コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 偶然の雨。 【完結しました!】
- 日時: 2012/05/26 13:51
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: uY/SLz6f)
雨が、降っている。
細かくて、柔らかくて、霧のような雨だ。
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- Re: again ( No.1 )
- 日時: 2012/01/05 17:57
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: 6KYKV6YZ)
- 参照: スーパー短編、今日中に書き上げる(`・ω・)!
私は、初対面が苦手です。
————— CHANCE OF RAIN —————
よく喋る人だ、とよく言われる。そりゃ違うのだ。知ってる人だから慣れてる人だからよく喋る。初めて顔を合わせる人となんか絶対ムリ。
そんな私が、どうしてこんな企画に参加したのか正直自分自身でもよく分からない。
これは大学の企画だ。それも高校生を対象にした実験教室。各地から集まってくる知らない人たちと、嫌でも喋らなきゃいけない。
ふと、この企画に応募した頃の自分自身を思い返してみた。
あの時はどうしたわけかヤケにむしゃくしゃしていたのだ。その理由は分かってるようで、分かっていない気がする。
高校に入ってからは何もかもが、何となく、ただ単に、普通に、何の変哲もなく、過ぎて行った。
昔から刺激に飢えていた。けれどここは平和な国。だから、することも無いので人より勉強してみた。特に理由はない。ただ何となく、勉強は頑張っていた。
小学校、中学校と地元の普通の公立校に進んだ。
中学では部活をやってみた。普通に頑張れた。
友人関係も波風立てずに平和にやっていた。普通に楽しかった。
勉強の方はいつも学年一位だった。普通に嬉しかった。
どうやら私は普通に過ごすことが得意らしい。いじめとか事件とかは自分の周りで常にあったが、恐ろしいくらいに関係してこなかった。
中学三年になってようやく、色々と嫌なことが起こった。今までうまく行き過ぎていたせいか、けっこう病んだ。
けれども、そんなことはよくある十五歳の悩みのうちだろう。何かの有名な歌の歌詞にもあった気がする。
結局、友人に助けられて病み期は終わった。友人曰く、恩返しだそうだ。何の恩返しだか覚えがないが、まぁありがたいことこの上ない。
そして中学を卒業した。
普通の卒業式だった。普段から目立っていた女の子たちが大泣きしていた。私には彼女たちが理解できなかった。
ただ、卒業祝いにもらった紅白まんじゅうが物凄く美味だったことは覚えている。卒業式の帰り道、少し悪ぶって、中学では禁止されていた歩き食いを友達と二人で決行した。もちろん紅白まんじゅうの歩き食いだ。今になれば本当にアホなことをやったんだなと思う。
そんなこんなで高校生になった。高校には同じ中学の人は居なかった。
たまに会う中学の同級生たちは化粧をしたり、スカートをほぼ衣服の意味が無いくらいに短くしたりして高校生デビュー、とか言っていた。けっこうみんな可愛くなっていたので女って怖いな、とかぼんやりと思ったりした。
「凛はさ、JKしないの?」
ある日、地元の駅でたまたまあった中学の時の同級生、美月がそう質問した。
「いや…特にそういうのは計画してないけど。何で?」
すると美月は不満そうに口をとがらせた。「何で?って。だって三年間しかないんだよ、JKできるのは。」
「はぁ。JKねぇ。」美月の超ミニスカートを見ながら、パンツ見えてるぞ、と私は心の中で呟いた。
「そうだ、凛、気付いた?私髪染めたんだよ〜」美月は長い髪をほら見て、と揺らした。やけにいい匂いがした。
そして美月はクラスの男の子の話を始めた。知らない男子の話をされてもよく分からん。
美月は一通り喋りまくると、ふと、何かを思い出したように黙った。
「どうしたの?」すると、美月が首を傾けて私の顔を見た。
「凛ってさ、男子に興味あんの?」
「あるよ。無いわけ無いじゃん。」
「本当?だって凛がデレてるトコ見たこと無い。」
「そうか?けっこう恋バナとか加わるの好きだけど。本当だよ。」
「ふーん、そっかぁ。」
美月はそれで納得したらしく、また男子の話を始めた。どうやら美月の通う学校にはトモヤ君という何でもできる超絶イケメンがいるらしい。そしてこいつは入学早々そのトモヤ君と付き合っているらしい。日本の将来が不安になってきた。
トモヤ君の話を聞くこと二十分。分かれ道の十字路に辿り着いた。ここで私は東の道へ、美月は西の道へと分かれる。
「じゃあね、凛と喋ってるとやっぱ楽しい!」そう、彼女は最後に言って去って行った。
いや、アンタがずっと喋ってただけだろ(笑)
そういう感じで、高校一年の夏は過ぎた。
こんなまとめ方でいいのかと思えるくらい、そういう感じで過ぎて行った。
- Re: again ( No.2 )
- 日時: 2011/12/18 22:41
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: hTgX0rwQ)
- 参照: スーパー短編、今日中に書き上げる(`・ω・)!
そして秋。
学校の廊下には、色んな大学の説明会やら、実験教室やら、体験入学やらの募集ポスターが張り出されていた。
そろそろ進路のことを考えないとマズイかな、と思った。予想が当たり、進路希望調査なんてものが来た。一週間後に調査用紙を配るから考えとけ、と言われた。
ちなみに昨年は…と、担任が昨年の希望調査の結果を配った。半分以上の生徒が東大、と書いていた。これは大概の生徒が行きたい大学が思い浮かばず、取りあえず安くて済む公立の、知っている大学名を書いた結果だ。なぁんだ、けっこうみんな希望とか決まってないんだな、と謎の安心感を与えてくれる調査結果だった。
ふと、突然、嫌な気分になった。
こんなんでいいのか。こんな、何となく、また中学の時みたいに過ごしてしまっていいのだろうか。
いいんじゃね? そう考えてしまう自分が心のどこかに居て、また嫌な気分になった。
ええい、我慢できねぇ。
そう思い立って、スマホの電源を点けた。適当に遠くの大学を思い浮かべた。あ、K大でいいや。K大。関西だしここからじゃ相当遠い。ちょうどいいや。
学科?もう適当に理学部でいいや。どうせなら好きな学科にしよう。
大学名と学科名をGoogleの検索画面に入れて、enterをタッチ。適当に検索結果のトップにでた項目をタッチした。
なんとタイミングのいい話だろう。それはK大のある学科が高校生向けに開く、実験教室のお知らせだった。定員は60名ほどで、しかもネットから応募できるという。私は意味の分からない高揚感に押されて、そのまますぐに応募した。普段ならこんな意味の分からないムチャなことはしない。
まぁでも60名だし。けっこう応募してる人居るみたいだし。実験教室への参加切符は万が一にも私に来ないだろう。
絶対行くはずの無い関西の大学の実験教室に応募して、その日、私はなぜか満足した気分になった。
そしてそれから数週間後。
見慣れないメールアドレスからメールが一通来ていた。迷惑メールかと思ってそのまま捨てようかと思った。
が、それはいつだかに応募した、あの実験教室からのメールだった。
マジかよ、嘘だろwwwと思ってメールを開くと、嘘みたいな話だが、おめでとうございますあなたは定員60名の中に入りました、当教室へのご参加お待ちしております、といった内容だった。目の前がクラクラした。
しかし行くところは関西だ。遠すぎる。一体どうやっていくのだろう。新幹線で行くのだろうか。
調べてみると、新幹線と電車を駆使するルートで往復二万円強だった。今度こそ本当に目の前がクラクラした。
けれど恐ろしいことに、そのことを母親に話すと、普段なら絶対にお金なんかくれやしないのに、諭吉さんを三人、どーんとくれた。お土産を買って来い、という条件付きだったが、これでともかく絶対にK大まで行くこととなった。
成り行きとは恐ろしいものである。
- Re: 偶然の雨。 ( No.3 )
- 日時: 2011/12/18 23:57
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: hTgX0rwQ)
- 参照: スーパー短編、今日中に書き上げる(`・ω・)!
そしてついに来たその日。
教室は朝の9時からだったが、なにせ遠いもんだから、家を2時半に出た。凍え死ぬかと思った。それから確か4時前に出発の始発に乗り、品川駅で6時発の新幹線に乗った。
そしてギリギリにかの大学に到着。なんとそこで知ったのだが、私が一番遠距離から来た人らしい。さすがにムチャしすぎたかな、と笑った。
実験教室は楽しかった。
普段お目にかかれないような最新式の顕微鏡を使って細胞の観察をしたり、その観察結果をもとにグループに分かれて討論会をしたりした。討論が白熱すると、グループのメンバーの喋る関西弁が半分も分からなくなってしまった。なぜなら私以外、関西の出身だったのだ。
性格からして喋るのは苦手なのに、余計に喋れなくなってしまった。あーあ、こりゃ参ったなと、ぼーっとしていると、真向いに座っている男の子と目が合ってしまった。
失礼な話だけれど、その時初めてその男の子の存在に気が付いた。それくらい、彼は影が薄かった。討論にも加わっていなかった。
「あれ…何だっけ、ブ、何とか運動。」彼がぼそっと呟いた。
「ブラウン運動?」
そう、ほぼ反射的に答えると、彼は少々びっくりした様子だった。その様子からして、どうやらこの呟きは彼の独り言であったらしく、私に質問したわけではなかったらしい。
「それだ、ありがとう。」一テンポ遅れて、礼を言われる。
「いや、どういたしまして。」
会話はそれっきりだった。どうやらお互いに初対面でもベラベラ喋れるような性格では無いらしく、かといって大勢の輪に加われる能力も無いような人間であるみたいだった。そんなこんなで、私たち二人だけ討論の輪に入れないで、黙ってプリントを眺めていたりした。一体三万円近くかけて私はここに何をしに来たんだろう、と途中で虚無感に襲われたりした。
それからしばらくして、一日がかりの実験教室が終わった。途中、虚無ったりしたけどまぁ全体的にはけっこうためになったので良しとしよう。取りあえず、第一希望の大学は遠いけどここでいいや。
記念撮影をして、解散になった。けれどみんななかなか解散しない。もう二度と会うことは無い者同士なのに、何を惜しんでかメルアド交換なんかをしていた。もちろん私にはそんなことができる勇気も実行力も無い。ただぼーっとしていた。
外は雨が降っていた。傘はない。だって来るときには雨は降っていなかったから。
さらにここが駅からどういう位置にあるのかもよく分からない。初めてくる土地なので当たり前っちゃ当たり前のことなのだが。
帰りたいのだが、一人じゃ帰れない。
しかも、この雰囲気は私のような人間には少々キツイ。嗚呼、どうしよう……
絶望していると、さっきの彼がまた何かをぼそっと呟いていた。「雨がひどくなる前に帰りたいなぁ…」
京都弁の、ゆっくりした口調でそう言われると、本当に帰りたくなってきた。
「もう帰ってもいいと思うよ。この雰囲気帰りづらいけど。」
そう言うと、またまた少しびっくりされた。どうやらこれも独り言だったらしい。「君は?帰らんの?」
「帰りたいけど……私ここ地元じゃないからさ、道分からないんだ。だからみんなが帰るときに一緒に後ろに付いてって、駅までどうにか帰るつもりなんだ。」
「そっか。」そう言うと、彼が出口のドアに手を伸ばした。「それじゃ、さいなら。」
「あ、バイバイ。」言いながら、小さく手を振った。一人で帰れるということは、地元民なんだろうか。
彼の後姿を見送っていると、突然、彼は一歩踏み出したところでストップした。何やってんだコイツ、と思って見ていると、そのまま彼が首から上だけ動かして私の方を振り返った。
「そだ、じゃあ一緒に帰る?」
「え、いいの。ラッキー、じゃあお言葉に甘えて。」
そうして、ワイワイ盛り上がっている他のみんなを残して、おそらくお互いに根暗な私たちは、二人で先に帰ることにした。
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