コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- マジックファイトRPG
- 日時: 2013/03/20 20:57
- 名前: N海 (ID: nLPrrFyW)
≪CHAPTER0 4人の出会い≫
第1話
○ナオヤ○
その電話は、夕方5時にかかってきた。
森上尚哉(もりがみ なおや)は一人、部屋の机で勉強していた。
高校数学の予習だ。
ナオヤは、光桜高校の入学式を明日に控えていた。
—彼は頭脳明晰で、勉強に関してはどこも欠けていないと言える程の
天才だ。この学校にもなんと全教科満点で合格したのだ。—
そんな中、携帯に電話がかかってきた。
知らない番号だ。
とりあえず出てみる。
「・・・もしもし」
「お前、森上尚哉だな」
やっぱり、知らない人っぽい。
なんで、僕の名前知ってんだろ。
でも、どこかで聞いたことがある声だった。
「・・・はい、僕は森上ですが。どちら様ですか」
「そんなこと、どうでもいい。それより、今すぐ。今すぐだ。
俺が指示する方向へ向かえ。重要な話がある。」
「えっ・・・いきなり言われても!」
「いいから、来い!お前の他に3人の奴も呼ぶつもりだ!」
「ぼ、僕あなたのことを知り・・・」
「とにかく来い!」
「はっはい、わかりました!」
電話の声の圧力におされて、思わずOKしてしまった。
どうしよう・・・。本当に、まずい・・・。
知らない人の電話に出ない方がよかったな・・。
焦りと不安がナオヤの頭をよぎる。
こうなったら、無理やり切ってしまおうか。
そうだ、その手だ!何で思いつかなかった。
この番号は、着信拒否にすればいい。
電話を切ろうとした時、下の階から母の声がした。
「あんたー、もうすぐ夕ご飯よー。」
あっ、もうこんな時間なんだ。
今日は、僕の大好きなエビフライだ。
「今行きまーす」
母に言ったつもりだった。
「よし、今から指示するぞ!」と電話の声。
あっ・・切るの忘れた・・・しまった!!
今すぐ切ろう!!
だが、通話終了ボタンを押しかけたとき、ナオヤは思った。動作がピタッと止まった。
この声、やっぱり聞き覚えがある。
確かに、いつか聞いた声だ。
いや、それだけじゃない。
こいつに、会った。会ったんだ。
それにさっき、こいつこんなことを言った。
—お前の他に3人の奴も呼ぶつもりだ!—
前にこいつに会った時、確か他に3人いた気がする。
僕と、同年代だった。
行かなきゃいけない、なぜだかそんな気がしてきた。
【相手は誘拐犯かもしれない】とか、そういう
ことは思わなかった。
そんな考えは幼稚だ、と自分で自分を軽く笑った。
気づいたら、ナオヤは机を立っていた。
ナオヤは、携帯を片手に部屋を出た。
「ごめんお母さん、今からちょっとノート買いに行ってくる」
「あら、すぐ帰らないとエビフライ冷めちゃうわよ。
早めに帰ってきなさい」
「はーい」
生返事をして、ナオヤは外へ走っていった。
ナオヤの冒険が、はじまった。
わかっていた、自分と同じ行動をしている
人がいることは。
- マジックファイトRPG ( No.3 )
- 日時: 2013/03/21 11:11
- 名前: N海 (ID: nLPrrFyW)
第4話
○リサコ○
その電話は、夕方5時にかかってきた。
暁里沙子(あかつき りさこ)は一人、ゲームセンターで遊んでいた。
ゲームは大好きで大得意だ。
リサコは、光桜高校の入学式を明日に控えていた。
—彼女は受験勉強中もゲームばかりしていて、あまり勉強は
していなかったが、何故か普通に合格できた。—
そんな中、携帯に電話がかかってきた。
知らない番号だ。
とりあえず出てみる。
「・・・はーい、誰ですかー?」
「確かに暁里沙子だな、お前」
あー、やっぱり知らない人ね。
アタシの名前知ってるとか、ストーカーみたい。
でも、どこかで聞いたことがある声だった。
「・・で、何の話なんですか?」
「今から、俺が指示する方向に向かえ。重要な話がある。」
「あー、ごめんなさい。今ゲーム中なので」
「いいから、来い!お前の他に3人の奴も呼ぶつもりだ!」
「あ、あんた何者よ?しつこいわね!」
「しつこいと言われようと、お前を呼ぶんだ!」
「あんたみたいな人、女にもてないよ」
「・・・くっ、お前・・・」
やっと怯んだみたいね、こいつ。
・・あっ、知らない間にゲームオーバーになってる!?
・・こいつのせいよ。もうウンザリするわ・・。
激しい怒りがリサコの頭をよぎる。
もう無理やり通話を終了しようかな。
そうよ、その手よ!何で思いつかなかった。
この番号は、着信拒否にすればいいのよ。
ちょうどその時、リサコに店員が近づいた。
「もう閉店時間ですよ」
ここのゲームセンターは閉店が早いのだ。
同時に電話の声が「とにかく来いよ!?」と言った。
「わかりました、今出ますから」
リサコは走ってゲームセンターを出た。
「よし、今から指示するぞ!」と電話の声。
あぁっ!こいつに、勘違いされたわ!
アタシって愚かね・・、早く切らなきゃ!
だが、通話終了ボタンを押しかけたとき、リサコは思った。動作がピタッと止まった。
この声、やっぱり聞き覚えがあるわ。
確かに、いつか聞いた声よ。
いや、それだけじゃない。
こいつに、会った。会ったのよ。
それにさっき、こいつこう言ってたわ。
—お前の他に3人の奴も呼ぶつもりだ!—
前にこいつに会った時、確か他に3人いた気がするな。
アタシと、同年代だった。
行かなきゃいけない、なぜだかそんな気がしてきた。
【相手は誘拐犯かもしれない】とか、そういう
ことは思わなかった。
いや、例えそうでも、その時はすぐ抜け出してやるんだから!
気づいたら、リサコは近くの横断歩道にいた。
リサコは、携帯を片手に、青になった横断歩道を渡りだした。
渡ってすぐそこの公園の前に地図があった。
どうやらここは自分の家とは反対方向らしい。
その辺をたまたま通りかかった知り合いのおばさんに、どうしたのと聞かれても
「ちょっと忘れ物しちゃってて」
と言い残し、リサコは先へ走っていった。
リサコの冒険が、はじまった。
わかっていた、自分と同じ行動をしている
人がいることは。
- マジックファイトRPG ( No.4 )
- 日時: 2013/04/06 15:31
- 名前: N海 (ID: nLPrrFyW)
第5話
○ナオヤ・ヒヨリ・シュウ・リサコ○
ここは、東京の真ん中にある「はず」なのに、
誰にも知らされてない池。
近くにはキャンプ場があるのに、なぜか誰も寄ってこない。
昔からある、不思議な不思議な池。
でも今日は、いつもと違った。
4人の少年少女が、この池にたどり着いていた・・・。
太陽が沈むころに・・・。
最後に着いたのはナオヤだった。
電話の主とは冷静に連絡をとりあっている。
「・・・本当に、この池なんですね」
「ああ、そうだ。ちょっと待ってろ。もう電話を切ってもいい」
「・・・わかりました」
切ると同時に、ナオヤは3つの人影を池のまわりの遠くの茂みに見つけた。頭が真っ白になって、少し怖くなった。
「・・・あのー、誰かいるんですかー」
勇気を出して、大声で叫んでみた。
「わぁっ」
「きゃあっ」
「いやぁっ」
3つの叫び声が聞こえた。3つの茂みも大きく揺れた。
ナオヤは、電話の主から言われた
—お前の他に3人の奴も呼ぶつもりだ!—
を思い出した。
わかった、今のは、この3人じゃあ・・・。
「すみませーん、もしかして変な男に、ここに呼び出されてませんかー!?」
今度は叫び声は聞こえなかった。しばらくして、3つの茂みが小さく揺れ、3人の同世代の少年少女が出てきた。
1人の長身な少年がこっちに猛ダッシュで走ってくる。
そして突然抱きついてきた。
「あーよかったーやっぱり他に人はいたんやー」
泣いているようだった。
「・・・ねえ、ちょっと・・・強く抱きすぎ。きついよ・・・」
「おっと、すまんすまん。」
少年はナオヤから離れた。そして笑顔でこう言った。
「俺、シュウっていうねん。家でアニメ見とったら、突然
呼びだされたんや。大阪から来たばかりやから、ゆっくり
しとったのに、迷惑なヤツやな」
シュウはそれからナオヤの顔を覗き込んで
「お前は?」と尋ねた。
「僕はナオヤ。僕も勉強中に呼ばれて。」
「勉強しとったのか、えらいな」
「ハハハ、別にえらくも何ともないさ」
楽しく会話していると、突然怒鳴り声がした。
「あんたたち、アタシもいるのよ!」
2人が振り返ると、ポニーテールの少女が腕組みをして、立っていた。
「き、君の名前は?」ナオヤがおそるおそる尋ねる。
「・・・リサコ。リサコだけど」無愛想に答える。
「へぇ、リサコか。リサちゃんと呼んでええやろか?」とシュウ。
「リサコでいいわよ!!そんな呼ばれ方されたくないわ」
リサコは不機嫌な表情で強く言った。
ただ、少し照れているようだった。
シュウは黙り込んだ。
「・・・あ、あの・・・、私もいるんだけど・・・」
すごく小さな声が聞こえてきた。
声の方向を見ると、小柄なショートカットの少女がいた。
「あ、ああ、ごめんね、気づかなくて」ナオヤが気づかう。
「い、いいんだ。私は、ヒヨリ。
えーっと、私のことは、ヒヨちゃんって呼んでいいから」
するとさっきまで硬い表情だったリサコがいきなり明るくなって
「じゃあそう呼ぶわ!」と言った。
「・・・ほんとうに?」
「ホントよ!!」
「・・・ありがとう・・!」
ヒヨリの表情も少し朗らかになった。
まさにこのときだった。
ナオヤの頭に、一瞬。
ほんの一瞬だけ。
残像のようなものがよぎったのだ。
—昔の記憶が、蘇っているようだ。
・・ううっ・・・何だよ・・・・
・・ヒヨリ・・シュウ・・リサコ・・
初めて聞く名前のはずなのに・・・
初めて知る人たちのはずなのに・・・—
いいところで、記憶は途切れてしまった。
思いだせた記憶の風景も乱れてはいたが。
(もっと知りたい・・
早く解決したい・・
・・でも、こんな状況で考えられねぇ・・・
この3人に聞いても、迷惑なだけだな・・・
今は・・やめとくか・・・)
でもナオヤは知らなかった。
同じ時、他の3人も、似たことを考えていた。
(・・何か、心当たりがある気がしたな・・・)
(・・お、俺がこの3人に、覚えがあるだと・・!?)
(・・う、知らないのに、何故・・・)
勿論他の3人もこのことについて言わなかった。
お互い、知らないということだ。
ナオヤは気を取り直して、背筋を伸ばした。
「それにしても、一体何なんだこれは?なんか、その、怖いな・・・」
「・・確かにちょっと怖いわ。でも・・、今はすることがないね」とリサコが続く。
「・・・俺、来んじゃなかった」とシュウ。
「私も、同じだよ」とヒヨリ。
4人は再び深刻な顔になって、黙り込んだ。
さっきナオヤ以外の3人が隠れていた遠い茂みから、
謎の男たちが、この様子を見ていた。
「・・・よし、そろそろ突撃するか」
「・・・ラジャー」
男たちは、4人めがけて走って行った。
- マジックファイトRPG ( No.5 )
- 日時: 2013/04/05 17:53
- 名前: N海 (ID: nLPrrFyW)
第6話
○ナオヤ・ヒヨリ・シュウ・リサコ○
最初に異変に気付いたのは、リサコだった。
突然青ざめた顔をして、池の茂みの方をさっと指さした。
「・・・みんな・・・」
「・・・!?どうしたの、リサコちゃん」
「ほら、あっち見てよ、あっちよ、あっち!!!」
4人が後ろを振り返った時は、もう遅かった。
5人の、黒いスーツを着た男たちが、突然襲いかかってきた。
「お、お前ら何するねん」
シュウが反抗するが、男たちは動じない。
「ぎゃあーっ」
4人の叫び声が池じゅうに響きわたるが、誰にも気づいてもらえない。
ここは、隔離された世界と化している。
4人はすぐさま逃走を試みたが、やがて男たちに取り押さえられてしまった。
茂みの陰にかたまるナオヤたちを、男たちが円になって取り囲む。
男たちの胸元で何か光っている。
・・・バッジだ。しかも、みんな形が違う。
1人はスペード、1人はダイヤ、1人はクラブ、1人はハート。
そして、もう1人はジョーカーの形。
・・・トランプの模様だ。
何らかの目印だろうか。
しばらくすると、ジョーカーの形のバッジをした男が円を抜け、
池の方を向いて、こう言った。
「・・・仕掛け人は、俺だ」
4人はこの声を聞いて、すぐ気付いた。
この人だ、電話の主は。
「あの・・・、やっぱりこれって、誘拐なんですか・・・?」
ヒヨリが少し焦りながら言う。
「誰が最初に誘拐などと言った。俺はお前たちに話があるんだ。」
男はまたこっちを向いて反論した。
「・・・お前たちは選ばれし者だ。
お前たち、明日、光桜高校に入学するだろう」
「ああ、僕はそうですけど・・・」
「えっ!?」
ナオヤの答えに、3人はビックリした。
「・・・ナオヤくん、私もなんだけど」
「俺もや・・」
「アタシだって・・」
そこに割り込むように男は呟いた。
「・・・ようこそ、RPGの世界へ。
俺の手下が付けてるバッジを飲めば、お前らは見知らぬ世界に
いるだろう。大丈夫だ、バッジとはいっても、実はラムネだからな。
さあ、冒険を楽しんでくるといい。
・・・こうなるのも、仕方はないんだ。」
この言葉が言われたと同時に、4人を取り囲んでいた残りの男たちが、
胸元に光っていたトランプの模様のバッジを外し、
無理やりそれを4人に飲ませようとし始めた。
「ぎゃあっ!!」
スペードのバッジの男は、ナオヤの肩を掴んだ。
「な、何だよ、RPGの世界って、僕は・・・」
抵抗するナオヤの喉に、バッジが通った。
しょっぱい味がした・・・。
ナオヤは気が遠くなって、倒れてしまった。
ダイヤのバッジの男は、ヒヨリの肩を掴んだ。
「やめてください!私には無理です・・・」
抵抗するヒヨリの喉に、バッジが通った。
すっぱい味がした・・・。
ヒヨリは気が遠くなって、倒れてしまった。
クラブのバッジの男は、シュウの肩を掴んだ。
「お、俺は冒険する暇なんか・・・」
抵抗するシュウの喉に、バッジが通った。
からい味がした・・・。
シュウは気が遠くなって、倒れてしまった。
ハートのバッジの男は、リサコの肩を掴んだ。
「何すんのよ!アタシに気安く触んな!」
抵抗するリサコの喉に、バッジが通った。
あまい味がした・・・。
リサコは気が遠くなって、倒れてしまった。
全員の手から、持っていた携帯電話が落ちた。
睡眠状態の4人を見ながら、
5人の男は一斉に「任務完了」と呟き、森をゆっくりと出ていった—
to be continued...
- マジックファイトRPG ( No.6 )
- 日時: 2013/04/06 15:48
- 名前: N海 (ID: nLPrrFyW)
≪CHAPTER1 マジックファイトの始まり≫
第7話
○ナオヤ・ヒヨリ・シュウ・リサコ○
目が覚めると、知らない森の中にいた。
太陽が、地面をじりじりと照らしている。
4人は、日蔭の近くで寝そべっていた。
「・・・ここは、どこなんだ?」
ナオヤが眠そうに呟く。
ゆっくりと立ちあがると、体に違和感を覚えた。
「体が・・・重いな・・・んっ!?」
ナオヤはその違和感の正体にすぐ気付いた。
「みんな、ちょっと立って、立って!」
この声で、残りの3人もふらふらしながら何とか立ちあがった。
「・・ど、どうしたの、ナオヤくん」
ヒヨリが一番に尋ねる。
「ふ、服が違うぞ!」とナオヤ。
「え、うそっ・・・、あっ!!」
ヒヨリたちは愕然とした。
「何や、この奇抜な服装!ゲームの戦士みたいや!」
「やっぱり、アタシたち、その、えーっと・・・
謎の場所に、来ちゃったんじゃないの?」
「そ、そんなぁ・・・。」
4人はふと、4つの携帯電話が近くに落ちていることに気が付いた。
「あ!これ、アタシたちのケータイよ!」
リサコがそれらを持って他の3人に渡した。
「よかった・・・、これがあって。やっぱりここは普通の世界だと思うなぁ」
「・・そうよ。あの男たちはウソ言ってんのよ。
『RPGの世界』なんて、ないに決まってるじゃない」
4人はそれぞれのケータイを大事そうに握りしめた。
シュウが時間を確認する。
「・・・午前10時40分か。ちーとばかし寝すぎたかな。
・・・・・ん、んっ!?」
シュウは、何かに気づいたようだ。
「なっ、なあに。そんな目を丸くして・・・」
リサコがシュウの方へ少し踏みよる。
「ここ、圏外や!GPSの地図も表示されへん!」
「はぁっ!?・・でも、圏外って言っても、国内の圏外ってことじゃないの?」
「ちゃうちゃう・・。俺の携帯は、圏外でもGPSが使える機種なんや」
「・・・だったら壊れたんじゃない?」
「ああっ、もう何もわからんわ!!」
他の3人の携帯にはGPS機能はなく、詳しい位置は調べられなかった。
みんなはただ、戸惑うしかなかった。
これだけでは済まされなかった。
突然、森の奥で、謎のうなり声が聞こえた。
「な、何だよ、今の声・・・」
「人かしら?」
「ううん、人はこんな声出せないと思うよ」
「悪い予感がするなぁ・・・」
この悪い予感は、本当だった。
うなり声が、ドスンドスンという足音と共に、
どんどん近づいてきたのだ。
地面の揺れも激しくなってくる。
「やばいぞ、これ」
とシュウが言った、その時だった。
目の前の木が倒れ、そこには牛のような、黒い謎の生き物がいた。
大きさは、4m弱といったところだろうか。
かなり重そうだ。
2本の鋭い牙は、地面につきそうなくらい長い。
おびえる4人に気付くと、舌をぺろりと回し、
「ウォーガリィシーッ!!」
と声をあげた。
「怪物だー、逃げろー!!!」
リサコがそう叫び、4人はこの生き物からとっさに逃げ始めた。
もし捕まったら食べられてしまう。
向こうも猛スピードで追いかけてきた。
逃げている途中、分かれ道があった。
4人は無我夢中で左に走って行った。
ちょうど、左の分かれ道には門があって、その門は高さが2mくらいだったので、あの怪物は通れないはずだ。
「これで右に行ってくれるか、門にひっかかればいいんだけど・・」
でも、そうはいかなかった。
怪物は右に曲がり、突進で門を壊した。
「しまった!!」
「どうしよう、まだ逃げなきゃいけないの!?」
またしばらく走った。
疲れても、走れるだけは走った。
向こうは全く疲れていないようだったが。
しかし、2分ほど走った時、生存は絶望的になった。
そう、先には崖があった。
「何よ、ドラマとかでよく見る展開じゃない!」
リサコが怒っている。
「まあ、落ち着きなよ・・・」
ナオヤは焦りながらもリサコをなだめる。
「・・・くそぉ、ここで追いつめられるとは」
シュウは、その男らしい体つきにも似合わず、泣いてるようだ。
「そんな、私、死にたくない・・・」
シュウの後ろでヒヨリが小刻みに震えている。
戸惑う4人を前に、怪物は鼻息を荒げ、
近づき、目をぎょろりと向き、
不気味な笑いを浮かべながら、口を大きく開けた。
「いただきまーす・・・」と言っているようだ。
「だ、だれか助けてくれー!!!」
4人は声をそろえて、力いっぱい叫んだ。
その瞬間。
ぴしっ、という音がした。
「ぐ、ぐほぉーっ!!」
怪物が苦しみだした。そして、白眼をむいて、倒れた。
背中から、血が流れている。
(な、何があったんだ!?)
ナオヤたちは一斉にそう思った。
背中に、誰か人がいた。
縄を振り回している。
縄の先をよく見ると、針金がついていた。
血が付着していて、縄が回される度に血がはねた。
「もう大丈夫だよ」
その人は背中から4人の元に飛びおりた。
- マジックファイトRPG ( No.7 )
- 日時: 2013/04/17 20:19
- 名前: N海 (ID: 3GsmIGqB)
第8話
○ナオヤ・ヒヨリ・シュウ・リサコ○
「・・・あなたは、誰?」
ナオヤが、ゆっくり尋ねる。
「ああ、ボク?『フィリップ・ベーカー』。
フィルって呼んでくれ。」
帽子のつばを持ちあげながら、若き恩人は答えた。
西洋人風の名前に似合わず、東洋人風の顔をしていた。
「あの、凶暴な怪物から私たちを助けてくださって、
本当に、ありがとうございます!」
とヒヨリが頭を下げた。
「いやいや、別に何てことないよ。ボク、アリエスタウンの
保安官だからね」
フィリップがジャケットにつけたバッジを皆に見せる。
西部劇で見るような星型のバッジとは、違う形だった。
鳥の羽根のような、見たことのない形だった。
それからフィリップは怪物を指さして、
「この『バイソナー』は星三つの戦士じゃなきゃ倒せないからね。
だから、ボクは森を見まわって、もし人がモンスターに襲われていたら、すかさず助けるのさ!」
と、胸を張って自慢げに話した。
どこかで、ピロリンという音がした。
「・・おっと、経験値メーター、どうなったかな?」
とフィリップは自分の鞄から、スマートフォンのようなものを取り出した。
彼がボタンを押すと、
『ケイケンチガ 1000 アップ シマシタ』
という音声が流れた。
「・・・ふぃ、フィル、今のは?」とリサコ。
「!? 君たちも、持ってるだろう、経験値メーターを」
フィリップは驚いている。
「何よ、知らないわよ、それ」
「えっ・・・・!?」
「あとさっきの『アリエスタウン』『星三つの戦士』ってのも何?」
「お、おい、何言ってるのかい?」
「というか、この世界自体、何よ?
アタシたち、えっと、その・・・
何かいろいろ変なことがあってさ、気づいたらここにいたんど。
そもそも、ここは日本なの!?」
リサコのこの言葉を聞いた瞬間。
突然フィリップは口に手をあてた。
まるで、驚いているようだった。
「・・・に、にほん・・・・」
それから俯いて、目をつむり、しばらくの間黙ってしまった。
「・・・君たちもなのか」
「・・・あの、どないしたんやろか?」とシュウが肩をたたく。
するとフィリップは、はっとなって急いで前を向いて、
「・・・っ!あ!いや、何でもないっ!!」
とさっきまでの笑顔で明るく答えた。
さらに、「べ、別の世界?君たちは夢でも見てたんじゃない?」
と不自然に付け加えた。
このときフィリップが何を考えていたのか、4人とも不思議に思った。
が、今はこの世界を理解することの方が大事だと思いい、この件は深く考えないことにした。
フィリップは倒れているバイソナーの背中に再び飛び乗り、
「・・さてと、どうやら君たちはちょっと変わった存在のようだ。
とりあえず、今からある場所へ来てくれないかな。
ボクが案内するよ」
と、こっちを向いて手招きした。
「・・・とりあえず行くか」
「うん」
4人は、フィリップについていくことにした。
「あ、バイソナーはもう完全に倒れているから、背中を歩いても
大丈夫。くれぐれも転ばないようにね」
フィリップのアドバイスを聞きながら、4人はバイソナーの上をそぅっと越え、
彼のあとに続いた。
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