コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 君と私の一瞬の物語
- 日時: 2012/06/16 22:10
- 名前: 桐谷 黎明 (ID: Uj9lR0Ik)
《Novelist profile》
名前:桐谷 黎明 *Kiriya Reimei*
性別:女 *girl*
職業:学生 *student*
趣味:野球・写真
《更新履歴》↑new↓old
・『contents』作成
・作者の詳細、挨拶
・『君と私の一瞬の物語』設立
《作者挨拶》
お初にお目にかかります。桐谷 黎明(きりや れいめい)と申します。カキコを利用するのは初めてです。何か不都合があればお申し付け下さいm(__)m
これから書くのは恋愛小説です。あまり得意じゃないんですけどね。私は基本、スポーツ小説が主です。が、今回は恋愛にしてみようかと……。
気まぐれで覗いてみて下さい。
それではstart¨…¨‥*゜
君と私の一瞬の物語
桐谷 黎明
《contents》
¨…¨‥*゜episode 1゜*‥¨…¨
since 2012.
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- Re: 君と私の一瞬の物語 ( No.2 )
- 日時: 2012/06/12 17:36
- 名前: 桐谷 黎明 (ID: Ft4.l7ID)
椅子に座ると良いタイミングで母がカレーとサラダを運んできた。母は机に置くのと同時にため息をついた。
「夏休みだからって寝過ぎよ。早く起きて手伝うとかしてよ」
「いただきます」
母の言葉を右から左へ受け流し、カレーを口の中へ運ぶ。一晩おかれたカレーは昨日よりもコクがあって美味しかった。
母が私の前に座る。顔は上げず、目だけを母に向けた。
「この前のコンクールの結果は?」
母が問うてきた。
食べている手を止め、今度は顔を上げて母を見た。
「今日、聞かされる」
「……そう」
テレビの横の物置台を見るとそこには今まで取ってきた写真コンクールの賞の数々が置かれている。賞状・トロフィー・メダル……それを持っている私の写真。
私は私が写っている写真が嫌いである。
他人に撮られた写真。角度・光加減・若干の手振れを気にする。自分が撮った方が綺麗だと思う。
私は幼い頃から写真が好きだった。写真好きであった祖母の影響がある。小学六年生の時に祖母から一眼レフカメラを貰い、たくさんの風景・人物を写した。レンズを通して見る世界はなぜか輝かしかった。写真を撮るのが楽しかった。
なのに……今は?
「結衣。早く食べちゃいなさい」
母が私を急かす。
「はいはい」
- Re: 君と私の一瞬の物語 ( No.3 )
- 日時: 2012/06/12 20:19
- 名前: 桐谷 黎明 (ID: KZRMSYLd)
私、杉内 結衣は高校一年生。部活はもちろん写真部に入った。今日は午後から野球部の練習試合を撮ることになっている。
学校規程の爽やかな水色のカッターシャツに腕を通す。スカートはチェック。鞄にニコンのカメラとレンズと三脚を詰め込む。鞄は相当重くなったが、もう慣れたものだ。
「行ってきまーす」
玄関のドアを開けた瞬間、むわりと熱い空気が私を包む。
電車に乗り、学校へ向かう。学校に行くには五駅目で降りる。夏休み中の午後の電車は人が少ない。しかし、座ることは出来なかった。
聞き慣れた運転士のアナウンスが流れると床に置いていた鞄を持ち上げ、電車を降りる。
学校は駅から十分のところにある。たかが十分歩くだけなのにじんわり汗が滲む。
部室前に立って、異変に気がついた。
音がしない……。
私は静かに部室のドアを開けた。
「こんにちはぁ」
パンッパンッ
目の前に色とりどりの紙と紐が散る。火薬の臭いもする。
「おっめでとー、結衣ちゃん!」
「見事金賞でーす」
部長と副部長がにこにこして立っている。手にはそれぞれひとつずつクラッカーが握られている。
「…………何がですか」
「やだなぁ。写真コンクールだよ。金賞、すごいじゃん」
副部長が部長の後ろで何度も頷く。副部長は元々無口な性格でシャイボーイなんて呼ばれている。その副部長がさっき喋っていたことに今更ビックリした。
「で、始業式の時に全校の前で発表だってさ」
入学してからまだ三ヶ月程しか経っていないのに何度かそのような発表があった。
先輩たちは私を期待しているようだ。
- Re: 君と私の一瞬の物語 ( No.4 )
- 日時: 2012/06/16 21:34
- 名前: 桐谷 黎明 (ID: 9yNBfouf)
野球部の練習試合はこの学校で行われる。すでに私と部長と副部長以外の部員は写真を撮るため、グラウンドに出ていた。
今年の私達の学校の野球部は強いそうだ。去年の秋からある転校生がやって来て、その子がマネージャーになってから野球部はぐんぐんと成長していったのだと言う。
グラウンドは白い砂が使われているが、野球部エリアだけ黒い土が使われている。土が盛り上がっているところがマウンド。白いプレートが突き刺さるような熱い太陽の光で照らされる。
そこにピッチャーが立っている。確か三年生の浅野先輩だ。背筋を伸ばし、真っ直ぐとキャッチャーが構えるミットを見ている。
胸の中で何かが渦巻く。撮りたい、という衝動にかられる。
——ここだ……。
カシャッ
「プレイボール!!」
「お、始まった」
部長が呟いた。それは試合が始まったのか私が写真を撮ることが始まったのか、よく分からないが部長の嬉しく、弾んだ声が届いてきた。
撮りたい、と思うのは一瞬だけだ。そう思う時にしか良い写真が撮れない。ただの気まぐれかも知れない。けれど、良い写真を撮りたいのは確かだ。
「結衣ちゃん、撮影は終わった?」
部長に目を向ける。部長も私の隣でカメラを構え、レンズを覗きながら聞いてきた。
「今のところ終わりました。けど、もう少し見ておきます。また、瞬間が来そうな気がするんです」
次は野球部に目を向ける。ピッチャーはもちろん輝いていたが、他の選手も生き生きしていて輝いていた。
今撮った写真を祖母にも見せたい、と思った。
- Re: 君と私の一瞬の物語 ( No.5 )
- 日時: 2012/06/17 12:41
- 名前: 桐谷 黎明 (ID: 0bGerSqz)
「お疲れ様でした」
試合が終わったのは夕方だった。空がオレンジ色に染まっている。グラウンドにいるのは野球部と写真部だけになった。
素早く三脚を片付け、カメラのレンズを取り替え、鞄の中にしまった。
「え、結衣ちゃんもう帰るの?」
帰ろうとしていると部長に呼び止められた。いや、部長だけではない。部長の後ろから同級生と先輩達が私を覗き込んでいる。
「結衣ちゃんの入賞祝いに遊びに行こうと思ってたんだけど……無理?」
「すみません……お見舞いに行かなきゃなんで」
部長の顔から笑顔が消えた。
「おばあちゃん……のお見舞いね。うん、じゃあまたね」
軽く頭を下げ、学校を出た。
再び電車に揺られる。病院は学校の最寄り駅から家への方面の電車に乗り、二つ目の駅を降りて、バスに乗って、十五分ほどのところにある。
病院は大学付属病院。大きいし、外観も綺麗だし、設備も充分整っている。
祖母は一年前位から入院している。余命は半年と言われていたが、祖母はここまで必死に生きてきた。しかし、最近は体調が悪くなるばかりで不安定な状態である。
祖母の病室、五〇三号室に入る。
「おばあちゃん……」
返事はない。眠っているのだ。祖母の傍らに寄り添う。
「コンクール……金賞取ったんだぁ……」
開いた窓から風が入り込み、カーテンを揺らした。
- Re: 君と私の一瞬の物語 ( No.6 )
- 日時: 2012/06/17 18:08
- 名前: 桐谷 黎明 (ID: kaY8Y1HD)
——数日後。
「んー……なんかねぇ……」
今日は部員各自が入賞した写真を持ってきて鑑賞し合い、評価をしている。特に部長は私の撮った写真を見て、唸っていた。
「結衣ちゃんの写真って……なんかどれも寂しげだよね」
横から他の部員達が口々に挟んでくる。
「それが良いんじゃないの?」
「こんなに切ないの見ると感動するよね」
確かに私の撮った写真は楽しげな雰囲気のものは少ない。今、部長が見ている写真もどこかの狭い道で下に見える街を見下ろしている人の横顔の写真である。夕暮れ時でオレンジ色や藍色などの空。人物は逆光により、黒いシルエットになっている。
懐かしいような、悲しいような、切ないような。
「今回撮った写真もそうじゃない? ほら、この浅野君の写真」
部長が一枚の写真を取り出す。この間撮った野球部の練習試合の写真だ。 試合が始まるコールの前の場面。目を閉じ、上を向いている。浅野先輩。前からでもなく、横からでもなく、後ろから撮った。上には吸い込まれそうな深い蒼い空。
「じゃあ、またこれも入賞しちゃうね」
副部長が感心したように言う。
私は首を横に振った。
「私にはこんな写真しか撮れないんです」
「何を謙遜しちゃってるの、この天才フォトグラファーが」
部長が私の背中を叩く。
私は目を伏せた。
「私はそこまで天才じゃないんですよ……」
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