コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 同じ空の下で
- 日時: 2013/07/12 20:05
- 名前: 蛍 (ID: nhHNmtBk)
prologue
「また 来年も会えるといいね」
今ではもう
思い出せない、彼の声。
今 あなたは
何を想っていますか 。
- Re: 同じ空の下で ( No.4 )
- 日時: 2013/07/13 19:30
- 名前: 蛍 (ID: NjXpoRP/)
「寒くない?」
「割と。」
星を見上げながら、呟くように声を出した。
小さな声のはずなのに、この川全体に反響しているようだった。
見上げた空は本当に美しかった。
星と星の間に隙間がないくらい。
宇宙って広い。 私の星座は一体どれなんだろう。
「何座?」
彼が私の顔を見ながら聞いてきたので
心を読まれたのかと思った。
「ふたご座です」
私がそう言うと、彼は上を見上げ、指を出した。
「ふたご座はね…」
「え、どれか分かるんですか?」
「うん。詳しい方」
凄い。
この夜の世界のこと、知ってるんだ。
私はなんだか嬉しくなって、自然に顔がほころんだ。
「あ、ちょっと待ってね。」
彼はそういうと、パーカーのポケットから
細長いものを取り出した。
「わあ、それ 望遠鏡ですか?」
「うん。かなり小型のやつ。
5万くらいしたけど」
そう言って笑う彼につられて私も軽く微笑んだ。
「私も望遠鏡持ってきたんです。ほら」
横に置いてあった望遠鏡を差し出す。
「へぇ、凄い。よく家にあったね」
「何かの付録だったと思います。
そんな大したものじゃないいと思うけど」
私はそう言って、はにかんでみせた。
「そういえば、何で敬語?」
「え、だって年上…」
「年下かもよ?」
そういえば、年上とは限らない。
彼のイメージからしててっきり年上かと…
「じゃあ何才なんで…
あ、そう言えば名前をまだ…」
私がとまどいながら尋ねると、彼はにやっと笑った。
「そういうのって、知らない方が面白くない?」
「え?」
「なんか、名乗るほどのものではない、みたいな」
私は苦笑した。
いつのまにか、雪が止んでいる、。
灰色がかかっていた空は一面銀色に変わった。
「あっ」
二人の声が重なる。
私達は顔を見合わせ、笑った。
「願い事すれば良かった」
「流れ星に願い事って、子供みたい」
「まだ子供だよ」
彼はそう言ってはにかんだ。
星明かりに照らされ、初めてじっくり見た彼の顔。
はにかんだ笑顔の奥に八重歯が見えた。
ふと時計をみると、もう12時を刺していた。
「そろそろ帰った方がいいんじゃない」
「そうですね…だいぶ冷えてきたし」
私の眠気もそろそろ限界だった。
「結局星座は探せなかったけど」
「全然いいです。流星見れただけで」
そう、私はそれだけで満足。
でももう今年は…
「来年も、ここに来る?」
彼はそう言って優しく笑いかけてくれた。
髪や顔に、溶けかかった雪が少しついていた。
自然な笑顔を作って
「そういうのって知らない方が面白くないですか?」
と得意げにいうと、彼は「やられた」と苦笑した。
私は立ち上がると、体についた雪を払い、
自転車にまたがった。
「じゃあ、ありがとうございました」
「うん。こっちも楽しかった」
「また 来年も会えるといいね。」
彼の声に私は小さく頷くと
ペダルにかけた足に力をいれた。
- Re: 同じ空の下で ( No.5 )
- 日時: 2013/07/20 23:08
- 名前: 蛍 (ID: SG2pzqrf)
空から降りてくる白い粉雪は
とても幻想的だった。
真っ白な校庭に溶け込んでつもり続ける雪。
以前も、同じ光景を見たことがある。
「空! 空ってば」
友人の呼びかけで、やっと我に返る。
「ごめん、何?」
私が申し訳なさそうに尋ねると
友人は飽きれたようにやれやれ、の
ジェスチャーをした。
「だから、文化祭。
本当何やるつもり?」
「何でもいい」
そう言って、また窓の方に顔を向けた。
「それ一番困るパターンじゃん。
あたしだって何でもいいのよ」
文化祭か…
「じゃあ」
「じゃあ?」
少し間を置いてから、
それからはっきりと口に出して言った。
「プラネタリウム」
「…あんた、星なんか興味あったっけ」
「割と」
「詳しいの?」
「全然」
顔を背ける。
ため息を吐いた息は室内だというのに白かった。
あれからもう5年。
私は高校生になった。
私はあの日から彼のことをずっと考えていた。
自分でも異常じゃないかってくらい。
でも、名前も顔も年も知らないあの人との
再会は困難なことだった。
一日中 あの人のことを考える。
何でたったの数時間話しただけなのに、
何でここまで彼に会いたいのだろう。
次の流れ星の日が待ち遠しかった。
そして運良く2年連続の流れ星の日が分かった。
早く会いたくて、すごく自転車を飛ばして土手に向かったのを覚えている。
同じ時間に。同じ場所に。
でもそこに 彼の姿はなかった。
私は深夜の3時までねばった。
だけど彼はいくら待っても来なかった。
馬鹿みたい。何でか彼に会えると確信していた。
私はひどく、裏切られた気分になった。
次の年も、その次の年も彼は来なかった。
そして去年行った時には、土手がマンションに変わっていた。
いつの間にか、私は高校3年の冬を迎えていた。
もう会えないのか。
もともと会える訳もないのか。
戻りたい、あの日に
ねぇ、名前は?
何才なの?
どこに住んでるの?
趣味は?
誕生日は?
今どこにいるの?
何を考えているの?
聞きたいことが、山ほどある。
「また 来年も会えるといいね。 」
もう思い出せなくなってしまった
彼の声。
ねぇ、どうやったら会えるのですか?
雪に覆われた空に、静かに問いかけた。
- Re: 同じ空の下で ( No.6 )
- 日時: 2013/07/21 15:33
- 名前: 歌音 (ID: WKDPqBFA)
こんにちは。
文章力が素晴らしいです!
違和感なし!とってみ読みやすいです…
間の取り方など、主人公の気持ちが伝わってきます。
更新、楽しみにしていますね♪
- Re: 同じ空の下で ( No.7 )
- 日時: 2013/07/22 15:48
- 名前: 蛍 (ID: bKUz3PZj)
外を見ると、未だ雪が深々と降り続けていた。
体の底から寒さを感じる。
ふと購買で缶コーヒーでも買ってこようか、と
考えるが、ここから動く気にもなれなかった。
「寒... 見て。息白い」
「本当だ。」
話しかけてくる友人に適当に笑って返す。
彼と出会った日も雪が降ってたんだっけ。
そんなことを考えながら、また彼を思い出す。
「そういえば、空」
「何?」
「今度、侑李くん達がカラオケ行くんだって。
誘ってもらっちゃった。
空も行く?」
「あー...」
そうか、この子は侑李くんの友達の
何とかくんが好きなんだっけ。
高校に入ってから、やたらとカップルが増えた。
すぐ付き合って、すぐ別れるの繰り返し。
小学生や中学生のころにしていた
純粋な恋愛ではなくなっていて、
好きな人がころころ変わる人ばかりだ。
「ねえ、お願い。一緒に行こう?
いいかげん空も彼氏つくりなよ。」
「んー...」
じゃあ私は?
彼のこと、なんて思ってるんだろう。
別に恋愛をしたことがないわけじゃない。
人を好きになった時の感じは知ってる。
でも、彼と付き合って
休みの日にはデートして、キスをして
そんな少女漫画みたいなことを
したいとは思わない。
自分の気持ちが分からなかった。
「ただいま。」
家に帰ると、母がポットを手に抱えたまま出てきた。
「お帰り。寒かったでしょ?
待ってて、今紅茶入れるから」
そう言って、慌ただしく台所に戻っていく。
靴を脱ぎ、自分の部屋へ向かう。
何故だか今日は 早く寝てしまいたかった。
部屋の時計はもう11時半を指していた。
ベッドにダイブして枕に顔をうずめた。
私は何をしてるんだろう。
一体何がしたいんだろう。
真剣に問いかけてみても 返ってくるのは静けさばかり。
今日も一日中彼のことを考えていた。
もう解放されたい。
普通に彼氏を作って、友達同士でプリクラとか撮って
マックやカラオケでお喋り。
ちょっと親に反抗して。
普通に勉強して、そここその大学行って...
そんな高校生活を送ってもいいんじゃないか。
でもそんなことをすると、彼を裏切ったような
気分になる。そんな自分がひどく嫌になった。
もしかすると、彼は私を覚えていないかもしれない。
彼にとってはあの夜のことは特別なことじゃなかったのかもしれない。
私のことなんて 一切考えていないと思う。
何分か経ち、部屋がノックされた。
反射的に起き上がる。
「どうぞ」
声に応じたように扉が開かれる。
「飲む? ミルクティー」
まだ熱いのか、母の顔にもうもうと
湯気がかかっている。
「ありがとう」
ミルクティーを受け取り、一口すすった。
母は私の隣に腰掛けると、じっと私を見る。
「な、何?」
「まーた何か迷ってる。」
母は、心を読めるのだろうか。
私は苦笑した。
「何でわかるの」
「親だから、かな」
また一口飲む。じんわりと温まっていくのを感じた。
「そういえば、今日 流れ星の日だって」
「え」
一瞬耳を疑う。
母はにやっと笑った。
本当、かなわないなぁ この人には。
そう思いながら苦笑した。
「5年連続なんて珍しいわね」
「うん」
「流れ星、見れなくなっちゃうよ。
行ってきな」
私は小さく頷いて、部屋を後にした。
迷ってても仕方ない。
今年 来なかったら...
ちゃんと前に進もう。
- Re: 同じ空の下で ( No.8 )
- 日時: 2013/08/22 08:54
- 名前: りんどう (ID: Dgyo6F5o)
ぐはっ...
文才ありすぎですね(褒
もうわけてくださいよ〜
あ、とってもいいお話ですね!
好きです、これ
もう切ない!冬ってまた季節が...
とりあえず素晴らしいです!
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