
名前: 北野(仮名) (ID: upXvIKCB)

続きっす





「おっ、起きた」

目を覚ました時には体育館の倉庫のすぐ裏側にいた。乱暴に引きずられて連れてこられたのか、服には砂利がこびりつき、あちこちに擦り傷ができている。肩を動かそうとするとギシギシと呻きを上げるような音がした。腕を上げようとするが、少しも上げることができなかった。その理由はさっきまでとは違っていた。

「ロープか…」

腕と胴は強固な縄でしっかりと括り付けられていた。一寸たりとも動かないほどに。周りを見渡すと仲間も同じ仕打ちを受けていた。太さが一センチはありそうな頑丈なロープ。腕力だけで引きちぎるのは確実に不可能だ。

「もうすぐあの子が来るよ。ボッコボコにされるのを眺めてなよ」

クスクスとあいつらがこっちを見て嘲笑した時だ。放送が入ったのは。

〔今からテストを始めます。体育館横の人たちはよく聞いて下さいね〕

「ん?なんだ?」

ザワザワと動揺が広がり、不穏な気配が漂う。今聞こえたのは女の声…

〔受けるならばすぐ横の体育倉庫に、受けないならば尻尾を巻いてお帰りなさい。鍵は外してあります〕

「ふぅん、嘗めた真似してくれるじゃん」

ずっとヘラヘラしっ放しの軽い奴も流石にイラついたのか、眉間に皺が寄っている。それより、女の声ってもしかして…

そう、始めに黒田に絡んだ男が考えたとき、縄にくくったまま自分たちを置いて体育館倉庫に奴らは乗り込んでいった。

「不良潰しだか何だか知らねーがたたき潰してやる」

ただそれだけ言い残して、連中の姿は扉が隠してしまった。












「誰だか知らねーがテストを受けてやんよ」

ヘラヘラした薄ら笑いを完全に押さえ、真剣さと緊迫さを携えて倉庫内に反響するよう低く言葉を放った。うっすらと陰った用具の集落にゆらりと動く一つの影、その肉眼では分かりづらい微細な違いを見逃さなかった。目をスッ…と鋭く細めてターゲットがいるであろう位置の大体の予測をした。もうこの時点で黒田のことは完全に忘れていた。なぜなら不良潰しは……







———女だから


もう標的は己と同じ称号を持つ者へ恐怖を与えるぽっと出の目立ちたがり、不良潰しへと移り変わっていた。

「メスがオスの上に立つんじゃねーよ」

〔テスト・スタート〕

またあの放送が入る。これが意味することは一つ。今まだあいつは放送室にいる。だったらさっきの影は一体何だと言うのであろうか。そう一瞬だけ考えたがすぐにその考えを打ち消した。レコーダーの類を置いているのであろう。そうでもないとさっきの影の説明が付かない。

「テストはもう…」

ダンッとコンクリートの床を蹴って駆け出す。さっき見た影の足元を狙って。

「終わりだよ!」

そして壁となっている跳び箱を蹴り飛ばした。キチンと並べられていた跳び箱が一閃の蹴りで崩壊する。ガラガラと騒音を鳴らして雪崩のように倒れこんだ。

〔合格です〕

「何だと!」

馬鹿な…タイミングと結果が正しすぎる。本当に放送室にいる?その場合この倉庫にいるのは内通者ということになる。まさか…

「ちゃんと招待状見てくれたんだ。そして不良潰しの真似事なんかしたんだね?黒田君」
「半分正解」

跳び箱の裏のマットの下から黒田が姿を現した。色々と薬品を入れたビーカーに蓋を付けたような容器をごちゃごちゃとポーチに入れている。

「同級生の女子にでも頼み込んで放送を頼んだ。そしてケータイあたりで連絡を取り、指示を出した」
「半分正解」

眉一つ動かさないほど冷静にそう答えた。

「君は負けず嫌いかな?自分の出したさっきの状況という名の問題を解かれたことがあっさり解かれて素直に負けを認められない」
「完全に不正解」

それを聞いた途端、普段ヘラヘラしている奴の額に血管が浮かび上がった。最大級にイラついている証拠だ。これはあいつ終わったな、と全員がそう思った。

Re: 金曜日(ほとんど)に出る三題話!みんなで書くページ! ( No.7 )
日時: 2011/06/13 22:09
名前: 北野(仮名) (ID: upXvIKCB)

ラストっす




「とりあえず一発殴られとこうか」

ジャリッと砂を踏み潰して黒田に向かってゆっくりと歩を進めた。だが、黒田はそんなことでは揺るがずにポーチから物を取り出した。片方はやや大きく、中に液体が入っているようでもう一方は少し小さめで固体が入っているようだ所々開いている小さな穴から白い煙が吹き出している。

「取り出したるは二つのフィルムケース」

キュポッと間の抜けた音がして二つのケースが開いた。液体は透明で固体は白色だった。

「中にあるは真水とドライアイス」

一番イラついている不良の目の端がピクッと動いた。

「これを混ぜると…」

突如凄まじい白煙が発生する。ドライアイスが水に浸かり、急激に溶け、二酸化炭素が発生、さらにはドライアイスにより露点を通りすぎて水蒸気が結露、細かい水滴と化した。

「簡易煙幕〜♪」

冷たい霧が薄暗い空間を充満させる。その霧に紛れて黒田は姿をくらませた。

「こしゃくな真似を…」

よくもまあこうも俺たちにこんな嘗めた態度を取れるな、苛つきを頂点にまで達させた状態で辺りを見回した。白い幕に潜む薄い影、それが目の端に止まった瞬間、雷のような蹴りを放った。鋭く素早い、正確な一撃はその体を捉えた。

「ゲホォッ!」

聞き覚えのある呻き声が足元から聞こえる。まさか今蹴ったのは…

「汚ないな…」
「知略的って言ってよ」

今蹴り飛ばしたのは自分自身の仲間だった。黒田は霧の中で同士討ちを狙っているようだ。だが、厄介なのはそこではない。なぜなら動かなければ良いだけだからだ。しかしそれができない理由がある。黒田の存在だ。ぼぉっとしていたらあいつに取ってチャンス以外の何物でもない。向こうは自分自身以外は全員が敵。だから誰を殴っても大丈夫。ところがこっちはそうはいかない。なぜなら当たりは一人だけ。それ以外は全て味方。迂闊に手を出したら自分で自分の首を締めることになる。そんなことを考えているときだ。ベシャッという音がしたのは。制服のズボンに白いドロドロしたものが付く。うっかりそれを踏んづけてしまった。紙を踏み潰すようなくしゃりという感覚が足から感じられたあと氷の上で摺り足をするように靴は簡単に滑った。

「なぁっ!?」

勢い余ってその場に倒れる。妙な物質の真上で尻餅をついてしまった。ズボンを浸透して冷気が伝わってくる。鼻にすっと入ってくる甘い匂い、これは…

「アイスかよ」

溶けかけてグリップが逆の意味で抜群の半液体のアイスを黒田は床にばらまいた。位置を把握しているのはその本人だけ。言っている間に水蒸気は晴れてきた。
「取り出したるは金属」

ポーチの小さいポケットから白銀の金属を取りだした。さっき使った水の入ってフィルムケースを取り出した。またしても取り出した物を水に浸けた。

「ナトリウム爆弾」

ケースの蓋を閉じてすぐさま相手に投げつける突然のその行動に反応出来なかった。針で突き刺した穴のように小さな光が生まれた。点はケースの中を暴れまわり光の線へと化していく。一本だけに止まらず行く筋もの輝きを放つ。フィルムケースはその熱と圧力に耐え切れず、所々融解してひしゃげて弾け飛んだ。

「くそっ」

反射的に手で顔を覆う。光はさらに激しくなり、手を焦がしかけたところでようやく治まった。その時だ、斜め前から黒田が突っ込んで来たのは。ほんの少しの間体が硬直したが、すぐに冷静に戻り、ターゲットを見据えた。そして先程から何度も使っている蹴りを叩き込んだ。何故だろうか、黒田の胴を完全に脚は貫通した。人肌とは思えないほど脆く…

パキィンッ

「しまっ‥」

今蹴りを決めた180度反対の方向から背中に衝撃が走る。パラパラと前方でガラスが飛び散る。振り替えると黒田が肩でタックルしていた。

「鏡かよ…」

いきなりの一撃に戦力どころか戦意も打ち砕かれた。そして、ゆっくりと膝を折った。

「一ついいか?」
「何だ?」

倒れたまま不良は黒田に問い掛けた。

「半分正解ってどういうことだ?」
「そうだな。結論から言うと不良潰しは俺だ」
「はぁ!?そいつ女なんじゃあ…」
「誰が不良潰しは一人と言った?」
「あ、そう」
「俺は不良潰しの片割れだ相方は一回ミスって姿を見られた。だが、幸運なことにそれで俺は活動しやすくなった。男だから不良潰しじゃあないと油断するからな」
「な〜るほど」











最近不良潰しという連中がいる。男女の二人組をリーダーとする、とある高校を絞めていた集団。ある事件を境に何かが変わったのだとか……




          三つ目終わり


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