コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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びーすと・ていまー!
日時: 2012/11/04 20:57
名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: lyYROhnH)

おはこんにばんは、または初めまして、とろわという者です。
掛け持ちストで飽き性なのでどこまで続くか分かりません( ……が、頑張ります

今回はビーストテイマーを目指す女の子のお話です。
とろわお得意のファンタジーモノとなっております。それしか書けないとか言ってはいけない
なるべくライトに、そうしてほんわか和めるような話になる……予定です。ごめんなさい、鬱展開大好きなんでどうなるか自分でも想像がつきません


※注意書※

・荒し行為、中傷、過度な宣伝行為は控えてください。来た場合にはスルーします。
・とろわの作品、またはとろわが嫌いだという方はブラウザバック推奨。
・更新速度はまちまちです。のんびりと待っていただければ幸いです。


もくじ
>>2

きゃらくたーしょうかい
>>5<めいん>


おきゃくさま

†バーバー父さま
†カキコ君さま
†GUMIさま

Page:1 2 3 4



Re: びーすと・ていまー! ( No.19 )
日時: 2012/11/13 19:03
名前: バーバー父 ◆n7fYW9Kt9I (ID: Mi7T3PhK)

そうだよ!

カキコsみたいに普通にああ言えばよかったのに自分、何を思ってあんな事書き込んだんだか・・・。



エル兄ぃのカッコいい所がもっと見たいよーっ!!
試験って事はちょっとした対戦みたいなのもあるのかな?


とろわの受験が終わったら、ゆまばいの方の続きも書いてもらおうかな・・・。冗談です。

Re: びーすと・ていまー! ( No.20 )
日時: 2012/11/14 16:22
名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: hts56g28)
参照: FateのプロトタイプのドラマCDが可愛くてにやにやw

>バーバーくん

冗談好きなとろわ相手にそんな気にしなくてもいいのよ(´ω`
バーバーくんの優しさがとても素敵だと思います。

エルにぃは立場的に序盤だとカッコいいシーンが少ないです。僕涙目
後半になるとエル△みたいになると、いいなあ……!
試験は様々なものがあるので、どうなるのかはお楽しみに〜。

ゆまばいもせかせいも、そうしてびすていの方も楽しく執筆していきますので応援宜しくお願いします。
いつもバーバーくんのコメントはあたたかくてとろわはとても幸せです(´∀`* お互いがんばりましょー。

だいさんわ ( No.22 )
日時: 2012/11/15 18:35
名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: PSM/zF.z)
参照: エルは称号【謎めいたマスターランク】を手に入れた!

とうとう、このギルド【サリエル】の、ビーストテイマー採用試験が始まる。
この試験は、ビーストテイマー——特に、【ゼロ】と呼ばれる、正式にビーストテイマーであると認められていない人間にとってはかなり重要なものになる。
ゼロと正式なビーストテイマーは、ビーストテイマーを管轄する総本部——【アッラー】が認めたか認めていないかによって区別される。
正式に認めてもらう為には、本部で年に数回ある試験に合格するか(こちらは少数派。本部はひとつしかないので遠くの国の人間には通い辛いだけでなく、ここで合格すると半ば強制的に本部の者にされてしまう為、自由度は少ない)、各国に存在するギルドの採用試験で合格するか(これが大半。ちなみに、ギルドによって合格基準はバラバラで、基準やら規則やらを目当てに他国から訪れる者も少なくない)のどちらかをしなければいけない。
そして俺————【マリア=ゲノワール】は、このギルドのNo.5のビーストテイマーであり、試験官の一人である。
俺は、今回視ることになる人間はどんなものなのかと期待に胸を膨らませるのと同じぐらい、疑念がぐるぐると渦巻いていた。
いつもはこんなことないのに、今回だけは違った。

その原因は、昨晩のこと……


「マリア。この二人が、今回貴女が視る受験者よ」
淡い桃色の髪を掻き上げて、俺に二枚の紙を差し出したのは、俺の親友であり、ギルド【サリエル】のリーダーのサポート役である【ヴェデーレ・シャルル】であった。
「ああ、ありがとうな」
俺はそれを受け取って、読もうとした直後、ヴェデーレは俺の頬をぷにぷにと指で押した。
なんだよ、と思ってヴェデーレの方に顔を向けると、ヴェデーレは、怒っているような、呆れているような表情で俺を睨んでいた。
……また、あれか。
「あのね、マリア。貴女はもう一人前のレディなの。なのに、その口調。男そのものじゃないの。もっとお上品な言葉遣いにしなさいって昔からずーっと言っているでしょう」
「別にいいだろう、女らしくなくても」
「そーれーにー。その格好! いい加減その男装やめなさい。体型とか顔の作りとかはいいのに、どうして止めないんだか……」
「仕方がないだろう。これと共にビーストと駆け回るには、これじゃあないと落ち着かない」
そう言って、俺は相棒——ブロードソードが大事にしまってある鞘をそっと撫でた。
「全く、ほんっとにこの事に関しては聞き分けがないんだから……」
お前は母親かよ、と脳内でツッコミをいれて、ヴェデーレを見つめる。
俺よりも一回りぐらい背が低い彼女の絹のような繊細な髪は、そういうものに疎い俺でも綺麗だ、と思う。俺は邪魔になるので伸びるとすぐ切ってしまい、いつも男のようなヘアースタイルになってしまう。まあ、別に髪なんて気にしちゃいないんだがな。メイクもほとんどしたことないし。
それだけでなく、紫苑色の瞳も宝石のようで美しい。昔から綺麗な奴だとは思っていたが、ここ最近でますます綺麗さに磨きがかかった気がする。
「————りあ、マリア?」
「——っ、ああ、すまない」
首をかしげるヴェデーレの様子ではっと我にかえり、俺は資料を読んだ。
一人はここよりも北西の国【ブラン】の者らしい。あちらの方にもギルドはあると思うが……恐らく、ここの方針に惹かれてやってきたのだろう。そういうことは少なくないから、俺はただ黙って項目を読んだ。
しかし、もう一人の方には——思わず声を上げてしまった。
「なあ、ヴェデーレ、これって、」
俺はとある項目を指差しながら、ヴェデーレの名を呼ぶ。
「どうしたの……って、」
ヴェデーレは俺の肩から首をひょっこりと出して覗きこむと、不思議そうな表情で俺の顔を見つめた。
「これ……って、どういう、こと?」
ヴェデーレが首をかしげてそう言った後、俺は黙ってとある項目を指差した。
俺が指差した場所は、名前と出身地の部分。
そこには、こう書かれてあった。

【国:フライハイト スペアミント村出身】

ここは、俺の出身地と同じであった。

しかし、それだけならまだいい。知らない間にビーストテイマーの資格が在るものが生まれていたのか、と喜べる。
しかし、名前に違和感があった。

【名:コメット・プリエール】


——プリエール、それは俺【も】よく知っている人の名だ。
しかし、娘がいたとは知らなかった……いや、実際には————

……どうして、この名前が?



二時間ほどかけて歩き、わたしたちはぎるど【さりえる】のほんきょちで、ふらいはいと第二の都市、【くれない】に到着しました。リネアは途中までいっしょにいましたが、どうやら街中が落ち着かないようで、いったん別れて、今はエルにぃと二人きりです。
道中で野性のびーすとさんがおそってきたりしましたが、エルにぃとそのびーすとさんが次々とたおしていったおかげで、ケガもチコクもなく、むしろ少し時間にヨユウがあるぐらいです。
そして今、わたしたちは真っ先にぎるどへ向かい、受付をしてから街をぶらぶら歩くことになり、エルにぃが受付をしにいっている間、わたしはひとり、ゲンカンの前で待っています。
特にすることもなかったので、わたしは荷物チェックをしていると、「あっ」いくつか木の実がはいった袋を落としてしまいました。
「あう、あれっ」
袋はころころと坂道をすべりおちるかのように転がっていき、わたしはそれをおいかけます。

すると、袋は女の人の足元で動きを止め、女の人はそれを拾いあげました。
「——なんですの、これ」
「あ、それ、わたしのです」
いぶかしげに袋を見つめる女の人に声をかけると、女の人は目を細めてわたしの顔を見ました。
「あら、そうでしたの。……物を落としたらいけませんわよ。もし、相手がこそ泥だったらどうするんですの」
「ありがとうございます!」
やれやれといった表情で、わたしに袋をわたしてくれました。わたしはぺこりと頭を下げてお礼をいいました。
「ところで、貴女は受験者の方の妹さんですの? きっと心配してきますわよ。戻ったらどうですの?」
その言葉に、わたしはいっしゅんハッとしましたが、わたしは女の人の目をまっすぐ見て、
「いいえ、わたしも受験を受けにきました」
と言いました。
すると、女の人はどぎもをぬかれたような顔で、ぼうぜんとしました。
しばらくすると、目付きがきびしいものに変わり、わたしの顔をじっくりと観察しているような目で見ました。
「……貴女、年齢は?」
「今年で、十歳になります」
そう言うと、目付きはよりするどいものへと変わりました。
「——貴女、自分の言っていることがわかっていますの? いくら受けられる最低の年齢が十だからと言って、その年齢で受けようと思う人間なんてそうはいませんわ。親元を離れ、厳しい修行に耐えて、お金を稼がなければいけない、過酷なものなのですわよ。そんな年で、」「わたしは本気です」
わたしはきっぱりと言いました。
「わたしはまだ小さいし、他の方にもメイワクをかけてしまうことだってきっとあると思います。……それでも、わたしはエルにぃ(あのひと)のようなりっぱなびーすとていまーになりたい。——夢を現実のものにしたいんです」
女の人はしばらくだまっていました。
そうして、目をそらして、ぼそりとつぶやきました。
「————現実は厳しく、いたくてつらい。そんなことも知らないような年の子に、分かる筈ありませんわ……」
なんと言ったのかはうまく聞き取れませんでしたが、ぎゅっとにのうでをにぎりしめている姿と、さびしげな表情は目に痛いほど焼きつきました。
「……まあ、現実の厳しさを痛感すればよいですわ。夢見るだけじゃうまくいかないことを」
「はい。お互いがんばりましょう」
「……貴女ね、自分の言われたことを理解していますの?」
「そのつもりです。でも、あなたみたいな優しい人が落ちてしまうのは、悲しいことだから」
「はあ、どうしようもない、ばかなこですわね。でも、私は絶対に合格してみせますわ。精々、貴女も頑張ることね」
「はい!」
わたしがそう元気よく返事をすると、あきれた顔をして、すたすたとどこかへ行ってしまいました。

「……また、会えるといいなぁ」
わたしはその背中を見ながら、すなおにそう思いました。

だいよんわ ( No.26 )
日時: 2012/11/22 18:28
名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: gz2yfhrF)
参照: コメットは称号【ばかなこ】を手に入れた!

しばらくして、エルにぃはよろよろとこちらに向かってきました。
どうしたのかと思ってよく見てみると、エルにぃのほほには——なぐられたあとがありました。
「エルにぃ! 大丈夫ですか!?」
わたしがそうさけぶと、エルにぃは苦笑いしてこくりとうなずきました。
「あはは、お兄ちゃんは全ッッ然問題ないよ。へーきへーき」
「問題がなかったら、そんなケガをおうはずがないですっ、くるーっ」
「て言われてもなぁ……」
言葉をにごすエルにぃをコーギの目で見続けている内に、エルにぃがやれやれといった表情になりました。
「ん、あー……じゃあ、正直に話すとするよ。殴り合いの喧嘩をしている輩がいてね、それの仲裁をしようとしたら、見事にこの通り」
エルにぃは自分のほほを指差しながら言いました。
「それは、大変でしたね……」
「でも、仲直りしたみたいだから問題ないさ。ってか、別に俺の事はいいだろう。肝心なのはこれからのコメットのことだ」
そう言うと、エルにぃはまっすぐとわたしの目を見ました。わたしも同じようにみつめます。
「後一時間したら、このギルドの近くの森で試験を行うらしい。内容はわからないが、きっとコメットならなんとかなると思うぞ」
「一時間後……どきどきします」
そう言うと、エルにぃがゆかいそうに笑いました。
「ったく、そんなに緊張しなくても平気だよ。——そうだ、なんか旨いもんでも食うか。ここの名物の山菜クレープは病みつきになる味だぜ」
そう言うと、エルにぃはニッと笑ってわたしの腕を引っ張りました。
「一時間なら多分、間に合う筈だ。なんせすぐだしな。……お前にとっては初めての都会探索なんだ、楽しんでいこーぜっ」
「はいっ!」
エルにぃの笑顔のおかげで、キンチョーが少しほぐれたような気がしました。



「これが、この街のシンボルマークともいえる、時計台だ。でけーよなぁ」
「うわー、ほんとにおっきいですね!」
わたしは時計台をじっと見上げていました。
レンガ造りのオシャレな時計台は、確かに一番目立っています。太陽光をあびて金にかがやく秒針が、チクタクといそがしそうにまわって、この街のひとびとに時刻をお知らせしていました。
「で、あっちにある店の山菜クレープが一番人気なんだ」
「そうなんですかー……。エルにぃ」
「ん?」
「エルにぃは、この街についてくわしいんですね」
そう言うと、エルにぃはいっしゅんギョッとしたように目を丸くしました。
「え? ——あ、ああ、何度が任務で訪れたことがあるからな。そして、よくクレープを食べてた」
エルにぃは目を細めて時計台をみつめました。
「懐かしいな……。あいつら、元気にやってっかなぁ」
きっと、前にショゾクしていたぎるどのめんばーさんのことを想っているのでしょう。その、やさしげな横顔からなんとなく伝わりました。
——エルにぃはますたーらんくのびーすとていまーであることは教えてくれたのですが、それ以外は何も教えてくれません。どこのぎるどにいたのか。どんなびーすとさんがパートナーなのか。……どうして、今はびーすとていまーのお仕事をイチジキューカしているのか。
「——エルにぃ?」「あー、クレープクレープ。早く買って、さっさとくっちまおうぜ」
そういうと、エルにぃはポケットに手をつっこんで、お金を取り出しました。
「その……わりぃけど、買ってきてくれないか? コメットの分だけでいいからさ」
エルにぃは髪の毛をくるくるといじりながら、申し訳なさそうに言いました。
「ええ、大丈夫ですよ。でも、エルにぃはいいんですか?」
「ああ、俺はいいよ。ほぅら、早く買っておいで」
「わかりました!」
わたしはすたすたとお店に向かって走りました。


「山菜クレープって、こんなかんじなんですねぇ」
わたしはできたてホカホカの山菜クレープのにおいをクンクンとかぎながら、エルにぃにそう言いました。
「ああ。——しっかし久々に見たなぁ。なんも変わってないのな。それがまたいいんだろうけど」
ほら、食べな、とエルにぃに言われて、わたしは一口ほおばりました。
口の中に広がる、あまからいソースの味と、山菜とお肉がゼツミョーにからみあっていて、わたしはすっかり気に入りました。
「くるるー! とってもおいしいです!」
「そうかそうか、よかったよかった。なんでも、東方の国にある【お好み焼き】と味が似ているっていうぜ」
「オコノミヤキでふか。なんだかほいひほうえふねぇ」
「っと、口の周りにソースがついてるぞ。お兄ちゃんが拭いてやるな」
「あいはほーほあいはふっ」
エルにぃはハンカチでごしごしとわたしの顔をふいた後、時計台の方を見ました。
「……ちょうどいいぐらいだな。飲み物買ってくるな。それ食べ終わったら、集合場所へ向かおう」
「はいっ」
わたしはコクリとうなずいて、山菜クレープをのこさず食べました。



「どうやら、ここみたいだな」
エルにぃについてしばらく歩いていると、木々がうっそうと生いしげる、おっきな森——ツーショウ【まいかの森】にたどり着きまました。
耳をすませてみると、鳥型のびーすとさんがあちこちで鳴いています。さきほど合流したリネアも、それにつられて鳴いていました。
「ここで、わたしの運命が決まるのですね」
わたしがそう言うと、エルにぃはクスクスと笑いました。
「くる、なにかおかしいこと言いましたか?」
「っく、そりゃあ大袈裟だって、チャンスはまだあるんだから——さて、お兄ちゃんは一旦退散するよ」
そういうと、エルにぃはわたしの肩をぽんとたたきました。
「頑張れ」
「がんばります!」
わたしの表情をみて安心したのか、にこりとほほえんで、エルにぃは来た道を引き返していきました。
——絶対合格します、わたしをしんじてください。エルにぃ。
わたしは心の奥底でそうつぶやきました。
——その直後に、背後からカサカサと草がゆれる音がしました。
わたしははっとふりむくと、そこには——先程わたしが落とした木の実ぶくろを拾ってくれた、女の人が立っていました。
そして、女の人によりそうようかのように、犬型のびーすとさんもいました。おそらく、わたしとリネアのような、正式ではないものの、心が通じあっているパートナーさんなんだと思います。
「あ、先程の……」「わたくしを……、私を馬鹿にしているんですのッッ」
女の人はそうさけぶと、わたしをキッとにらみました。
「こんな小さな子供相手に、私が? こんなのふざけているとしか思えませんわ。こんなの、私の努力を馬鹿にしているとしか思えませんわ!!」
わたしはビクリと体をふるわせました。
あまりのけんまくに、わたしは何も言えなくなって、こわさとさびしさがおそいかかってきました。
リネアはそんなわたしを心配してか、そっとよりそいました。
こんな時にエルにぃがいたら……。
そう、何かにあまえてしまいたくなってしまったしゅんかん、りんとした声がひびきわたりました。

「馬鹿になんかしていないよ」

わたしも女の人も、同時に声の方向へ体を向けると、そこには馬に乗った——まるでおとぎばなしに出てきそうなフンイキの方がしかいにうつりました。
「これは試験だ。年齢や生い立ちなんて関係ない。……それに、君はうちのギルドの方針をわかっていない訳ないだろう?」
馬からユーガにおりて、その方は近づいてきます。
「ですが、これって……」
「うちは実力主義だ。できる人間だけが上へ上り詰めていくところで、年齢などなんら問題もないだろう」
そう言われて、女の人はキッとくちびるをかみしめました。
「後、試験前からトラブルを起こすのは違反行為だ。それ以上は止めてもらおう。——これは、ギルド【サリエル】のメンバーであり、今回の試験の試験官、【マリア=ゲノワール】の命令だ」
そう言うと、マリアさん——男の人にも見える、たんせいな顔立ちの女の人は、口元にえみをうかべました。
「……まあ、そうならない方がお互いの為にもなるだろう。それ以上は控えてもらえると助かる」
そう言うと、女の人——今回の試験をいっしょに受けるライバルさんはフクザツそうな表情で「……すみませんでした」と呟いて頭を下げました。

だいごわ ( No.30 )
日時: 2012/11/24 23:21
名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: RADHLI//)
参照: マリアは称号【試験官】を手に入れた!

「さてと、改めて自己紹介でもしようか。俺は——まあ、先程名乗ったが、【マリア=ゲノワール】。【プラチナランク】のビーストテイマーだ」
「ぷらちならんく……。確か、上から三つ目のランクですよね!」
「その通り。まあ、改めて説明するほどの事じゃあないが一応。ビーストテイマーにはランクがあって、【ブロンズ】【カッパー】【シルバー】【ゴールド】【プラチナ】【ダイヤモンド】そして【マスター】の計七つある。で、俺はプラチナランク。俺の年齢は19なんだが、この年でゴールド以上はまあ、結構珍しいだろうな」
「すごいですねー!」
「凄いどころじゃありませんわ。プラチナランクの方に視てもらえるだなんて感激です」
わたしたちがそう言うと、マリアさんはてれたように笑って頭をかきました。
「あはは……。困ったな、褒められるのは慣れてないんだ」
マリアさんはそう言うと、隣にいた馬型のびーすとさんをよしよしとなでました。
「で、こいつは【オシュヒキ】。外見は綺麗なもんだが、実際は人を水に引きずり込んで食べ尽くす恐ろしいビーストだ。俺以外の人間が乗ったら殺されるから気を付けろよ」
「ひえええええええええ!?」
わたしはハンシャテキに数歩後ずさりしました。いや、そんな風には見えないんですよ、本当に。
でも、よく見てみると、おしゅひきさんのたてがみにかいそうがからみついていたり、毛はうっすらとした水色だったり、ひとみはすいこまれるような青色だったりと、ふつうの馬型びーすとさんとはどこか違っていました。
「確か、オシュヒキはSランクのビーストでしたわよね」
ライバルさんの言葉に、マリアはさんは目を丸くしました。
「おお、よく知ってるな。その通りだ」
「……らんく?」
わたしは首をかしげると、マリアさんは説明してくださいました。
「じゃあ説明しようか。——ビーストにはランクがある。それは強さや数などを基準につけられていて、D、C、B、A、S、SS、SSSの七つに分けられている。Dランクは人にはあまり害がないビーストのことで、主に家畜などがこれにあたるな。Cからは戦闘向きのビーストになるが、俺達人間が住む場所の近くに生息するようなビーストは低ランクのものだな。ランクが上がると珍しさもあがる。特にSS、SSSランクは一体しかいないと言われるレア物だ。珍しいだけでなく強さも知能も半端じゃないから、そうそう仲間にできるもんじゃあないがね」
わたしはへぇー、と心の中でつぶやいて、すぐさまメモちょうにメモします。
「で、Sランクのビーストは世界に数体しかいない貴重なもんだ。一番大事な、俺の相棒だ」
そう言うと、おしゅひきはうれしそうに鳴き声をあげました。
『ああ、私もそう思っているよ、相棒』
その声をきいて、わたしもうれしくなりました。

「さて、二人の名前を聞こう。——まず、君から」
マリアさんはライバルさんにそう言うと、ライバルさんは目を細めました。
「……私は【シャルロッテ・クロワ】です。北国【ブラン】から来ましたわ」
ライバルさん——シャルロッテさんはぶっきらぼうに言います。
「……で、こちらが私のパートナーの【アイスファング ウルフ】。名前は【エトワール】ですわ」
名前の通り、氷のように冷たくするどいきばを持つびーすとさん——エトワールは、リネアとにらみあいをしていました。
「その、先程は失礼しましたわ。……でも、私は手加減するつもりはありませんから、そのつもりで」
シャルロッテさんはわたしの目をじっと見て、そう言いました。
わたしは、その目を見て、シャルロッテさんの勝利へのシューネンをまざまざと感じました。
「……以上でいいかな。じゃあ、君も」
そう言って、マリアさんはわたしに自己紹介をするよううながしました。
しかいがぶわーっと真っ白になって、一気にドキドキが速まったような気がしましたが、ぐっとこぶしをにぎりしめて、口をぱくぱくと動かします。
「わ、わたし、は、【コメット・プリエール】です。で、こちらがわたしのパートナーの【ぶるーあいず ほーく】のリネアです。今日は、一日、よろしくお願いいたしますっ!」
わたしは勢いよく頭を下げていうと、マリアさんがくすくすとわらいました。
「なんだか、二人とも個性豊かで面白いな。——まあ、俺からも宜しく頼む」
マリアさんのえみを見て、少し落ち着きをとりもどしました。


「では、今回のギルド【サリエル】のビーストテイマー採用試験の説明を始める。今回の試験のテーマなんだが……」
テーマ、という言葉に首をかしげつつ、マリアさんの話を聞いていると、マリアさんはわたしとシャルロッテさんの顔を見て、不安そうな表情になりました。
「——まあ、簡単にいうと【協力】だ」
「…………あの、意味がわからないのですが」
「そりゃ俺が言いたいぐらいだよ、なんで協力なんだよ馬鹿じゃないのかと問い詰めたいぐらいなんだが協力だ」
マリアさんは頭をかかえてそう言うと、シャルロッテさんはわたしをちらりと見て首を横にふりました。
「どうして、こんな子と、協力なんか、」
「ボス……っと、うちのギルドのリーダー曰く、「争ってばっかじゃ芸がないだろう」……だとさ。まあ、別にずっと協力しろっていう訳じゃあないがね。で、ここから先は具体的な説明をするぞ」
わたしもシャルロッテさんも、マリアさんの言葉にじっと耳をかたむけます。
「今回の目的は、この森の奥地にある、【オオリンゴの実】を手に入れることだ。テーマが【協力】なので、基本的には二人で協力して奥地まで進んでもらう。俺は着いていくが、万が一の時以外は手を貸さないので自分達で考えて行動するように。でも、その実は稀少価値で、一つの木に一個しか実らないので、一人しか手に入れられないことになる」
「ということは……」
わたしは胸に手をあてました。
「どちらかが脱落する、ということになるな。これはどちらかが譲るのもよし、早い者勝ちで取るのもよし、バトルで決めるのもよしと、特にルールは決めない」
そう言った後、マリアさんはわたしたちの顔色をうかがいました。
「……ちなみに、制限時間は二時間。時間が過ぎたら二人とも失格。で、そのお連れのビーストなんだが」
マリアさんは少し気の毒そうな表情になりました。
「そいつらと試験を受けることは禁止とする」
「えぇっ!?」「なッ!? ……じ、じゃあ、どうするんですの?」
あわてふためくわたしたち。だって、それじゃあ……。
「でも、ビーストが使えないんじゃビーストテイマーの試験が成り立たないからな。で、これを使う」
そう言うと、マリアさんはカバンから小さな青の玉を取り出しました。
「これって……」
「これは【フレール】。主に初心者のビーストテイマーが、ビーストと契約する際に使用するもんだ。試験用だからサイズは小さいが、正真正銘の本物だ」
ふれーる……。確か、一度エルにぃが教えてくれました。
ふれーるは、びーすとていまーとびーすとさんのキズナを結ぶナカダチをしてくれるモノです。ぱーとなーびーすととよばれる、ずっといっしょに行動できるびーすとさんには使う必要性はありませんが、そのダンジョンやフィールドでしかなかまにできないびーすとさんにはとても重要なものになります。
ごーるどらんく以上のびーすとていまーさんには必要がなくなるそうですが、それ以下のびーすとていまーさんにとっては、ふれーるは一番のヒツジュヒンです。
ぱーとなーびーすとは、ごーるどらんく以下は一体しかケーヤクできませんが、その場限りのびーすとさんの場合、三体から五体ぐらいまでケーヤクできるので、冒険には欠かせないものなのだそうです。
「まあ、使い方の説明をするよりも、見た方が分かると思うから、渡す前に俺が手本を見せるな。ここら辺にはあまりいないから、少し先に進もう」
マリアさんの言葉にコクリとうなずいて、わたしは後を追いました。


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