コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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携帯電話で闘えてしまう世界 〜久々更新〜
日時: 2012/02/25 12:33
名前: 北野(仮名) ◆nadZQ.XKhM (ID: gWvD8deM)

プロローグ


 新月の、夜の話。何かが、誰かが暴威を振るっていた。月明かりも照らさぬその日は、絶好の犯罪日和とでも言いたいのか大柄なその男は暴れていた。
 警官がそれを止めようと束になって襲い掛かっていたが、全く手に負えない。それどころか、より被害は甚大なものになっている。止めようとする警官までもが犠牲になっている。
 彼らは皆、その手に携帯電話を持っていた。

「オイオイ、まだ本気出してねぇぞ」

 猛威を振るう男が嘲るように警官に呼び掛ける。それを耳にした警官の顔が苦渋に染まる。一矢報いてやろうとその手の内の、携帯電話のコールボタンを押した。
 ピッポッパッとありふれた電子音が聞こえる。無表情だった一人ぼっちの彼の顔つきが一変する。狂気とも言える狂喜のような不吉な笑み、強い者とのぶつかり合いに応じるように、自分の携帯電話も開く。

「calling[コーリング]」

 共に彼らは耳に携帯電話を当てた。その瞬間に、場を取り巻く雰囲気も変化する。



 そして翌日——。


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>>23キャラ募集


皆さま、初めまして北野(仮名)と申します。
以前ここで書いていたのですが挫折して以来、ずっとファジーに引きこもってました。
それで、現在メールで友達に読んでもらっているのが個人的に気に入っているので出してみることになったんです。

注意書き


1、くどい文章お嫌いな方・・・見ない方がいいかも。
2、ヘタクソを見たくない人・・・他の人の読んでおいた方がよろしいかと・・・
3、コメントしてくれても部活で忙しくてそちらを読めない可能性が・・・



以上です、まあ読んでくださったら幸いです。


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 calling。phoneを核として発動する契約者の解放と使役。契約とは多彩なものと交わせることができる反面、自分が何と契約するかは全くのランダム。洗濯機を呼び出せる者もいたら、砂糖なんてものを呼び出す奴もいる。中には動物を呼び出す者もいて、その人達はanimalfamiliar[アニマルファミリア]と呼ばれる。そして、最も強いタイプは、事象や現象といった類のものと契約しているEffect—Callerだ。竜巻のようなものと契約していたりする者もいるし、念動力のような者もいる。
 次に、発動させる方法はphoneという携帯電話のような機械を用いる。phoneは見た目は完全に携帯電話だが、普通に電話をかけることはできない。callingしかできないという訳だ。そして発動させるのに、自分自身のphone-number[フォンナンバー]を入力する。声紋と同じように一人一人のphone-numberは違う。だが、他人の番号を使ってもその人のcallingskill[コーリングスキル]は使えない。callingを発動させるにはその人その人の体内を駆け巡る波動のようなエネルギーが必要だからだ。裏を返すと、波動と番号が正しいのならば、誰のphoneを使っても自分のcallingskillは発動できる。
 三ケタと四ケタの数字がEffect—Callerだ。数字が小さくなるほどその力の強さは上がるが、110以下の数字だとその強さはイコールになる。


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序部
Chapter1 ELEVEN暴走編
一話>>1 二話>>2 三話>>3 四話>>4 五話>>8-9 六話>>14-15 七話>>16-17 八話>>26-27 九話>>28-29 エピローグ>>30

本部
Chapter2 第零班登場編
一話>>31二話>>32三話>>33四話>>34五話>>35

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Re: 携帯電話で闘えてしまう世界    キャラクター募集中です ( No.26 )
日時: 2011/12/01 18:53
名前: 北野(仮名) ◆nadZQ.XKhM (ID: Rc3WawKG)



「五年前の月食の夜!?そんなもん、今関係無いだろ!」

 知君の言葉を聞いた男は隠す事なく怒りを露にする。怒りを露にした理由は、月食が今関係無いというところではなく、男の過去を知っていると、知君が妄言を吐いたと思い込んだからだ。
 どこの資料にも残っておらず、誰も捜査に関わるどころか、惨劇が起きたことすら知らない事件だ。どうせ警察の長官も知らない。ならばただの下っぱのような知君が知る由も無い。
 それに知ったからと言って知君に、都会で何も知らずぬくぬく生きてきた奴に同情もされたくなかった。どうせその苦しみは誰にも分かりはしない。

「確かに、月食の話は関係無いです、あなたには。ただ単に僕だけがあなたの過去を知るのがアンフェアだと思っただけです」

 あなたには、その部分まで聞き終えた青年はやはりそうだろうと、苛立ったように眉間に皺を寄せた。
 だがその次にまたしても、知君が自分の過去を知ったと言うので今度は怒りでなく奇妙な感情を覚えた。

「じゃあ、何があったのか言ってみろよ」
「分かりました……それは、先週の午後の話————」







 あなたは、家族と一緒に暮らしていた。小さな山奥の村で。総勢二百人程度のphoneすらない田舎でしたが、その村をあなたは大層気に入っていた。
 あなたには、生涯を誓いあった愛しき者がいた。二人は誰からも祝福されていて、いつかは式を挙げる予定だった。
 しかしそれは遮られた。とある問題の前で。その頃近くの山々の木々を次々と切り倒してその辺りにゴルフ場を立てようとする企業があった。村を、山を、自然を愛していたあなたはその企業が次は自分たちの村の辺りの樹木が伐採されると聞いて、その会社に直訴した。
 するとそこで、会社は思いもよらない強攻策に出た。村の殲滅という悪魔の所業に。
 そしてあなたはphoneに出会う。必然的に最後のELEVENが現れた。






「だが、そのせいで大切なもの……」
「うるさいっ!!これ以上言うな!!お前が俺の過去を知っていることは分かった、だからもう……」

 語る知君の言葉を青年は遮った。激しい怒りを、深い悲しみを掘り返さないでくれと、必死で懇願しているようにも見えた。
 それでも知君は、その動く口を止めようとしない。

「あなたというELEVENの存在が進攻者を本気にさせた」
「だから黙れって……!!」
「トランプ・シークレットが牙を剥いた」






 咄嗟に敵のphoneを奪ったあなたは天に導かれるように100と押し、callingした。すると目の前の奴らのskillがコピーされた。
 相当に焦ったでしょうね、トランプ・シークレットは。村の壊滅という彼らにとって楽なはずの仕事はあなたというELEVENの存在でかなりリスキーな物に変わった。襲撃した二人の強者は矛先を瞬時にあなたに変えた。
 でも、動揺したのはあなたも同じで、なりふり構わず力を放ってしまった。見当違いの方向に飛んだそのエネルギーは、村一帯を包み込んだ。
 我に帰ったあなたが見たのは赤く燃える炎と、膝の上で弱々しく生きる最愛の女性。


Re: 携帯電話で闘えてしまう世界    キャラクター募集中です ( No.27 )
日時: 2011/12/01 18:54
名前: 北野(仮名) ◆nadZQ.XKhM (ID: Rc3WawKG)




「もう止めろって……言ってんのが……聞こえないのかお前はぁっ!!」

 いきなり、いや、とうとうと言うべきか、彼は目に涙を湛えた。顔は悲痛で歪んでいる。
 そこでようやく知君は口を閉じ、黙祷するように冥目した。数秒の後にその目は再び開かれる。

「最後に彼女はあなたに残した。相手を恨むなと。相当……心が綺麗なお方だったようですね」

 子供が駄々をこねているような、五月蝿い泣き方でなく大切な者を失った悲しみに沈む静かな泣き方に変わった。
 目からこぼれた涙は頬を伝わって地へと降りる。その涙の量は普通ではなく次々と、止むことのない雨のように降り注ぐ。

「そうだよ!自分のせいで被害は増えたさ!もしもあの時ちゃんと制御できていたらと今でも思ってる!!」

 静かながら語調を強くして、脅すように青年は再度口を開いた。
 ELEVENは自由に生きれず、安らかに死ねず。世の中の大いなる力に操られて冥俯へ送られる。いつだったか、誰かが言っていた言葉を知君は思い出した。

「分かりました、では……その悲しみ、憎しみ、そしてその根源をこれより奪い取って見せましょう」
「奪い取るだぁ!?何言ってんだお前は!あの後俺なりに色々調べたけど、そんな能力[ちから]は無かった」

 それに同情したのか、知君は目の前の青年に救いの手を差し伸べるように言葉を言い放った。
 だがその差し伸べられた手を青年は振り払うように叫ぶ。そんなことできるはずが無い、と。

「できます、いや、してみせます」
「そんなcallingskillが無い以上、できる訳が…」

 それでも知君はできると豪語する。それがあてのない自信からくる強がりに見えた青年は、呆れるように諦めの言葉をこぼす。
 希望はもうすでに捨てたのだから。今さら餌をちらつかされても何も感じない。そんなことする輩が哀れに見えるだけだ。

「もう良いんだ。お前も死ねよ。phone-number100……」
「させませんよ」

 世に絶望したように、自嘲するように彼はphoneを手に取り、ゆっくりとボタンを押そうとする。
 それよりも早く知君は、ずっと手に持っていたphoneに自分のphone-numberを入力する。

「phone-number110……」

 急に青年の顔つきは変わる。この頼りない青年もELEVENだという真実に。
 しかし思い出す、その番号のcallingskillはassist[アシスト=援助、助力する]、他人の能力の力を底上げする能力。
 やはり知君の言葉は狂言ということに……

「calling、knowing-tyrant[ノウイングタイラント=全知の暴君]」

 大いなる力に阻害されたかのように、青年の力は発動しなかった。その異変に青年は隠しきれない動揺を感じた。
 何度ボタンを押そうとも、幾度callingを試みようとも、契約者は一向に現れない。

「何で!……何があって……こんな!!」

 驚愕に影響されて、自然と声が大きくなる。phoneをそのまま握り締め、壊しそうな勢いでボタンを乱打する。
 嘘だ、こんなことがある訳が無い。phone-number110の力は、こんなものでは……ただただそれだけが、後悔の波の中を何度も何度も輪廻の輪を廻るように復唱される。

「だから……言ったじゃないですか。今度こそお聞かせしましょう。捻れることのない真実を」

 そして、知君がゆっくりと口を開けようとした瞬間に、コツコツと、乾いた音が響いた。コンクリートの地面と靴が織り成すバックグラウンドミュージックが静寂の中に響く。
 誰かと思い振り向くと、そこには二人供が知る一人の男がいた。狐目の、怪しげな笑みを絶やすことの無い白髪の若者。簡単に説明したらそのような感じだ。

「何やえらい楽しそうな話が始まりそうやな。ちょいとワシにも聞かしてもらおか、その話」

 威厳がいかにもありそうな声が、靴の音と共に静寂を裂く。
 この国のELEVENが全て一点にと集まった瞬間————。



please wait next calling

Re: 携帯電話で闘えてしまう世界    キャラクター募集中です ( No.28 )
日時: 2011/12/04 21:10
名前: 北野(仮名) ◆nadZQ.XKhM (ID: Rc3WawKG)

九話






「あな…たは……」
「てめぇ、あの時の……」

 欠けていない丸い月の下で、知君との青年の声が重なる。いきなり登場した第三者の存在に驚きを隠し切れずにいた。いきなり出てきたにも関わらず、二人共がこの白髪の若人を知っていた。お互い、知っていた理由は全く異なっていたが。

「なんであなたのような者までがここ……ぁ痛ッ!」

 目を見開いたまま、その者のところに詰め寄ろうとした時に、知君は足元のめくれあがったタイルに足を引っ掛けて盛大に転んだ。一瞬、冷たい雰囲気がその場に充満した。こんな奴に敗れたのかと、今更になって進撃していた青年は恥ずかしくなった。そして、関西弁の第三者は盛大に笑いだした。

「えらい間の抜けた子やねんなぁ。こんな奴でも選ばれるって、ELEVENもいい加減やな。ま、ワシが言えることじゃないねんけど」

 ひとしきり笑い終えた彼は知君に向かって正直な感想を述べる。緊張感が切れた途端にこれか、とでも言うように。
 青年は、そんな態度の男の姿を見て疑問に思う。なぜここまでズケズケと物を言うことができるのかと。彼はまだ知らなかった。この男は、知君の遥か上に位置する、かなり上の方の階級の者であった。すくなくとも、警察では最高位。

「んじゃ、知君くん、ワシの事そこの子に説明したげて」
「分かりました」

 上司が部下に指示するように、その人は知君に半分命令するように言う。その指令に素直に従って、幼げな顔の警官は語りだした。

「この方の名前は、古都割 月光(ことわり げっこう)。日本の警察の最高権力、警視総監です」

 警視総監、告げられる衝撃の事実に青年は目を丸くする。対して月光は不敵な笑みを浮かべたまま彼の方をじっと見ていた。その視線に、鬼に睨まれたような恐怖を感じた青年は、即座に目を逸らした。

「こんな若い警視総監なんているのか?」

 半信半疑、そういった具合で青年は知君に確認するために再度問う。すると、今度は今までで一番驚く答えが返ってきた。

「あの人生まれは江戸時代ですよ」
「……………………は?」

 それ以外の言葉は出てこなかった。江戸時代って、callingするためのphoneすらないではないかと、納得できないがゆえの反論が渦を巻いている。

「そもそもphoneというのは、選ばれし者だけに許可されていたcallingという契約者の使役と解放を、どんな人にでも扱えるように核として作り出された装置にしかすぎないんです」

 本来Effect—Callerとは他者を隔絶する圧倒的な存在だった。だが、その力を持たない一般の科学者がcallingを欲した。何年も研究を重ね、その科学者は……

「ついにphoneを完成させた」

 まあ、そのせいで洒落にならない事件が急増したねんけどな、と月光が横からちゃちゃを入れた。自分がしたこともそれに含まれていると気付くと、胸の奥に歪みのようなものが生まれた。

「callingについてはもう良い。なぜ、江戸の者が今に、こんな若い姿で実在しているんだ?」
「それがワシのcallingskillやからや。ちょっと使う時は頭使ぅてしまうけど、中々使い勝手のええ力やで」

 知君に聞いたはずなのに本人が返答する。寿命を延ばすこともできると言うなら、相当恐ろしい能力だろうと。それに思い出す、調べたとき、この国のELEVENは行方不明の百十番、そして警視総監の二名だと。
 ELEVENが三人、その状況に少し知君は緊張気味でいた。実質的には二人しかいないのだが、『あの計画』さえ完成すればと。

「ワシの能力はrejection[リジェクション=拒絶]。身の回りの現象を拒絶する能力や」

 それでも多少は面倒な制限がかかると彼は続ける。否定型を拒絶して、二重否定で肯定したり、直接生死に関わる事は拒絶できない。
 そうでないと死人を生き返らせるという神にも許されざる禁忌に触れることになる。他にも自分のパンチで岩を砕けないことを拒絶したりすると際限無く自分が強くなってしまう。
 だが、肉体が老いることは否定できた。それの付加価値として寿命で死ぬことは無くなったが、それでも頭を消し飛ばされたりしたらやはり死んでしまう。

「ついで言うておくと五年前のspiral-truthも拒絶してるからな」
「やはり……分かっていらしたようですね。ところで、僕は『サルベージ計画』に参加するのでしょうか」

 途端に、二人にしか分からない会話が始まる。一体何の話をしているのだろうと、青年は首を傾げる。五年前のspiral-truthも、サルベージ計画も、聞いたことが無く、その意味の予測すらできない。
 ただ、ずっと緊張感が感じられず、オドオドしたり間の抜けていた知君がいきなり真剣な面持ちになったのだ。少なくとも軽い中身ではなく、『サルベージ計画』は大きなプロジェクトだろうと予測する。

「当然やん。君がいるからこその計画やねんから。君がいないと画竜点睛を欠く、やで」

 知君はそれにあまり乗り気ではないようだが、知君がいないと成り立たないことから、月光、つまりは組織としての警察は彼を利用したがっている。

「もう良いからお前の過去を話せよ」
「まだです。もう一つ、あなたにお聞かせすべきことがあります」

 いきなり出てきた月光の正体はもう分かったから早く知君についての話を出せと催促する。だが、最後に言っておくべきことがあると、まずは先延ばしにする。これ以上何を言うのかと思いながら、青年は考える。もし自分の罪状についてなら、相当重い罪だろうなと、今更ながらに後悔した。

「あなたは誰一人として殺してません」

 そんな風に考えていた矢先にだ、いきなり自分の業が軽くなったことに彼は目を見開いた。そんなこと、ある訳が無いとすぐさま反論する。だが月光もそれを肯定する。

「っていうかワシのお蔭やねんで。ワシはこいつらが負った流血するほどの大怪我を拒絶した」

Re: 携帯電話で闘えてしまう世界    キャラクター募集中です ( No.29 )
日時: 2011/12/04 21:10
名前: 北野(仮名) ◆nadZQ.XKhM (ID: Rc3WawKG)


 建物の中から現れた何十人もの警官がずらりとその場に並ぶ。青年はその全員の顔を見たことがあった。というより、自らが戦った敵であった。さっきの言葉から理解する限り、これは月光の力のようだ。

「やから、ワレの罪状は殺人やなくて傷害、殺人未遂てとこやな。まあそこからお偉いさんのELEVEN擁護の情状酌量が入るからワレの刑罰は監視付きの留置ってとこやな」

 基本的にどの国も戦争に備えてできるだけELEVENを集めようとするから、そのようにあっさりと理由を述べる。
 だが、そんなことよりも遥かに気掛かりなことがあったので、青年の関心はそちらに移っていた。

「でも、ニュースで死んだって報道されて……」
「ワレ、やっぱり勘違いしとるやろ。この国がマスコミに介入する力が無い綺麗な国やと思うなよ」

 今の日本の世の中は、全て自分が牛耳ってやっているのだとでも言いたげに彼は言い放つ。そんなことがあるものなのかと、青年はただ目を見開いて茫然としている。

「まあ、それを命令させたんはワシの玄孫の玄孫の玄孫や。古都割 日向[ことわり ひなた]、初の女性総理大臣」

 次から次へと突拍子もないことばかり口から発するので、そろそろ青年の頭も付いて来れなくなった。だらしなく緩んだ表情を見た月光は、もう限界と感じたのか黙り込んだ。何かを指示するように知君に目をやった。

「じゃあ、そろそろ僕について教えてあげましょうか……」





 十年前、僕はただの中学生でした。正確には成りたての、入学したばかりの中学一年生。入学祝いに両親からphoneをプレゼントとして貰いました。そして、もちろんのようにcallingしました。
 まさか、自分がELEVENに選ばれるだなんて思ってもみませんでしたよ。そのせいで政府から毎日毎日、二十四時間ずっと見張られているんですから、洒落にならないほど疲れましたよ。そんな疲れるだけの日々が五年も続いた時に、knowingしか姿を現していなかった僕のcallingskillのtyrantの部分がいきなり目覚めました。
 僕の能力のknowingの部分の効果は、あらゆる物事を知ることができる力です。callingskillの名前、効果、普通のCallerの場合何を呼び出せるか。そのskillの一番有効な使い道なんかも思い通り知ることができる、全知の力。テストの答えだって簡単に分かる。周りから騒がれないためにわざと間違った解答を記入。
 それでもね、やっぱり皆ELEVENを特別視するんですよ。国の息のかかった存在です。下手に手は出せないので、虐めなどは当然起きませんでしたよ。でも……一度たりとも、彼らは僕に心を開いてくれなかった。
 こんなことになるのなら小さい頃からの夢だったEffect—Callerだってならなかった方が良かった。そう思った時にtyrantは僕に呟いた。

《ならばお前がELEVENだという事実を捻じ曲げたら良い》

 すぐ近くに、spiral-truthを持ったCallerがいたのが、この運命を決定付けました。tyrantの効果、それは……





「他人の能力を無理矢理奪い取ることです」

 そして現段階では、奪った力を使い終えた後は、飽き性なので放そうとしますが、我が儘な暴君は返したがらず、どこかへと破棄してしまいます。二度と、持ち主の手には戻らない。
 そして、そこらの人から奪ったspiral-truthで、事実を捻じ曲げ、失踪したのは知君ではないと思わせるために、架空のELEVENをでっちあげて全世界にそれを催眠のようにして浸透させました。
 もちろんそんなことするためには莫大な精神力が必要なのですが、僕という器を失いたくないtyrantがその一回だけ肩代わりして、力を使ってくれました。まあ、総監は例外ですけどね。

「それが、過去に起きた真実です」

 その途端に知君は口を閉じた。何やら哀しげな表情を浮かべて。その理由もすぐに彼は語りだした。

「そのせいで、僕は誰かのcallingskillを奪い、破棄しました。報道を見て僕も初めてskillが無くなることを知りました。そして決めたんです……」

 他人のために生きようって。他人を守って生きていこうって。

「だから僕は同じELEVENでありながらこんな事件を起こしたあなたを最初は軽蔑しました。でも、違ったんですね」

 あなたは僕と同じだっただけなんです。誰も死んでいないと分かった今、あなたが気に病むことは何一つありません。
 そこまで言って本当に知君は口を閉ざし、ポケットをごそごそとあさって手錠を取り出した。ゆっくりと青年に向かって歩いていき、その鋼鉄のリングを彼の両腕にはめた。
 カシャンという錠のかかる軽い音が響く。これが、物語の一つの区切りだとでも言うように。
 満月は、夜の一番の頂上で、他の星を置き去りにして隔絶した明るさの光を地上に届けていた。



please wait last calling of chapter 1

Re: 携帯電話で闘えてしまう世界    キャラクター募集中です ( No.30 )
日時: 2011/12/12 22:23
名前: 北野(仮名) ◆nadZQ.XKhM (ID: jz0QsT9L)
参照: 短いです

序部、エピローグ



「じゃあ、奏白と班長の完治祝いと行くか」

 全てが終わった次の日の朝、凶悪calling犯罪対策課第一班は、月光、つまりは警視総監から直々に休日を貰った。奏白、そして知君の二人が大健闘したのでその褒美だとか。そういうことから、メンバーの一人が祝賀会のようなものでも開こうと言いだした。

「完治って……言うほど酷い怪我じゃ無かったぞ。どこかのお偉いさんが俺たちの傷を拒絶したし」

 その、祝賀会を退院祝いのように実施しようと呼び掛けるのを奏白は制した。そんな軽いノリで行くべきでないと。その上、自分の怪我は回復したのではなく、拒絶されて元々無かったことになったのだ。治癒もくそも無い。

「良いじゃないですか。皆で楽しみましょうよ」
「あのなぁ知君、こんな朝っぱらからやってる居酒屋なんて何処にも無い」

 楽しみたいと言った知君をも奏白は軽くいなす。騒げる店は朝は確実に閉まっていると。
 それもそうだと彼らはもう少し考え始める。多少騒いでも大丈夫で、朝からでも行けるような場所を。

「カラオケは?」
「こんな人数入るか?」

 現在第一班にはメンバーが十人以上いる。それほどの人数を一部屋に入れられるほど大きいカラオケはここいらには無い。よってあっさりと却下される。

「それもそうだよなー」
「じゃ、もう少し考えましょうか」
「知君、考えるのは良いが目の前に段差があるのは気を付けろよ。お前ただでさえこけやす……」
「痛ぁっ!」

 知君が考える方に意識を飛ばしているのを見た奏白が転けないようにと気を配って声をかける。にも関わらずに彼はつまずいてその場に倒れこんだ。砂利の擦れる音が辺りに響く。またかよと、呆れて皆は嘆息する。

「あ痛たた……」

 服に付いた汚れを払いながら知君は立ち上がった。いつもから慣れているおかげで今ではこの程度では傷は負わない。それでも、痛いものは痛いらしく膝を押さえている。

「知君、お前一回病院行け」
「大丈夫ですよ奏白さん。この程度……」
「精神科にな」
「酷いですよ……それ」

 仏頂面になった知君と、薄く笑いながらからかう奏白を交互に見て周りの警官仲間は吹き出した。こんな奴らが先頭に立ってELEVENを倒しただなんて誰が思うだろうか。でもそれは変わることの無い事実。この二人は事実強いのだ。知君の脳裏に月光の声が蘇る。

「どうする? ワレがELEVENやいうことは皆の記憶から消しておくか? ワシは別にどっちゃでも良いけど」

 今まで隠してきたのにはそれなりの理由があると察してくれた月光はそう言ってくれた。最初は知君も戸惑った。過去、散々苦しめられた記憶がその問いに首を縦に動かそうとした。
 だがそこで、知君は頭を横に振った。皆の記憶に残してくれて構わないと。
 真っ直ぐ目を見て言葉を返す知君を見た月光は、あっそ、とだけ言い残して去って行った。

「しゃあねぇな。俺んち行くか?」

 妙な所に行かされるぐらいなら、と思った奏白は仲間たちを我が家に誘った。一瞬の沈黙、数秒のどよめきの後に力強く「行く」と返ってきた。

「じゃあ行くぞ」

 嵐の前の、穏やかで静かな、至福の時——。



please wait chapter 2


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